プロローグ
落ちていく。どこまでも落ちていく。
僕はあの日まで苦痛と悲しみと怒り、あらゆる負の感情に飲まれながらも必死に生きてきたつもりだった。ある出来事を忘れてまでも、心を空にして人形のまま生活していればどれほど楽だったか。だけど、今の僕は救いがたいほどの不器用だからそのような生き方は出来なかった。
大切なもの、大切な人が存在しない世界なんて、僕は生きたいとは思わなかった。だから僕は■■という愚かな選択をしてまでも、こんな世界から逃げ出したかった。
その決断に他人の同情なんていらない。
その決断に他人の批難なんて求めていない。
その決断から救済を受けるなんて望んでいない。
頭蓋とあらゆる部位の骨が砕ける音。肉と血があらゆる場所へ飛び散り醜く歪む感覚を最期に感じていたのを僕は強く覚えている。もうその時点で僕という人間の人生はそこで終わっている……はずだった。
「ねえ?死んだあとの気分はどう?」
聞き覚えのない人の声。目を開けると見知らぬ少女の姿が目の前で立っていた。この世の人間とは思えないほどの銀色の長い髪。瞳には明るい星のような黄金色をしており、僕は口を半開きにしたまま彼女の瞳に囚われていた。
「……」
あの日に初めて彼女と出会った日を、僕は鮮明に覚えている。僕はあの日から、僕を取り巻く世界と人生が変わっていくことを知らずにいた。
これは、”神秘”と呼ばれるものが残る世界で死から蘇った少年と死から救った少女とその周りの人間たちが織り成す、残酷で儚くも切ない物語である。
lineノベルから、令和小説大賞に向けて現在執筆中の作品です。
この小説家になろうで、皆さんの評価をもとにより良い作品が出来るようにと投稿させて頂きました。
まだまだ未熟者ですが、どうかご指導のほど何卒よろしくお願いします。