入山
翌日、聡一たちは、早朝に出発するため、誰もいないような時間に集まった。
山の入り口付近に集合し、作戦を練ることにした。
井野は切り出した。
「俺らで中村を探し出す、深入りはするなよ」
「そうだな」
聡一は頷いた。
「とりあえず、全員一緒に行動だ、何が潜んでいるかわからないからな」
井野がそういうと、聡一達は重い腰を上げ、準備体操を始めた
「けがだけはないようにしないとな、お前らも気をつけろよ」
「わかってるよ、お前よりも俺は運動神経はいいぞ?」
河合が井野に対して意地を張った。
腕を交差させて伸ばす運動をしている。
「そうか、競争でもするか?」
「俺はいいや、上まで着くまでくたばっちまう」
井野はそうだな、といい
地面に置いてあったリュックサックを背負いあげた。
「よしお前ら、行くぞ、全員で生き残って帰るぞ」
井野が言うと、続けて聡一が言う。
「物騒なこというなよ、俺はそういうのは嫌いだ。」
河合が慌てて、まぁまぁと井野と聡一をなだめている。
田中は山を見上げて一人つぶやく。
「中村、お前大丈夫か?俺らが行くまで待ってろ」
そういって、山へ入ってく聡一達を追って山へ入っていった。
山へ入り、進んでいくと、木々が空を覆い隠すように茂っていた。
太陽があまり届いていなく、辺りの地面はぬかるんでいた。
「おおう!」
田中が足を取られて、前に倒れこんだ。
泥の沼のような場所に足がとられてしまったらしく、そのまま前のめりに転んだようだった。
「田中、大丈夫か!」
河合は即座に田中の元へ駆け寄る。
それに続いて、葉山、井野が駆け寄る。
「危ないな、大丈夫だよ、ケガはない」
「本当に気をつけろよ、死ぬかもしれないんだから」
井野は注意した。それを聞いていた聡一の心は穏やかではなかった。
うっそうと生い茂る木々の間を抜け、太陽が傾き始めたころ、
カラスの声が響いた。
かれこれ何時間歩いていたのだろうか。
こんな時間を中村は歩き続けたのだろうか
「もう休まないか、ずっと歩いてるんだ。流石に暗くなったら山は危ない」
河合はそういって、足を止める。
井野と聡一も河合に合わせて近くの岩の傍にリュックサックを立てかけ、休憩に入った。
「なんか寒くなってきたな。」
「火をおこして寒さを凌ごう」
河合がリュックからライターを取り出し、近くからかき集めた草木を材料に火をおこし始めた。
火を起こし、食事をとろうとしたころにはもう日が落ちていた。
辺りは暗く流石にこのまま歩くのは危ない。
流石に皆もわかっていることだろう。
食事は貧しいもので、コンビニで買ってきたパンが各自5つずつ、カロリーメイトが3箱分だけだった。
咄嗟に行くことが決まったので、十分な食料を確保することはできなかった。
だが、この程度の山ならば、十分な量だ。
食事を終え、十分な雑談を交わした後、寝る準備を進める。
「明日は目的地に着けそうかね」
井野は地図を広げて、今日来たルートにしるしをつけていた。
「難しいんじゃないか、行くならいきたいけどな」
聡一は田中の言うことに頷く。
「交代制で監視しないか、流石に警戒しないと危ないっしょ」
「そうだな、2人ずつで交代するのはどうだ?」
河合が提案した内容に聡一達は賛同した。
「じゃあ俺と河合が最初担当で、葉山と田中は後の方を担当で宜しく。」
「起こしてくれるのか?」
「ああ、ちゃんと起こすよ。何かあったときは全員起こすけどいい?」
「いいよ、危ないときに寝てられっかよ」
井野は立ち上がり、持っていたゴミを火の中に放り投げる。
しばらくすると火の勢いはなくなり、静かに消えた。
その日は何もなく、夜が明けた。
ちょっを遅らせて聡一達は足を進めることになった。
入山してから2日目の朝が訪れた。