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第1話 適齢期だって周りが騒がしいです

「兄ちゃん(リムン)がサーシャなら、僕(ルーミン)はジャバトですか?」


「いいじゃん、ジャバトとしばらく一緒に働いたけど、妹思いのいい子だったぜ」


 確かにジャバトはいつもサーシャのことを気に掛けている、妹思いの優しいお兄さんだとは思うけど、年下だし僕の理想とはちょっと違う気がする。


「竹下先輩そう言いますが、僕が希望する樹先輩ぽくは無いと思うんですけど」


 そう、僕(ルーミン)の理想とする男性は、そこにいる一つ年上の樹先輩なのだ。ただ、ルーミンが樹先輩と一緒になることは絶対にありえない。だって、住む世界が違うから。


「そうか、よく似ていると思うけどな。まあ、俺たちはリムンとルーミンに幸せになってもらいたいんだよ」





 僕の名前は中山海渡(なかやまかいと)。16才の男子高校生。

 今日は学校帰りに双子の姉の凪(なぎ)と一緒に、同じ高校の先輩の立花樹(たちばないつき)先輩の部屋にお邪魔している。

 他に竹下先輩と立花風花(ふうか)先輩も一緒で、いつもこの五人で話し合いをしているんだ。


 話し合いの内容は、あちらの世界のこと。

 何のことかわからない?

 そりゃそうだと思うよ。ここにいる五人が特殊な関係だと知っているのは、ほとんどいないもんね。




 僕と凪姉ちゃんは、つい2年前まで普通の中学2年生をしていた。あの日、姉ちゃんに誘われなかったら、今でも変わらない生活を続けていたと思う。


 きっかけは1年生のある日、姉ちゃんがあこがれの先輩が部活を始めたから一緒に入ろうと言ってきたことだった。


 最初は興味が無かったけど、男子に人気の戸部(とべ)先生がコーチをしていると知って、お近づきになれるかもと思い入部することを決めた。

 だって、武道の部活だよ、合法的に戸部先生のおっぱいに触ることができると思ったんだよね。健全な男の子がそう思うのはふつうじゃん。


 ところが入ってみると、戸部先生のことを由紀ちゃんって呼ぶ先輩がいて仲良くしている。これにはもう頭にきたね。

 かかって来い! って言うから、全力で行ってやったよ。樹先輩覚悟! ってね……でも触ることすらできなかった。先輩たちとはレベルが違いすぎたんだ。


 それからいつか見返してやろうと思って一生懸命に練習した。活動日には欠かさず参加して、師範の風花先輩だけでなく竹下先輩にも樹先輩にも指導してもらった。

 そのおかげで武術の腕前も上がっていったんだけど、その頃には樹先輩と戸部先生はただの幼馴染で、樹先輩と恋仲なのは風花先輩だということが分かった。

 でも、その時にはもう戸部先生のことはどうでもよくなっていて、僕と姉ちゃんは魅力的な先輩たちに惹かれていっていたんだ。




 そして、クリスマスの日に部活のみんなと慰問のために施設でやった劇が、僕と姉ちゃんの運命を変えることになった。

 その劇は樹先輩が脚本を書いた、ある異世界でのお話だったんだけど、部活のみんなでいろいろな役を演じて、施設のおじいちゃんおばあちゃんも喜んでくれたから、内容としては大成功だったと思う。


 でも、その夜から僕に奇妙なことが起こるようになったんだ……


 夜寝ているときに一人の女の子の夢を見るようになった。その女の子はいつも同じ女の子で、その子のいる世界はどうも劇で演じた異世界のようなのだ。

 だって、登場人物が劇に出てきた人たちと全く一緒だったからね。


 最初の頃は劇が楽しかったから、自分もその中の一人になった夢でも見ているんだろうと思っていたけど、ある日姉ちゃんから受けた相談にびっくりした。だって、姉ちゃんも同じ夢を見ていたんだから……


 ただ違うのは、姉ちゃんはリムンという男の子の目を通して、僕はルーミンという女の子の目を通してその世界を見ているというところ。

 この二人が双子の兄妹で、一緒にカインという村に仕事に来ているという内容は一緒だった。


 いくら僕たちが双子の姉弟だとしても、これまでに同じ夢を見たことは無かった。それに、内容があまりにも詳細で、さらに出てきた登場人物の雰囲気が僕たちの知っている先輩たちとそっくりだった。


 だから、僕たちは考えた。夢で見る世界は実際に先輩たちが行くことができる世界で、劇はそれを演じたものだったのだろうと……。


 正直その頃の僕たちは、少しおかしくなっていたのかもしれない。普通ならこんなばかげた話を思いつくはずがないからね。毎日違う世界の女の子のリアルな夢を見る……僕もどちらが現実か、わからなくなりそうになっていたんだ。


 姉ちゃんと話し合って、部活の合宿の日に先輩たちにこのことを伝えた。


 そして、先輩たちは僕と姉ちゃんを仲間に加えてくれたのだ。







 それから約一年が過ぎて、もう普通に毎日地球と異世界の行き来を繰り返しているんだけど、文化の違いだけはいかんともしがたい。


「結婚かー、こっちの感覚だとまだまだ先なので、いまいち実感がわきませんよね」


 16才で結婚と言われても、さすがにちょっと待って! と言いたくなる。

 ただ、あちらでは女の子に限らず男の子の結婚も早い。20才にもなって結婚してない人はたぶんいないと思う。


「そうだよね。僕もわかるよ。あっちではずっと結婚相手を探せって言われていてさ、どうやって逃げようかばかり考えていたからね」


 樹先輩のあちらでの人格のソルさんは、女の子だから僕(ルーミン)と同じように会う人会う人に言われてきたんだと思う。

 でもソルさんの場合は、ここにいる風花先輩のあちらでの人格のリュザールさんと来年結婚することが決まっているから、あとはその日を待つばかりなんだよねー。

 あ、樹先輩も風花先輩も同じ立花って苗字だけど兄弟でも親戚でもないよ。わかりにくくなるからみんなで下の名前で呼んでいるんだ。


「結婚っていいぜ、俺ももうすぐ親父になるからな、考えただけでもワクワクする」


 竹下先輩も高校二年生の男子なので、結婚できる年齢じゃない。結婚しているのはあちらでの人格のユーリルさんだ。奥さんのパルフィさんはもう数日のうちに子供を産む予定なので、竹下先輩はこちらの世界でもずっとソワソワしっぱなしだ。


「皆さんのお気持ちはわかりました。ジャバトが僕にふさわしいか、じっくりと見極めてやりますよ」


 僕はあちらの世界と繋がった時に、ルーミンの記憶も一緒に持つことになった。

 だから、ルーミンとして男の人と結婚するのは全く問題がない。だって、生まれた時からそのつもりだから。でも、そこに海渡の気持ちを入れちゃうと、ちょっとややこしくなる。

 ホントに恋愛ってできるのかな……


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