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私アンジェリーナ 女神様にお仕え致しておりますの 、最初のお話

作者: 秋の桜子

初めて形にしてみました。人間くさい神様って私は好きなのです


拙い物語ですが、皆様のお目通しよろしくお願いいたします。


読み返すと、純文学でもなく、ハイファンタジー要素も足りず、このシリーズは何物なのだろう


これを含めて、お空のお話、海の世界のお話、地上のお話、で完結します。


書いてる私は楽しいのでコメディーに戻りました。


 皆様、ご機嫌よう私天界の女神様にお仕えしておりますアンジェリーナと申しますの。 よろしくお願いいたします。


  皆様はご存知かしら?何故人に「災厄」しか与えない「魔物」が地上にはびこっているのか、そして何故人の身で「神の力」を持ち得てるのか…


「勇者」、「魔法使い」、「剣士」、「聖者」神の祝福を与えられ、闘う運命を受けねばならぬ者達がいるのか、


  ものすごく下らない理由ですのよ、私、女神様のお側近くに居りまして、長きに渡り可愛がった頂いておりますの、 あっ、年はそこそこいっておりますが、神の端くれですから見た目は妙齢の女性ですわ、うふふ。


 ――――あら、話がそれてしまいましたが、我が女神様は天から地上を御守りになる御方、人間は守るべき存在、そして女神様には海原をお納めになられる、兄神様がおられまして御二柱の神様はお仲はある日迄それはもう、睦まじかったのでございますが、

 

 ある日兄妹ケンカを始められまして、どちらも我を張り頭を下げないものですから拗れに拗れ、


 ついに兄神様が宣戦布告!


「そなたの守るべき存在の人間を我が創りし魔物で滅ぼしてくれよう」


  我が君様はお美しく、勝ち気な御方故、

 

「ならば兄上、我が選びし人に我が力の一部を与えて、魔物等一掃してやりましょうぞオーホホホ」


  買って仕舞われたのでございます そしてこれ以降、「魔物対神の御子」の図式の闘いが地上で繰り広げられ、今に至るのでございますわ。

 

  原因?何だったかしら?そう!女神様が楽しみに置いてらっしゃった「仙桃のゼリー」を遊びにいらしてた兄神様が勝手にお召し上がりになられたのがいけなかったと記憶しております。


 ―――――「あら?何かしら、嫌な予感が致しましてよ。 あの馬鹿兄上に圧されてるって!どういう事ですの!」


  ある日私が女神様に東の地から取り寄せた「美を保つ果実 仙桃」でお作りしたジュースをお運びした時、美しい眉間にシワをお寄せになられて右手で空間に弧を描いておられました。


「スクリーン、地上の我が子を写しなさい」


 何時見ても思いますが、神様ですから何でもありで御座いますねーとはいえ私もその一員でございますが、だってテーブルも無いのにそれらしい空間にグラスを置いたらー置けるのですものね 摩訶不思議でございます。


 女神様は涼やかな星屑を浮かべたジュースをカラカラとストローでお混ぜになると一口、


  スクリーンには「祝福」をお与えになった者達の心情やら、活躍やら、現状やらがリアルタイムで映し出されます、プライバシー何て有りませんことよ、フフ


 私もこれと大した用事も無いので、女神様が次々スクロールしてゆかれるのを眺めておりましたら、


「あー!見つけましたわ!こ奴が動いていないからぁ、どうなっているのかしら?経歴、オープン」


  見たところ、ご立派な「勇者」とお見受けする男性の所でお動きになられました。画面がそのお方の今迄の行い、現在のステータス全てが白日の元にさらけ出されます。


「まぁ、私とした事が迂闊でしたわ!この者に「ブラックスキル、お尻ペンペン」を与えていないじゃ無いのーそういえばこの頃、馬鹿兄上がテンション上げ上げで、ハイスピードで魔物造りやがってたからぁーもう、何て事でしょう」


「確かに「お尻ペンペン」が書かれておりませんわ」


 女神様はストローを投げ捨て、ジュースを一息に飲み干されました。 タンッと音を立ててグラスを傍らに置かれます。 空間ですがーまぁ、置けるので音もたてられるのでしょうね。


「一体何をやらかしておしまいになられましたの?この御仁は」


「私が与えし力の上にあぐらをかいて、現在進行形でやりたい放題!過去にも「ペンペン」忘れた事もありましたけど、「選ばれれし立場」の者もとなると、取り巻く環境で聖人君主に育つのだけどこの者はダメ野郎になり下がっていましてよ!キーッ馬鹿兄上に匹敵する「阿呆」ですわぁ」


 ほれ「阿呆」をご覧、と女神様は今迄のストーリーを上映して下さいましたわ。


 …………冒険者のパーティーのお仕事には魔物の討伐と並んで、次世代をお育てになる「育成」もされますの、一流とされる勇者のパーティーには、女神様が選ばれた少年、少女達が預けられるのですが、


 あら?見たところ、「勇者」さんに見習いさんになった御子は次々と代わられてゆきますねー?


 これはどういう事かしら、他のメンバーの、「剣士」さん、「魔法使い」さんの見習いさんはご立派になっていかれるのに?


「我が君様?どういう事でありましょう?勇者さんの見習いの御子のみお育ちになって無いような…」

 

 はぁぁと大きくため息と共にスクロールされた画面には恐ろしいストーリーが展開されておりました。


 ――――――「おい勇者様、ご自身の所に預けられた見習い位は稽古付けてやれないのか?あの子達は従者じゃ無いんだ、俺たちだってそうだっただろう?国から勉強するようにと派遣されてるのだから」


「お前も、魔法使いもご苦労様なこったな、俺の見習い迄稽古付けてやるとは!ハハハハ!暇なんだなぁ、放って置いてくれないか」


「剣士」の男は忌々しそうに勇者を睨み付けると彼の元から離れる。


  ……………まぁ、職務怠慢ですわねーと思いつつ見ておりますとその後の展開は胸が痛む事ばかり、


 ろくに闘えない「勇者の見習い」さんを囮に使ったり、まるで召し使いのような扱い………


 キラキラとした目の将来有望視された少年達が潰れてゆく様子は涙が出てきますわ。


 次々とシーンが流れいよいよ最新情報となりましたわ、正直もう一杯一杯なのですがー?


 あら裏で「魔法使い」さんが動いてらっしゃるのか、「勇者さんの見習い」を引き受けしなくされてますねーってか、こんな事ぐたぐたやってるから他の「勇者」さん達にご迷惑描けて魔物がのさばってるのでは?「阿呆」ですわね、こ、や、つ


  あらでも可愛らしい御子がおられますわ、黄金色の髪に碧空の瞳、どうやら「剣士」さんの見習いさんですね、一生懸命お稽古されてなかなかのものです。 将来楽しみですわね、ん?


 ――――――「ねぇ剣士、ちょっといい?この子魔法使えるでしょう、私今教え子居ないからこの子に魔法教えたいのだけどー「魔法剣士」ってレアなのよねーお互いで育ててみない?」


 まぁまぁ「魔法使い」のお姉さんナイスです。見る目がございますわ!そしてこの御子もヤル気満々、目をキラキラされて~頑張って下さいませね。


  ……………夜になりましたけど?何で御子が野営地から離れて、人気の無い場所に?剣も魔法もなかなかの仕上がりですけど、まだまだ幼いですわよ


 ――――――「待たせたな、これから手伝って貰いたいのだが、誰にも言ってきて無いだろうな」


「はい、勇者様、で僕は何をお手伝いするのですか?」


  え?何故?この子と無関係と言うよりまるで下働きの様な扱いしかしない「阿呆」さんのお手伝い?何だか怪しい予感しかいたしませんわ。


 ドキドキしながら息をのみ嫌な予想にならぬ様願ってましたのに、少年を前に歩かせると「勇者は背後から「聖剣」」でー!


 ブチッ!そこでスクリーンが消え去りました、見ると女神様は紅蓮の炎に御身を包まれていらっしゃいす。「憤怒の焔」激しくお怒りですわ!くわばら、くわばら…


 アンジェリーナ、この「阿呆」は許す事は出来ません!勇者としてより、人としての一線を越えました、こ奴は己より力がある「勇者」を出現しないようにこれまでも動いて来たのです!己の役目も蔑ろにして!」


「あの少年は?可哀想でなりませんわ、そもそも「剣士」さんと「魔法使い」さんがお育てしてる御子なのに…でも何故?新しい力が現れなければ困るでしょうに?」


「そうです。祝福を受けし者でも無限ではありません。その身に宿る力を使いきる時は必ず来るのですから」


「魔物は次々と現れて来ますもの。高位の魔物を討伐するには大きな力を使います、ですから使えば使うほど力の枯渇は早くやって来ますわ」



 女神様は忌々しそうに何やらつぶやかられました。


「そもそもこんな事になったのは兄上がお取り寄せゼリー食べやがりましたからよ!さっさと私にお謝りになれば済むことですのに」


 あらーやっぱりゼリーですか、食べ物の恨みは恐ろしいとは言いますがーそろそろ御許しになられてもとは思いますが、ダメでしょうね。


「何?アンジェリーナ、私悪く無いのですからね、考え違いしてはいけません」


 あっやはりダメいらっしゃいますか。


「それよりも我が君様、どうされます?先程の映像がリアルタイムならあの子の「死」は「勇者」のみ知る事実、ならばお救いになられる事も出来ましょう?」


「ええ、出来ますとも、私を誰だとお想い?スクリーン」


 ……………再び映像を映し出されました、さぁ神の御技をご覧あれ、何でも有のご都合主義ですわよ~フフフフ、


「先ずは少しだけ時間を巻き戻しますわよ、大きな介入は出来ませんからねー「少年」と待ち合わせ場所に現れた「勇者」」


 そのシーンでストップ、女神様はは少し首を傾げてお考えになられておられましたが、


「ブラックスキル発動、これから付与に入ります 先ずは「勇者」「魔物囮効果、常時発動」「お尻ペペんペン」「少年」「勇者からの経験値転送」、そうこれ位に致しましょう」


 うふふふーと満足そうに微笑みなされますが、黒いですわぁ…ブラックスキルはステータスに表示されませんし「勇者」に与えられた物といえばえげつないですわよ。


「我が君様、随分厳しいお扱いの様な」


「これ位は当然ですわ!私の怒りを受けてみなさい!」


「それに比べて「少年」には劇甘ですわ」


「あら、気が付いて?そうよ、この先「阿呆」は魔物が寄りに寄って来ますからね、まぁ、当分は対応出来ますから、でもそれによってレベルが上がってしまうと、意味が無いのでそこは「少年」に経験値を転送することによって一石二鳥を狙うのよ」



  ははぁ、つまりは「勇者」に討伐さすだけさしてどんどん力を使い続け、枯渇を早める、魔物討伐による経験値は「少年」に転送されて、彼はレベルがとてつもない勢いで伸びてゆくー、


 という事で御座いますね。実に我が君様らしいと思いますわ…


「でね、アンジェリーナ、貴方には地上に降りて少年に憑いて欲しいのだけどー」


「わ、私を地上に?」


「そう、少年を守護して欲しいの、まぁブラックスキルの効果でそうは長くはならないから」


 ……………ふむ、私もこの先気にはなりますし、それに「勇者」の堕ち行く様も間近で拝見したいですから、守護天使として行くのも良いかもしれません。


「かしこましました、我が君様しかとお引き受け致しましたわ」


  私はその場でふうわりと「隠密」の術をまといます、これで地上に降りても術を解かない限り誰の目にも触れませんのよ、それに「少年」、うふふ~中々可愛らしい御子様なので、少しウキウキと、はっ!私としたことがはしたないですわ。

 

 ―――――「結界」をくぐり抜け、地上に出たら何という事でしょう、嫌ですわー「あの時」では有りませんか、


 はてさてどうしましょうと考えてましたが、あらぁ「魔物囮」が早速発動されてますわよ~しかもかなりのサイズ!これを利用しなくては、


「だ、誰か、誰か助けてくれー」


 人間の声でそれとなくお二人の気を引きます、「魔物」へと気が逸れたときに少年のオーラの中へとするりと忍び込むと、まぁ、何てキラキラな清いのでしょう!私とバッチリシンクロ出来ましてよ!


 うふふ~この様子ではこの御子「聖者」のお力にも目覚める事になりそうですわーあーん楽しみですわね。


 ―――――「う、うわぁぁぁぁ」


 勇者は汗だくになりながら、真夜中に飛び起きた、宿の一室カーテンの引かれてない窓からは白いが何処か禍々しさを感じさせる月の光が射し込んでいる。


「ぐ!いい、痛い、痛い、心臓が何故?俺に呪いはかけられないだろう?」


  最近眠りにつくと、自分の元に見習いで来た子供達の事が繰り返し、繰り返し、夢に出てくる、彼らに何をしたのか、全てを思い出させようとするかのように、そしてその度に冷たい何かが勇者の心臓を握って離さない、その痛みは「死」を予感させる物だった。


 …………うふふ~「お尻ペペんペン」 はバッチリ発動してるみたいですわね、そうそうまだお話してませんでしたわね、先ずは「お尻ペンペン」ですが、これは力を与えられた時に対になってるモノなのです。


 よく「悪い事すると胸が痛む」って言うでしょう?あれのスーパーバージョンです。「神の御子」として、人外の力を与えられてますからね。


 幼い内から夢を使って、良い子にお育ちになるよう少し教育させて頂くのです、そして今回「阿呆」と女神様に言われてしまったこの御仁は「スペシャルバージョン、お尻ペペンペン」を付与されておしまいになられました。


「ペンペン」の方は時なに発動ですが、「ペペンペン」は毎夜毎夜になりますのーお心のお弱いお方でしたら、フフフさぁどうなるのでしょうかしら?


 ――――――「何かおかしくない?」


「ああ、どうしてこうも魔物が次々、次々、この土地に寄って来るんだ?でもまぁ、普段離れてる仲間も集結してっから良いのやら、悪いのやら」


「師匠?こんな事ってあるのですか?」


「ないないないないー無いんだぞー」


 あら、中々魔法使いのお姉さん鋭いですわね、そうですわよ~囮が居られるので寄って来てますのーフフフ


 そのお陰で私の可愛い愛し子は日々の努力とブラックスキルの相乗効果で成長率素晴らしいですわぁー


 最近ではちょっとした有名人になってますのよ~その名も「次世代の最強勇者」まぁ、ちょっと残念な称号ですけど、


 ――――――「それにしても最近のお前は凄いぞ!師匠として誇らしくて、誇らしくて」


「この人ね、あちこちで自慢しまくりなのよねーでも私も思うわぁ!流石は私達の教え子!」


「そ、そんな事無いです!師匠達が一生懸命教えてくれるから、僕はついてくだけです!これからもよろしくお願いします」



 あーん、何ていい子なのーそうよ~、私の可愛い愛し子は最強なのだからぁ、って私も地上のシルフやらエルフやらに自慢しまくってるのよーなので、うふふ何と精霊族にファンクラブが立ち上がりました~


 気になった皆が愛し子見学に来てね、ノックアウトー可愛いーって!


「おい、依頼状が来たぞ」


 青い顔色でふらりと羊皮紙に書かれた文を手にした、勇者がやって来ましたわよ~フフ


 相当追い詰められてるご様子ですわね、夜眠れ無いのですから、体力も何もかもが戻りにくい事でしょう?


 でも貴方過去にある少年を追い詰めて、その御子は命も落としてしましましたのよ。


 将来を有望視されてた少年、ご両親も少年もう二度と安らかな眠りはありませんの、なので、身をもって償いなされませ。


 ――――か、身体が重い、何故だ?「聖剣」が重い、何故だ?何故こうなった?


 勇者は迷っていた、幾日幾夜眠りにつくと訪れる悪夢、冷たい「死」の予感、そしてまるで自分が呼び寄せているかの様に日々現れる魔物…


「ぐ!」


 …………あらぁ、魔物に噛みつかれてしまいましたわ!そして血が止まりませんわねーフフ、私神の端くれですから、「力の残量」って見えますの、


 んーもうそろそろ終わりに近づいてますわね、「聖剣」の力ともシンクロが出来て無いようですし、そうそう「聖剣」で人が斬れるのか?って思われるでしょう?


「斬れる」のですよ。本質は、「剣」ですから、様は迷いがなければ良いのです、聖にも邪にもご自身に確たる信念が有れば自身の力に応じて何者も斬れるのですよ。


「勇者」は迷いの森に入り込んだ如くお心が揺れておりますから、そうなると切れ味も鈍るし、術も放てなくなります、最悪


「剣が鞘から抜けない」

 

 という具合に相成ります、見たところそろそろーかしらね。


  ―――――「勇者様ー」


「勇者の血」を口にした魔物が元気100倍魔物マンに変化致しましが、そこは私の可愛い愛し子の出番、


 かつての全盛期の勇者を凌ぐ力を得てる彼は、今や剣に「破魔」の気を纏わせる迄に成長されてるのだから


 一太刀で終わらせました。


 ―――――「おい勇者、話がある」


「フンッ少し前迄は勇者様ってたろうが、弟子のお陰で随分偉いさんになった様子だな」


「その弟子に癒して貰ってる野郎に言われたくないな」


 寝台の上で横になってる勇者は顔をしかめると、そっぽを向く


「何の用だ」


「単刀直入に言う、明日の大討伐出てこないで欲しい、怪我したともう話は通してあるから」

 

「なっ、勇者の俺に来るなと?何故?」


「それはお前が一番わかってるだろう?」


  見下げた視線で剣士は勇者に冷たく言い放った。


 …………… まあ!やっと言われましたのねー最近ダメダメっぷりだったのですから、勇者はね……


 ほぼ魔法使いさんと剣士さんと愛し子ちゃんで討伐してる現状ですからねー足手まといは邪魔だと。


 そして薄々気が付いて来られてますわね、勇者の居るところ魔物が寄って来ることに、


「あれ?師匠どうされてのですか?勇者様は明日に備えてお休みなさらないといけないのに、お食事お持ちしました」

 

「お前は俺の弟子だ、これ以上何もするな、こいつのお前に対する扱いは酷い物なのだから」


「で、でもお怪我されてるから」


「フンッ、明日はこいつは来ない、足手まといは要らないからな、さっ行こう」


  あら嫌だ!剣士さんの最後の御言葉で勇者の迷いが消え去りました。これはいけません!愛し子を守らなければ!


「お、お前さえ居なければぁ」


  勇者は傍らに置いてあった「聖剣」をスラリと抜くと愛し子の背後から斬りかかりました!


 私は即座に実体を現し「守護天使の護り」で彼を包み込み、剣を受け止めましたの、


 涼やかな音と共に剣は弾き飛ばされ、その衝撃で勇者は壁に叩きつけられると、ズルズルと崩れ落ちましたわ。


  私の腕の中で目を閉じ身を竦めてた愛し子は恐る恐る私を見上げて来ましたよ~あー可愛い~


「貴方は誰ですか?」


「私はあなたの守護天使ですよ」


 にこりと笑いながらそれだけ伝えると、私は再び「隠密」の術を纏いましたの、後もう少しですわねー!


 そうそう、私の姿を偶然目にする事になった剣士さんは凛々しいお顔が呆然と伸びてましたけどーフフフ、


 それにしても勇者はつくづくお馬鹿さんですわ、この事で彼の力は消滅してしまいましたもの、私レベルと言えど「神」に逆らったのですから。出来れば明日は大人しく寝ていてもらいたいですわね。


 ―――― 天にも届く大きさの巨大な魔物、勿論勇者に寄って来たのですが


 嫌ですわぁ…あれだけ要らないって言われてらしたのに、しっかりと装備品を身に付け最前線で陣取ってらっしゃいますわ。


 勇者…貴方、来られましたの。


  少し周りをご覧あれ!貴方のパーティーメンバーの魔法使いさんと剣士さんは苦虫を噛み締めたかの様な素敵なお顔つきになっていらっしゃいましてよ!


 他の「勇者様」達も最近のダメダメっぷりを目にされてるからドン引きされてますし…その場をさっさと他の御仁にお譲りあそばされたのがよろしいかと思いますわ。


「我は神に選ばれし者、光の力で滅ぼしてくれよう」

 

 やーめーてー、もしもの事になったらどうするおつもり?あら!魔物がお口に力を集め始めましたわ、戦闘モード突入ですかしら!


 早く抜刀して先陣斬って下さいな、あら?あららぁ?まさかこのタイミングで?


「ぐ!ぐ!何故?抜けない!」


 嘘…!どうするおつもり?まだ他の「勇者様」達はお気づきになられてませんけど、時間の問題かと、


 あら?この魔物お馬鹿さんですわ、最初の一発を天に迎けて放ちましたの!即座に、動きが御座いましたわ。


 ……………え?そう来ましたかぁー!


「ぐわっ!なっ何だ?」


 魔物の一発この場に居合わせ者たちが天を仰いだその時、魔法使いさんが勇者を攻撃!


 地面に倒して痺れさせたのち、続けて剣士さんが近づき勇者から「聖剣」を奪うと、


 積年の恨みを込めファイト一発!素晴らしい足さばきで場外へと蹴飛ばしましたのよ!そして直ぐ様、


「受けとれ!アーサーお前なら抜ける!」


  きゃあー!何て素敵な展開なのー弟子に聖剣を投げてよこしましたのよ~


 それをしっかりと受け止めると、愛し子は戸惑いつつもゆっくりと鞘から抜き出して行くにつれ、眩く輝く白銀の光を纏った剣身が現れました。


「神託の光」が彼を包んでいきます。


 幼い勇者は神憑り魔物を一瞥すると剣を構え、魔力を足に込め空中に足場を作り出しながら、上へ上へと飛びあがって行きましたの。


  そして大上段に構えると、巨大な魔物を上から下へと断ち切っていかれましたわ!


 勿論「破魔」の力、それと「聖剣」の持つ力と見事にシンクロされまして、


 端から霧へと変わってゆく魔物、しかも死のまぎわに放たれる「邪気」も浄化しながら………


 流石は私の可愛い愛し子ちゃんですわぁー、素晴らしい御成長です。


 そして軽やかに着地を決めると周囲は地鳴りのの様などよめきが!そして光が消え我にかえると、


「あれ?僕何で抜けたの?何をしたの?」


  目を丸くさせて聖剣を目の前に掲げて呆けた様子の彼、うーん可愛いんだから!さぁ私も最後お務めの時が来たようですよ。


「勇者アーサー様」


  ふうわりと「隠密」の術を解き放ち実体を顕にした私は深々と礼を取ります。


「あ、貴方は守護天使様」


 あーん様って可愛いったらぁーでも今日でお別れなのよねーくすん、


「はい、そのお務めも今日で終わりましたわ。私はあなた様が一人前の勇者になるまで、女神様から御守りするようにと任された者、そして今!それは終わりましたね、皆様」


 私の言葉にその場の者全てが承認の意を叫びました。


「オオー!我らの新しき勇者殿ー!」


「え?僕が勇者って?」


 しっかりと聖剣を握りしめ、戸惑う愛し子に私は笑顔で近づくと、


 そっと額に口付け致しました。きゅっと目をを閉じてた様子はもうこのまま天に連れて帰りたい程の愛らしさ!


「この先も、天から貴方の事は見守ってますわ頑張って下さいませね」


  名残は惜しいですが、帰らなくてはなりません。


 私は天へと手を掲げます、さぁぁーと降りてくる光の道、その中にさらと入るとゆるりゆるりと昇って行きます。


 私を見送る幼い勇者の為に、祝福の白い花弁と光の粒を撒き散らしながら…


「ありがとう、僕頑張る」


 精一杯手を振って最高の笑顔の愛し子の姿をしかと心に刻み、私は女神様の元に戻って参りましたの。


 ―――――「只今戻りました、我が君様」


「ご苦労様、上出来でしたよ、ここまで上手く行くとは流石は貴方ですわね」


「ありがとうございます。で私は何もしておりません、あの剣士さんと、魔法使いさんのご尽力ですわ、「人は人を育てる」でございます」


 クスクスと私達主従は笑いました。


「そういえば忘れておりましたが、元勇者ってどうなりますの?」


「はっ?ああ、彼ね、スキルも全て無くなった今、私の子では無いので、わからないわ、でもそれなりの道が残されてるはずよ、貴方なら分かるでしょう」


「まぁ、そこそこは、あまり素行も宜しく無いお方でしたから、おそらくこの先向かうところ敵ばかりの余生かと」


 私のその答えに我が君様は高らかにお笑いになられましたの。


「おーほほほほ!それは痛快、私も見ておりましたが、あちこちで恨みを得てる様子ですからねーホホホ」


  本当にお側で眺めておりましたけど、困った御仁でしたわ、フフフ、フフフ、向かうところ敵ばかりってフフフ、あら私も女神様に毒されたかもしれませんわ、フフフ、

 

 ――――――久しぶりに戻って来た天は前にも増して穏やかで、さぁ久しぶりに我が君様のお気に入りの「仙桃のジュース」でもお作り致しましょうか。


 あ、そうそう、勇者アーサーですけど彼のその後でございますが 此方と地上の神殿のご準備が整いましたら、


「拝謁の儀式」で女神様が彼に祝福をお与えに御光臨なされるのですが、既に「紅鏡の剣」は彼の物になってますからね。


 はて、何をお与えになられるのかしら?楽しみですわ。


 そして私の愛し子ちゃんですからね フフ彼は長じて「大勇者」と称され後の歴史に名前を留める事になりますの。


 ということは、女神様と兄神様の下らないケンカは果てなく続いてるのは言うまでもありません。


 それではお時間もよろしい様で、これにて私のお話は終わらして頂きますね。





一度形にしたら止まらなくなり、拙いながらに続編を書いてます。



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