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2章 懐かしき邂逅

その相手は、やはり彼女であった。

曾て英雄と旅を共にした、親交深い人物。彼女は唐突な懐かしさに涙を零したが、咄嗟に拭う。

スマホを勢いよく耳に当てては、その電話口の先の人物の哀愁に触れようとした。


「れ、レイラなのか!?」


電話口の先の人物は「ええ、」と静かに言うと、ユウゲンマガンは感情に溺れた。

既往、会いたかったが離れ離れになってしまっていた人物…そんな懐かしさとの再会。

スマホの向こうのレイラは疲れていたのか、ゼェゼェと息を漏らしていた。


「社長…何やってるんですか。何でも屋、なんて……。

―――其れに、ルナチャイルドさん達の救いの手も断ってるっぽいじゃないですか。

確かに迷惑をかけたくない気持ちは分かりますが、心配させる方が迷惑かけてると思いますよ」


レイラは淡々とそう述べるや、彼女を納得してみせようとした。

ユウゲンマガンは確かに自己への自信を捨て、全てを自分の所為だと考えるような卑屈さに囚われた為、誰かに縋らない一心で耐えてきた。

しかし、心配させることが一番の迷惑だ、と伝えるレイラにしみじみ改心し、有能な部下を持ったものだと考えた。

いや、今はもう部下では無く、彼女に手を差し伸べてくれる救世主になろうとしていたが。


「ははは、はっきりと言ってくれるな。…その、なんだ。……申し訳なかった。

自分は今までに多くの罪を残した以上、やはり自分の残酷さを知るものだった。もう、誰にも助けは求めないってあれから決めたんだ。

いつの間にかお前とも別れ、気づいたらこうなっていた。でも、私は満足してる。社長として、では無く一国民として、だ」


「何言ってるんですか!社長は社長ですよ!」


レイラはスマホの奥で、鮮明にそう伝えた。

其れは彼女の心の何かを変えるものであり、ユウゲンマガンは心を打たれたような感覚に陥った。

社長、彼女はかつてその職務を全うし、大きな会社を率いてきた記憶がある。

しかし今となっては灰燼に帰した過去、非情たりし現実に背いて裏影で生きてきたつもりであった存在の、太陽を見つけた瞬間であったのだ。


「―――ははは、私は何時までも社長、か」


「そうですよ。社長は社長、私はずっとついて行きますから!

ですから、素直に姿を見せてください!もう着信拒否なんてしないで、素直に応答してください!」


「……そこまで言われると慇懃無礼いんぎんぶれい、なんか怪しく見えちゃうぞ」


「そ、そうですか…。

……社長、何でも屋でしたよね?…なら、私を一つの顧客として見てください。

―――『今日の午後6時、セントラルパークの碑の前』に来てください」


彼女は自分の立場を都合よく用い、ユウゲンマガンを失笑させた。

流石に顧客としては元社長も見逃しておくわけにはいかず、彼女は無理やり態度を作った。

別に悪寒を感じる訳でも無かったが、曾ての部下に頭を下げるのはどうも慣れない。


「分かりました、レイラ様。……その時刻にお参り致します」


そう言ってスマホの通話を切るや、少しばかりの溜息を吐いて見せた。

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