第1話 木山家の秘密
春人のSSランク戦出場権利をかけ、天城との模擬戦により見事権利を得た翌日、朝の校内の様子はいつもと違っていた。
いつも通りに上履きに履き替え、教室に向かう春人。その先には小走りで走って来る青葉が見えた。
「おい、春人。お前噂されてるぞ!」
軽く息を切らしながら青葉は言う。
「あー、副会長の園崎先輩もその様な事言ってたが、俺がFランクだって事がバレてんだろ?」
「それもそうなんだが…、えっと…」
青葉は歯切れが悪そうに答え、春人からスッと目をそらす。
「お前の家の事が何故かバレてるみたいなんだ」
「は?冗談はよしてくれよ、もしそんな事になったら…」
春人は表情をきつくし、考え込むように手を顎にあてる。
「ああ、あの国内最大のEデバイス開発・製造会社【木山グループ 】の御曹司であり、魔法という概念を発見しEデバイスの第一開発者、木山 秋水の孫でもあるお前がFランクだとバレたらなー… 」
青葉は顔を手で塞ぎ天を仰いだ。
「この前悪目立ちするなと雪菜に言われたばかりなのに…。すまん青葉、青春どころじゃなくなった、俺は今すぐ…」
春人は教室とは逆方向に向きを変え、走り出そうと1歩踏み出した時、現状ではありえない光景が広がっていた。
「うわ!あれが木山の御曹司か!次のデバイスの新作いつ出るんだろうなー」
「見て見て、あの方が春人様よ!天城会長と互角に戦ったらしいわよ!」
「もしかして、木山の隣にいるのAランクの青葉君じゃね?俺もあいつみたいに強くなりてーなー」
…想像を超える圧倒的光景っ!!!
「春人…、本当に青春どころじゃなくなったようだぞ…」
「こ、これも青春の内さ。」
春人と青葉は苦笑いを浮かべながらそう言っった。
(これでますます負けられなくなった。バレたからにはメディアにも取り上げられるはず、今まで裏で極秘にされていた俺がFランクだという事を…。だがこれはチャンス。Fランクの俺が勝ち、この世を変える。新道先生も望む様に)
そして、春人は再び前へと進み始めるのであった。
お読み頂きありがとうございます。長い期間空いてしまいましたが、これからも聖なる魔法師の青春理論をよろしくお願いいたします。