プロローグ
気持ちの良い、春風が吹く季節になった。
春の訪れを告げるように、小鳥が鳴く。
大学の午前講義が終わり、帰路についた俺、葉山聡一は春が来たことを実感していた。
「今日は暖かいなぁ、最近まで寒かったからな・・・」
聡一はいつもと違う道を選び、時々通う店へ足を運んだ。
チャリン、と店のドアについているベルが鳴る。
住宅街の中に建つ、小さな古民家を改装したカフェだ。
聡一は時々このカフェに寄って大学の疲れを癒している。
元々バイトとして雇ってもらってたが、大学での勉強が忙しくて辞めた。
店長とは長い付き合いになるので、よくこの店に足を運ぶ。
店内は洒落ていて、ジャズが流れている。
かなりリラックスができる空間だ。
聡一はこの空間が好きだ。
「いらっしゃい!おう、聡一、今日もお疲れさん」
「ああ、店長、お疲れっす。いつものやつを頼むよ」
聡一がそう言うと、店長は笑顔でコーヒーを入れる。
ブラックに砂糖を2ブロック入れたコーヒーが聡一は好きだ。
「なぁ聡一、バイト、時間ができたらいつでもいいんだぞ」
「ちょっと目指したい夢があってさ、将来弁護士になりたくて今結構忙しいんだ、もう来年で卒業だから結構焦ってるんだよ」
「そうか、まぁ、身体を壊さないで頑張ってな、はい、いつものやつ」
コトンっと置かれたコーヒーを聡一はいつものようにズズッと吸い上げ、味わった。
苦味と砂糖の甘味のある味が融合して程よい味になる。
聡一の好きなミックスだ。
聡一はコーヒーを飲み干すと、店長がやってきてデザートが出てきた。
この店のおすすめであるアボガドのアイスだ。
「おまけだ、いつも来てもらってるしな」
「いいんですか?店長」
店長は腰に手を当ててこういった。
「いつも来てもらってるし、聡一には感謝してるんだぞ、俺からのサービスだ」
「ありがとうございます。」
聡一はそういうと、一口ずつアイスを口へ運んだ。
カフェで、長い時間過ごした。
「そろそろ行かなきゃ」
「そうか、また来てくれよな」
「ああ、わかった。アイス、おいしかったよ」
聡一は店から出ると、既に日が傾き始めていた。
「そろそろ家に帰ろう」
店のドアが閉まる音が響いた後、聡一は家への帰路についた。
「さあ、帰るか」
太陽が沈み始め、辺りが暗くなり、自分の影が伸び始めた。