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114話 恋は盲目

今起きていること


・万葉木夕奈&ロニイ・ファーベントvsキラ・濱田

・鍛丸匡一郎&バルトス・シリカ&カナリアル・ボンダvsナイリー・ハニュ

・ヒョウリー・クワンド&エリオス・バンダ&駒衣千菜&キョウヤ&冒険者たち&嘉村舞奈&カニマニ・アルル&ニッコリ&その他大勢の魔族、魔獣&メモリープラットvsブクブク(メモリープラット)&パタパタ(雷鳥)&スウィートランボーが使役している魔獣たち

・ラリゴ先生vs名も無き魔族

「ふええ。っと、甘い声を出してみる」


 紅木葉(くれないこのは)。彼女は階段を上る。


「ふええ。っと、(がら)にもない声を出してしまいましたわ」


 ルリア・ホーガン。彼女は階段を下りた。


 お気づきの方もいるかもしれないが、彼女、ルリア・ホーガンは()()()()である。


 なので、一向(いっこう)に母ミリア・ホーガンのもとにたどり着けずにいる。


「……」


 階段の途中で、二人はすれ違う。


 最初に声を出したのは木葉(このは)だった。


「ルリア・ホーガン様?」


 そう呟いたと同時に、ああそうかここは彼女のお家だと理解する。しかし彼女は知っていた。


 二年前にルリア・ホーガンが勇者万葉木大樹(まんようぎだいき)の仲間であったことを。そして、その万葉木大樹(まんようぎだいき)は、仲間である万葉木夕奈(まんようぎゆうな)の弟であることも知っている。


 これらの要素(ようそ)が重なり合い、木葉(このは)は思い切った手を打った。


(最初は、苗字(みょうじ)が同じだけの他人だと思ってた。でも違った。夕奈(ゆうな)は、勇者の姉なんだ。仲間の、願いはできるだけ(かな)えてあげたい)


 そう思いながら、言った。


「勇者様は一緒じゃないの?」


「なるほど、あなたも()ですか」


 木葉(このは)凛々(りり)しい顔つきで髪を後ろへかき上げた。


「……?」


 そして最悪の状況になっていることに気づく。


「え、なんでそうなるの!?」


「あなたも、大樹(だいき)君を狙っているのでしょう?」


「た、確かに狙っているけれども!」


夕奈(ゆうな)に報告したいからね!)


 しかしそれは通じない。


「ほら見なさい!」


「いや、異性(いせい)としてかわいい子だなと思ってるだけよ!」


 渾身(こんしん)吐露(とろ)。心の片隅(かたすみ)にしまっていた思いが()()()出てしまった。


「もっとダメじゃない!」


「違う今は思ってない」


「問答無用!」


 信実である。いくら木葉(このは)といえども、仲間の家族には手を出さない。しかしルリアは聞く耳を持たなかった。


「なんでこうなるのー!?」


 階段が爆発した。奇跡的にも、ルリアの魔法と、木葉(このは)の能力が同時に発動する。


「ルリア様、話を聞いてください」


「それは……『ギフト』? あなたも地球人なのね。あなたも、私から大樹(だいき)君を()()のね!?」


「いいえ、違います!」


「絶対そうだ。だめ、だめ、だめ、だめ。()()()()()()()()


「ああもう目がイっちゃってるよ」


 まさに恋は盲目。いや、もうその段階すら超えているかもしれない。


 ルリア・ホーガンに、もう言語は通用しなくなった。


「フレイムバースト」


炎熱柱波(えんねつちゅうは)!」


 炎がぶつかり合う。どうやらルリアは、同じ系統の力で相手を倒したいようだ。


 完全勝利。ルリア・ホーガンの悪い癖が露呈(ろてい)する。


「まったく、同い年とは思えない」


「あら、同い年なのね」


 お互い二十一歳。女の覚悟をかけた戦いが……。


 残念ながら始まるわけではない。


「ちょ、ちょ!」


「フレイムバースト、フレイムバースト、フレイムバースト!」


 炎熱柱波(えんねつちゅうは)と似ているこの技。フレイムバーストは炎を一直線に飛ばす魔法だ。


 それを彼女は打つが、残念ながら木葉(このは)に炎は効かない。


 炎を操る力。『ガスコンロΣ(シグマ)』の能力で炎は木葉(このは)から遠ざかった。


「これが、あなたの()の力なの……?」


 絶望したようにそう言うルリア。木葉(このは)は呆れたように言った。


「だから、私にとって勇者様は()()()()なんですよ」


「きえー!」


「あ、やばい! 状況がさらに悪くなった」


 火に油を注ぐがごとし。木葉(このは)は悪気無くルリアにマウントを取っていた。


「まったく、ホーガン家はこんなのばっかなのかな?」


 愛する者のこととなると、誰にも負けたくないと暴走するルリア・ホーガン。ストーカー気質のアリア・ホーガン。もしかしたら、リリア・ホーガンにも何かあるのかもしれない。


「フレイムバースト!」


 その炎は虚しく消える。


 木葉(このは)は、爆破された階段の上に立ちこう言った。


「ルリア様、一旦冷静になってください。私は、勇者様のことなど()うに忘れております」


 ハッとした顔で木葉(このは)を見つめるルリア。その顔は見る見るうちに泣き顔へと変わって行った。


「なんですの、それは? かっ、勝手に一人で終わらせないでください。今の恋人が私だから、見下してるのでしょう!? 私の方が大樹(だいき)君のことを知っているけど、まあこいつに教えたくはねえな、げらげら。って、思っているのでしょう!?」


「いやなんでそうなるの!? そもそも、今の勇者様の恋人ってルリア様なの!?」


 ルリアはしばらく黙った後、ゆっくり目をそらしながら「はい」と言った。


 絶対嘘だ。木葉(このは)はそう確信した。


「はっ! 今の勇者様の恋人……? ふふふ。墓穴(ぼけつ)()りましたわね。それはすなわち、あなたが大樹(だいき)君の元カノだという証拠! がはっ!」


「自分で言って自分でダメージ受けないでくださいよ」


「く、くやちいー。なんで私は……いつも一番ではないのですか?」


 ポロリと涙を流すルリア。その顔は、下を向いているせいで分からなかった。


 木葉(このは)可哀想(かわいそう)に思い、こう伝える。


「ルリア様、私もモテたいと毎秒考えています。だからわかるんです。女は顔じゃないですよ!」


 親指を立て、元気出せよと表情で伝える木葉(このは)


 しかしそれは伝わらない。


「……それは嫌味(いやみ)ですの!?」


「なんでそうなるんですか!?」


「わたし、顔には自信がありますの。それに毎秒考えるのは……病気かと」


「ええ……。同類なのにモテますアピール?」


「あなたダイレクトに私の恨み買いますわね」


 木葉(このは)は微笑み、こう言った。


「勇者様だって、可愛いルリア様に言い寄られて嬉しいと思いますわよ」


「なんかあなたに言われると非常にムカつきますわ!」


「なぜに!?」


 このように、この二人は目的を忘れ恋に花を咲かせるのであった。


 二十一歳。言葉で。女の覚悟をかけた戦いが……恋バナという盤上(ばんじょう)で始まった。

木葉の描写と筆休めを同時にこなすわたくし加鳥このえの執筆力は世界一イィィィィ!


すみませんでした。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます! 次回はキョウヤの話です。


現時点の予定では、キョウヤ→夕奈の順番で終わらそうと思っております! 終わりは近いですね〜。


いつも応援ありがとうございます!

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