第4話 特別授業が始まるチャイム
カーテンの隙間から日が差し、外からちゅんちゅんと鳥が鳴く。
そしてベットには布団で身を包む春人が・・・。
部屋に立て掛けているデジタル時計は8時と表示している。
そこにガチャりとドアノブを捻る音がはっきりと聞こえた。
「はる兄ちゃん、そろそろ起きないと遅刻しちゃうよ〜」
そう言って女の子が部屋に入ってくる。
「んあ〜、雪菜・・・。飯か?」
春人は布団を剥ぎ、大きなアクビを見せる。
「うん、昨日結局お父さんもお母さんも帰ってこなかったから、朝ご飯は菓子パン」
この雪菜と呼ばれた少女は木山 雪菜。春人の妹で、東京魔法育成学校中等部に通う2年生だ。
「分かった。着替えたらすぐ1階に降りるから先行っててくれ」
「うぃ~。あ、何だったら着替え手伝おうか?」
雪菜は口元を手で抑え、ニヤリと笑う。
「な!?だ、大丈夫だ。俺1人で充分だ」
「そっ。じゃあ先行ってるね」
タッタッタ・・・と雪菜は階段を降りていった。
「全く・・・、可愛い妹だぜ」
ふっ・・・と不敵な笑み浮かべながら、春人は服を脱ぎ捨てた。
バリッと菓子パンの袋を開け、もっさもっさとパンを頬張る兄妹。
「雪菜。今回ランク昇格戦出るのか?」
「出るよ〜。そろそろCランク取っときたいからDランクトーナメントにエントリーしといた」
雪菜の現在のランクはD。中学1年か2年で取れれば普通といったところだ。
つまり雪菜は春人と違って、至って普通という訳だ。
「そうか、頑張れよ!今回は応援行ってやれないかもしれないけどな」
春人がそう言うと雪菜は口にくわえていたパンをテーブルに落とした。
「はる兄ちゃん、参加すんの?」
「かもしれん」
「Fランクトーナメントに参加して子供にボコボコにされる兄なんて見たくない」
「お前の中で俺はどれだけ弱いんだ?」
春人はガッカリしたように俯いた。
「まあ、まだ分からないが出るとしたらSSランクだ。大人にボコられるなら大丈夫だろ?」
そう春人が言うと。
「ま、あまり目立ち過ぎないでよね。悪い方に。お父さんに怒られるよ」
「分かってるよ」
春人と雪菜は食事を済ませ、それぞれの学校に向かって歩き出した。
「やばいな、これは急がないと遅刻だな。校門前の坂道はダッシュだ!」
春人は腕時計をチラッと見て、およそ1kmの長い坂を走り出す。
「ん?」
ゴールまで残り100mとなったところで、普段見かけない人影が見えた。
(あれは生徒会長か?)
校門までたどり着いた春人は軽く頭を下げ通り過ぎようとする。
「君が木山 春人だね」
唐突に自分の名を呼ばれた春人はピタッと立ち止まる。
「そうですけど」
「僕は3年A組天城 瞬。本校の生徒会長をさせて頂いてる」
天城と名乗った生徒会長はニコッと笑顔を見せ、さらに春人の方へ近づく。
「木山君はSSランクにエントリーしたいんだよね?」
「はい」
春人ははっきりと答えた。
「校長先生から君がSSランクにエントリーするに相応しいか、生徒会が決定する様命じられた」
「やはり、お許しは頂けないですよね」
春人は今度こそ校門を抜けようとしたところで、チャイムが鳴り響く。
「安心して。遅刻にはならないから」
天城会長は春人の肩をぽんと叩く。
「これより実習棟にて特別授業を行う!」
「は?」
春人は思わず声に出してしまう。
「授業内容は僕との模擬戦。これの授業の結果により、エントリー権を受諾するか否かを決定する」
(これは本気でやばいかもしれない・・・)
なぜなら・・・。
「高校生で唯一のSSランク魔法師の僕を相手に、少しでも追い込む事ができれば認めよう」
春人は本日2度目となる不敵な笑みを見せ、こう言った。
「分かりました。この授業、謹んでお受けします」
お読み頂きありがとうございます。
一応バトルものの物語なのですが、次回でやっと書けそうです。
次回もお読み頂ければ幸いです。