第1話 木山春人の青春理論
夕日が沈もうとする5時頃、1人の少年が教室の窓から夕日を眺め、こう言った。
「青春とは一体なんなのだろうか・・・」
すっ・・・と夕日から目をそらし、少年は天を仰ぐ。見上げたところで、夕焼け小焼けをBGMにカラスが数匹羽ばたく光景など見ることはできない。
見えるのは寿命でチカチカと光る蛍光灯だけ・・・。
「ふっ・・・、これも青春・・・」
「勝手に青春コメディに持っていくのはやめてくれよ、春人」
ぐいっと割って入ってきた少年の名は青葉 悠。少し青春を語って天を仰いだ少年が木山 春人。
2人共、この東京魔法師育成高等学校の1年生である。
「青葉。青春は大切なんだぞ!人生で1度しかない高校生活を青春無しで過ごすと言うのか?」
春人は先程まで座っていた椅子から立ち上がり、青葉に指を突きつける。
「そ、それは・・・」
「お前にとって青春とはどういうものだと思う?」
「そりゃー、昼休みに屋上で恋人とランチしたりとか?」
青葉は「んー、それと・・・」と腕を組みそれなりに考えてる中、春人は無視して教室の教壇に向かってスタスタと歩き出した。
「典型的だがそれも青春だろう」
「なっ!?」
「放課後、友達と共にカラオケやボウリングに行くのも青春。休み時間に読書や勉学に励むのも青春。何も学校絡みでなくても構わない、家でネット友達とオンラインゲームをするのも青春!充実さえしていればそれは青春なんだ!これが俺の青春理論」
春人は教壇に上がり高らかに手を上げる。
「じゃあさっきまで春人が機械を1人でいじってたのも青春だと言うのか?」
先程まで春人が使っていた机の上にある、剣柄の様なものを見て青葉は言った。
「もちろん」
「そろそろ現実に戻ろうな?これ終わらせないと明日の魔法実習に間に合わんぞ」
「ふっ・・・、明日からは勉学の青春の始まりだ」
そして、学校のチャイムをBGMにカラスの「あほ~」が教室内に響き渡り、木山 春人の1日が終わるのであった。
お読み頂きありがとうございます。本作のキーとなる魔法とは外れた回となりましたが、次回からは本格的に物語が動き始めます。
次回もお読み頂ければ幸いです。