表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/176

12話 後は野となれ山となれ

「わかりました」


 わたしは過去を思い出しながら、熟考した。


「私は、数時間前にここに来ました。そこでククルと……スライムと会って助けを求められました。そしてあなたと会ったんです」


「数時間前!?」


 そこに驚くのか。と私は一人で驚愕していた。


「はい、だから私は死に物狂いで生きるすべを探しています。この取引も、そのためです」


 私は顔を下した。そのとき、雫が落ちた。


「……え?」


「グスっ、ほんとにこの世界に来たばかりなの?」


「は、はい。紅木葉さんが言っていた番号のことも知りません」


「そうなんだ、それなのに私、あなたに振られたと思って……ごめんよ!」


「え? え?」


 どういう事? なんで急に泣き出したの!?


「あ、あの」


「協力するわ!」


「……え?」


(何が起こった?)


 私は困惑の中、目を回しながら()いた。


「本当ですか?」


「ええ!」


(や、やったー)


 何が起こったかわからない、が終わり良ければすべて良しだ。


「わたし、あなたみたいな妹が欲しかったのよねえ」


「そ、そうなんですね」


 でも、簡単には信用できない。もしかしたら、適当に答えてスライムから出ようという魂胆(こんたん)かもしれない。


「あの、まだ信用しきれてないんですけど」


 私がそう言うと、紅木葉さんは諦めたようにこう言った。


「……しょうがないか。実は私、金欠冒険者なのよね。だから誰からも声を掛けられなくて……。でも、仲間に憧れていたのはホント。だからもろもろお世話になるかもしれないけど、わたしは夕奈ちゃんの力になるわ」


(すごい、違和感。なんか投げやりっぽい)


 ホントに信用しても大丈夫なの? わからない。


(こうなったら)


「シュラさん、マニュウさん」


 三人寄れば文殊の知恵だ。多数決で決めよう。


 私は二人の近くの移動した。


「どうした? ユーナ」


 私は言う。


「あの……」


 かくかくしかじか、と、プライベートな部分は隠して伝えた。


「なるほど」


「なるほどね」


 二人は簡単に理解した。


「つまり、あいつが本音を言っているかどうかを確かめたいわけだ」


 シュラさんは小声で「高いやつだがまあいか。今日のために買ったやつだしな」と呟いた。


 私が首を傾げると、マニュウさんがこう付け加えた。


「いわゆる、うそ発見器よ」


(うそ発見器……?)


 絵空事では? と思い()いた。


「そんなのあるんですか?」


「ええ。安いやつだからうまくいくかわからないけど。そこはまあ、ユーナちゃんの勘に任せるわ」


「な、なるほど」


(つまり、うまく作動するかわからないってことか)


 私たちがそんなことを話していると、シュラさんが「これでも頑張って買ったんだぞ」とこぼした。


「ごめん、ごめん」


 とマニュウさんは言う。


 すかさずシュラさんは言った。


「はいはい。おい、ユーナ、できたぞ」


 組み立て終わったおんぼろの機械。いわゆるジャンク品と呼ばれるものだった。


「これがうそ発見器ですか?」


「ああ。正式名称は違うが、まあそんなもんだ」


 シュラさんはうそ発見器を持ち、こう説明した。


「ここにあるボタンを押せば起動する。その後針が右に動いたら本音。左に動けば嘘だ」


「わかりました」


 私はうそ発見器を受け取る。


「精密なやつだからな、それを使ってる間は対象者以外音を出しちゃあいけねえ」


 マニュウさんはヤジを飛ばす。


「安いやつだからね、しょうがない」


「ま、まあ、そういうことだ。だからユーナ一人で頑張ってくれ」


「はい」


(何から何までやってもらってるな……)


 申し訳ない。これが終われば、ゆっくりお茶でもしながら話をしよう。もちろん、私の奢りで。


「シュラさん、マニュウさん、それとメイルさん、ありがとうございます」


 シュラさんとマニュウさんは相槌を打つ。メイルさんには聞こえてなかったようで、反応はなかった。


 私は紅木葉の前に立つ。


「わたしはまだ、あなたを信用できていません」


「ええ」


「だから、いくつか質問します」


 紅木葉さんは頷いた。


 だから私は言った。


 正直、何の質問をしようか悩んだ。


 悩んだ末に、一つの疑問に回帰した。


「紅木葉さん、あなたは、スライムに危害を加えたことを後悔していますか?」


 私は、スイッチを入れる。


 針が、左に動いた。


「ええ」


 答えは嘘。


 スイッチを切る。


「では、なぜスライムを攻撃したのですか?」


 スイッチを入れる。


「依頼だからよ。なんか陰湿な質問ばかりね……」


 針は動いていなかった。


(はい、いいえ、で答えなければならないのか)


 ……なんか恥ずかしい。お茶を濁そう。


 スイッチを切ってまた入れた。


「紅木葉さん、経験人数は何人ですか?」


 とっさに出たのがこれだった。でも何人と付き合ってきたのか気にならないこともない。


 するとなぜか紅木葉さんは頬を赤らめた。


「……何人って、わたし女子高、女子大と来たからゼロよ!」


「あ、じゃあ私と同じですね」


「あなたまだ未成年でしょ!?」


「……?」


(恋愛に未成年もくそもあるのだろうか?)


 それよりも、また針は動かなかった。私はスイッチ切り咳を鳴らした。


「ごほん」


 後は野となれ山となれ。この人は強い、でも対処はできる。だから、少し肩の力を抜こう。


「単刀直入に聞きます」


 私はスイッチを入れた。


「もしあなたが仲間になったとして、あなたは私を裏切りますか?」


 針は、右に動いた。


「いいえ。裏切らないわ」


 私は安堵した。


「裏切りは大嫌いなの、だから、あなたが裏切ったら私も容赦しない」


「わかってます。お互い様ですよ」


 私はクルルに合図を送る。そのとたんビックスライムははじけ飛び、数百ものスライムに分裂した。


 私は紅木葉さんに手を差し出した。


「これから、よろしくお願いします」


「ええ。これからは木葉(このは)さんって呼んでね」


「わかりました、木葉さん」


 私は笑顔でそう言った。


 そのあと声が聞こえた。私を呼ぶ声だ。


 これで解決したのかはわからない。でも、ここからゆっくりできるのは確かだと感じた。


 私は微笑んで、改めて思った。


(……疲れた)


 一方そのころ、紅木葉は考えていた。


(本当に、あの子を信じてもいいのだろうか。)


 裏切りと共に生きてきた私にとって、人を信じるという行為は自殺と同じだ。裏切られる危険を作るなんて馬鹿かもしれない。


 でも、戦いが終わった後の彼女からは親友と同じ雰囲気を感じた。絶対に裏切らない、わたしの手から零れ落ちない。そんな安心感を。


 だから素直に過去を話せた。


 不思議な気持ち。


 私は将来この決断を後悔するだろうか?……いやしない。そのために動こう。


(いい加減、一人は飽きたしね)


「くう」とマシュマロ型のマシュちゃんが鳴いた。


「ごめんね、君がいた」


 私はそう言いながら夕奈ちゃんについて行く。


(妹ができたみたい)


 などと思いながら。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ