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23章 深淵の干戈

幾多もの電動のこぎりを構えた存在は目の前にいる侵入者に対して牙を剥いた。

けたたましい音を響き立て上げながら、一気に襲い掛かったのだ。高速で回転する刃は摩擦で擦れ、静電気が迸る。一瞬だけ灯る輝きは暗闇の中で燦爛とし、3人にとっても位置を把握するに良い手段となった。

重たい機体を持ち上げ、鋸で斬り刻もうとする兵器を回り込むようにして3人は走った。案の定、動体センサーは反応して後ろを向くも、咲夜は自身の武器である投げナイフを一気に投擲した。

しかし、頑強な装甲を前にしてナイフは刺さらず、そのまま地面に落ちた音が聞こえる。咲夜は苦い顔を浮かべ、兵器の堅牢さを呪った。


此処で一気に状況を打開すべく動いたのはユウゲンマガンであった。

深紅の剣を抜刀しては、一気に兵器に対して剣戟を放つも、装甲は其れを弾くことを容易いとした。

此処でレイラが拳銃で何発か銃弾を撃ち込むも、兵器は簡単に破られない。そんな3人に対して、兵器は重たい尻尾を振り回し、暗闇の中で攻撃を図ったのであった。

レイラとユウゲンマガンは無事に躱したものの、咲夜は腹部に攻撃を蒙り、そのまま壁まで吹き飛ばされる。

狼狽えの声を上げる咲夜に2人は咄嗟に声を掛けたものの、兵器は更なる攻撃を仕掛ける。


―――電動のこぎりだ。

壁まで追い詰められつつある3人を滅茶苦茶にすべく、兵器は音を震わせて、電動のこぎりで斬りこもうとしたのだ。咲夜は壁にもたれかかった状態で、口から血を吐いているのが動きと音で分かる。

一刻も早く状況を打開すべく、ユウゲンマガンは剣を構えた状態で兵器に回りこんだ。薄暗い機械室の中、電動のこぎりの喧噪的な音だけが耳に入る中、後ろに忍び込んだ彼女は更に攻撃を放った。

だが、兵器は尻尾で彼女を迎撃した。尻尾の先の大きな針が彼女の剣の刀身と衝突し、摩擦音が響き渡った。


「―――私は負ける訳には行かないんでね!!」


彼女は尻尾との鍔迫り合いを途中で放棄し、攻撃が空回りした兵器に渾身の一撃を入れた。

剣は装甲を裂き、長い刀身は中の緻密的な構造に入り込んだ。電気が溢れだし、兵器に多少の弊害が出始めるようになったのが一目瞭然であった。

更に彼女は剣で斬りにかかるも、兵器は迎撃として電動のこぎりで対抗した。鋸はユウゲンマガンを斬り刻むべくして襲い掛かるも、此処で何発かの銃声が響き渡った。同時に兵器はセンサーを失い、対象の位置が分からない、一種の盲目状態になったのだ。


「ナイスだ、レイラ」


「―――社長、早く蹴りを付けましょう!!」


そう言った時、既に機械は壊れつつあり、動作が正常では無いのは分かり切っていた。

常に機構を震わせ、溢れる電気を纏っては暗い部屋内を照らす発電機のようになっていたのだ。

そんな兵器に終焉を与えるべく、ユウゲンマガンは止めの一撃を放とうとする。

自身が兵器の上に乗りあげ、漏れ出す電気を歯牙にもかけず、一気に真下に向かって剣を刺し込んだのだ。


剣が刺さった瞬間、構造は全て噛みあう事を止めた。

その瞬間、刺さった場所から光が漏れだすのをユウゲンマガンが悟った時、剣を一気に抜いては兵器から離れた。すぐに兵器は大爆発を遂げ、辺りにパーツが散乱した。

暗闇の機械室の中では二酸化炭素が充満し、3人は咳が止まらない。だがレイラはそんな中でも、壁に寄りかかった状態の咲夜を助け、背負う形で何とか機械室から出た。続いてユウゲンマガンも出るが、機械室は可惜あたら擾亂じょうらんの極めたるもの、煙くなった部屋から竟に発火し、二酸化炭素の勢いは更に凄まじくなるものであった。


「お役に立てず、申し訳ありません……。

―――極秘監獄へ唯一繋がる道が…ああなってしまった以上は……」


「お前は車にいろ。…それぐらいは出来るだろう。

―――後は私たちがやる。―――ルナチャイルドを助け出す為に、な」


そう言った時、咲夜は彼女の反応を凄く頼りに感じた。

これ以上無い、心の安堵感。せめて彼女たちの邪魔にはならまいと自身で決心した咲夜は拳銃を取り出しては、極秘監獄への行き方を口頭で説明を加える。

今は淡々と燃え上がる機械室の中、先程まで兵器が立ち塞がっていた奥の先、其処に地下へと続く階段が在ると言う。其処まで詳細を知ってるのが多少気がかりだが、ユウゲンマガンは頷いた。

レイラは咲夜を心配そうにしていたが、拳銃を構えた咲夜は平気そうに振舞い、刑務所の出口へと独りでに急いでは姿を消え去った。


ユウゲンマガンは剣を構えては、徐々に燃え広がる機械室の様相を見ては焦りを感じ、レイラに急ぐよう指示した。彼女は重々しい顔を浮かべ、これから先に何が起こるか分からないなにがし不安が積もるようで、心情深々と先を案じていた。


「―――先へ行こう。機械室は間もなく炎上する」


「分かりました。……極秘監獄へ急ぎましょう」


2人はそう言葉を交わした時、燃え広がりつつある機械室の奥へと足を進めた。


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