恋人に崖から突き落とされました
僕は恋人に崖から突き落とされた。あぁこれは助からないなって思いながら自分の真下にある川を見つめた。
誰にも言っていなかったが僕は高所恐怖症だ。ねだられて高い所まで来たのに人生初の紐なしバンジージャンプに生きた心地がしなかった。
ドンと衝撃が来て体をひんやりと包む感覚に、川の中に入水したのだと思った。周りがガヤガヤと騒がしい。こんな誰もいなさそうな地に人が居ただなんて…すぐにでも元恋人は捕まるだろう。ざまあみやがれ。
「君、大丈夫か?」
死んだと思っていた体はまだ無事なようだ。ゆさゆさと体を揺さぶられた。ゆっくりと目を開けると先程とは違って明るかった。
僕に声をかけた赤い髪の男はとても煌びやかな服を身に纏い、男の周りには国の騎士が数人居た。男の顔は何処かで見たような顔だった…知り合いなのかも。
「ゲホッゲホッ…ここは?」
男に支えてもらいながら体を起こして、あたりを見回す。ぐるっと武器を持った騎士に囲まれているが、そんなことはどうでも良かった。ここは崖の下の川ではなかったのだ。
見たこともない艶々とした床に分厚い絨毯、庶民の家が3軒立ちそうな広い部屋に大人同士で肩車しても届かなそうな高い天井。こんな立派な建物を持っている知り合いは僕にはいない。
「おい!お前!陛下の問いに答えよ!」
「えっ、あ、あの…大丈夫です、はい」
「それは良かった。君は何処から来たのかい?ここは国一番の警備網が整備されているんだけど…」
「わ、分からないです…」
「陛下、此奴は危険です!すぐ地下牢にぶち込みます!」
「待て…少し話を聞いてからだ」
地下牢があるだなんてここは城か何かなのかもしれない。そういえば先程から偉そうな騎士が男のことを陛下と呼んでいる。僕は宮殿に勤めているが今の国王はこの男ではない。
男の顔を見ると何か引っかかる、やはり何処かで見たのだろうか?じっと見つめているとハッとなった。僕に似た王妃様と隣で微笑んでいる第33代ガーネット国国王リカルド・ガーネットの肖像画が脳裏に浮かんのだ。
「も、もしかして…」
「ん?」
「り、リカルド陛下でいらっしゃるのですか?」
「そうだよ、知らなかったのかい?」
恐らくここは王族の居住区で国王の部屋なのだ。僕は一度も入った事はないから気づかなかった。
「君の名前は?」
「く、クララです」
僕は第33代王妃様と顔が似ていることと更にもう一つ共通点があった。
それは、名前が『クララ』だという事。
主人公はボクっ娘です(*'ω'*)




