118話 牛の歩みも千里
今起きていること
・万葉木夕奈&ロニイ・ファーベントvsキラ・濱田
・鍛丸匡一郎&バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダvsナイリー・ハニュ
・ラリゴ先生vs名も無き魔族
主人公、帰還。
「慧眼……『暁』」
ここに、少女が一人いた。年齢は十五歳。趣味は寝ること。スリーサイズは書く価値すらない。
そして力魔法の才能があり、生命の始鉱石を有する物。ジーダ・オニュセントの弟子であり、あの勇者万葉木大樹の姉である。
そんな彼女は、ある男と対峙している。その名もキラ・濱田。勇者万葉木大樹の親友であり、勇者軍三番隊隊長でもある、ロシア人と日本人の血を持つ男。能力は『気象観測』。天候によって変わる力を持つ。
そしてこの場にはもう一人、男がいる。ロニイ・ファーベント。愛する妻を失った紳士風の優しい男。魔法が得意だと、夕奈はその目で確かめている。
そんな三人は戦っていた。
現在はまだ、クイナ・イースターが紅木葉と戦っており、魔王軍幹部キョウヤたちがパタパタ、ブクブクと戦っている頃だ。
時は少し前となり、ついに、万葉木夕奈は剣を振った。
「ふん!」
「おっと!」
雷の速さで動くキラ。現在の天候は雷。
ワンチャン今日の学校がなくなるかもしれないと、私は戦闘中に考えてしまう。
哀れだ。そしてもっと集中しろ! と、自分に投げかけたくなった。
そして懸念すべきは、彼が大樹の友達であるという事。思いっきりぶったら大樹に嫌われるかもしれない。……いや、大樹の友達なんだ。それなりに頑丈だろう。
……そんなことは置いておいて、彼をどうやって攻略するかだ。エリオスやロニイさんは今まで学んできたことを活用すれば勝てる相手だった。……いや、もしかしたら、ロニイさんは奥の手みたいなのがあるかもしれない。私と戦った時も本気じゃなさそうだったし。だったら、この前提は崩れる。……が、今はあまり関係ないので置いておこう。
とどのつまり、悔しいけど、ただ戦うだけでは勝てない。ごり押しはできない。
策略を練ろう。木葉さんの時みたいに。格上の相手でも、頭を使えば何とかなるかもしれない。
それに、今はロニイさんがいる。一人じゃないんだ。
『統治力場』に『慧眼暦シリーズ』、剣技と、私は昔とは見違えるほどにやれることの幅が広がった。貰った力である『偽装』と『天眼』を使えばさらに広がる。
でも、これだけあってもまだ不安だ。
だからまずは、相手を観察する。
私はそんなことを考えながら、相手の攻撃を捌きつつ、嫌がらせのようにちまちま攻撃していた。
(……前提条件として)
前提条件として、彼は一つの天候につき一つしか能力が使えない。ここまでで快晴、晴れ、雷雲と、能力こそ変わっているが一つだ。今の天気だと、雷みたいに早く動くことしかしていない。
だが断定するのは危険なので、雷のようになると考えておこう。
そしてもう一つ。彼は天気によって性格まで変わる。最初はヤバいやつ。二つ目もまあまあヤバいやつ。で、今回が世の中を恨んでいそうな男の子。今のアイツはなんとなく理解できる。だから結構がつがつ言える。
そしてある程度、常識的な攻撃しかしてこない。おかげで攻撃を操りやすくなる。今一番来てほしくないのは快晴だ。あれが一番厄介だった。この雷雲が晴れないことを祈っておこう。
さて、ここまでの条件下で、どうやって勝つか。単純に攻撃を与えるなら、鍛丸さんに貰ったこの剣の必殺技で決める。『エクスプロージョン』か『クラッシュブラスト』がいいだろう。それかロニイさんの技で決めるのもいい。あの私の首を折りかけたあれだ。
そしてもう一つが、戦闘以外での勝利。話し合いでも何でもいい。相手に戦う意思がなくなればいいのだが……。ただ強いやつだからという理由で話しかけて来たんだからそれは無理だろう。戦うことに戦略的な理由がない。
よって、物理で上から叩くことにする。
ロニイさんがとどめでもいいが、ロニイさんがサポートして私が前で戦うという形が出来上がっている以上、これを壊す意味もないだろう。だったら私が決めるしかない。
隙を見て『統治力場』を使い、必殺技で決める。これが安パイだが、そう簡単にはいかないだろう。そのせいで、ここまで戦いが長引いている。
今までの戦いで与えられた攻撃の多くは、カウンターだ。相手が来たところに合わせて『統治力場』で私を動かし攻撃する。
これもいいが、実はこれには大きな弱点が存在する。
私は自分の体を人形だと思い、人形を操るようにして私自身の体を『統治力場』で動かしている。『統治力場』は力を操る魔法。下手すれば力と力に挟まれて死ぬ可能性もある。それが自分の肉体となると、少しでも力を変な方向に流してしまうと、内部から爆発してしまうだろう。戦いの最中に使うという点や、私の物理の知識が高校一年生レベルなことも相まって、『慧眼』を使っている最中でなければ使うことはできない。
今まで使っていた『慧眼』をさっき一度リセットした。それはひとえに大変だから。
ステップアップする魔法だから、『暁』『東雲』『曙』と上がるごとに体の負担も増える。『暁』以外はそう長くはもたないんだ。
だから、やるなら短期決戦がいい。
それが弱点。あまりにも狙う難易度が高すぎること。
最初の話題に戻ってしまうが、結局のところ私では勝てないのだ。
だったら視点を内側から外側へ変える。
相手の弱点を見つけろ。
その能力のエネルギーはどこから? 天候を変えまくるとどうなる? 性格にはどれほど影響するのか?
などなど、気になることがたくさんだ。
「……」
しかしそれは確認できない。術がない。
なので、攻撃しつつ弱点を見つけることにした。
題して『手探りアタック二十四時』。一日中戦うつもりはないが、それなりの覚悟はできている。
「ロニイさん」
「はい」
「いくよ」
こうして、万葉木夕奈は考えた末に、脳筋特攻を選んだのだった。
「統治力場」
今回は久しぶりに夕奈を書いたという事もあって、作者含めた復習がメインでした! 次回から大きく動きます!
ここまで読んでいただきありがとうございます! 次回もよろしくお願いします!




