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22章 拷問の價

4人は車に乗り込み、リリカが運転席に座ってハンドルを握った。

中に備え付けられたカーナビではテレビを観ることが可能で、散々に報道する事件の数々を誇張しているマスコミの物好きさに、ユウゲンマガンは痴呆と憐れさを感じた。

外ではユウゲンマガンとレイラの起こした幾多もの凶行を知る人たちが増え、先程まで彼女たちを見ず知らずであった人々は恐怖に駆られ、殺戮への畏怖を抱いていた。

車は車通りが多い通りを何事もなく疾走していく。車の中で銃の手入れをしていたレイラは只呆然としては窓の景色を見つめるユウゲンマガンが気になっていた。

さっきから彼女はやる気も無く、何処か自己の感情を虚構に覆い隠し、そして歔欷きょきしてるかのように見えるのだ、其れは陋穢ろうわいにして野卑やひからぬ事であり、悉く身を塞ぐ咳嗽きょき嗚咽おえつ、様々な事象表象を前にして、疲弊仕切っていたのだ。


外では相も変わらず、人々が流される情報に踊り狂わされている。

彼女たちの姿を見かけた人たちは警察に情報を提供していたり避難していたり等、あちこちで落ち着きを見せない。蒼天の下ではヘリコプターも飛び交い、決死の捜索が行われていたのだ。

しかし、そんな国民の全力意志を逆撫でするかのように嘲笑するや、ユウゲンマガンは車のシートに深く腰掛けて見せた。


間もなく車はゼラディウス刑務所近くのビル裏、物陰に停車した。

誰にも気づかれること無く降り立った3人は奥に聳え立つ、何重もの格子鉄線と幾多もの高い防壁。

しかし、老獪ろうかい且つ墻塀しょうへいたりし現実に抗う感情を蔓延らせる彼女にとっては無問題、厳重警備されている刑務所の管理なぞ杜撰ずさんに思えてしまう。

門の前では警察官が警備しているが、ユウゲンマガンは物陰から警察官を拳銃で狙った。


「―――咲夜、私たちにはどうも見当が付きにくいものでな。

……お前の言う『極秘監獄』って場所に連れて行ってもらいたい。……いいか?」


「分かりました。……経路はまだ曖昧の域ですが、ある程度の行き方は分かってます。

―――ユウゲンマガンさん、あの2人を射貫いたらミッションスタートです、行きましょうか」


そう咲夜が言った時、ユウゲンマガンはレイラの方を見た。レイラもまた、準備は完了しており、彼女の方を見ては莞爾かんじとして頷いた。その様子を見て、ユウゲンマガンは口元に笑みを浮かべた。

拳銃を持つ右手に力を込め、一気に引き絞った時には2回もの銃声と共に奥で佇んでいた警察官が血しぶきを上げながら倒れていた。


「―――じゃあ、始めるとするか」


◆◆◆


撃たれた警察官を尻目に、厳重に閉められた門を一発の剣戟で解除する。

開け放たれた刑務所への入り口に、3人は一気に突入した。かの凶悪な存在、教団フィオムへと立ち向かう為にも、彼女たちは一気に駆け抜けた。

管理室、此処では多くの監視カメラの映像を確認できる場所であり、無論、門前の警察官たちが撃たれた事を知っては慌てていた管理役の警察官は急いで救援を頼もうとする。

だが、世は現実足らず無常憚らん、管理室に対して窓を隔てた場所から穿たれた銃弾が管理役の警察官の脳天を射た。満足げな顔面をしていたのはレイラであり、3人は更に奥へと進む。


中は大統領が変わっても尚、薄暗く不気味であり、壁には滲みが付いている。まるで廃監獄かのように、天井は薄い光を敷衍化させてるだけの蛍光灯が点々としているだけであり、恐怖に駆られる。

事実、レイラは多少震えていたが、実際には幽霊よりも彼女たちのほうが恐ろしい。貞操概念を捨てた存在程、誠正しくない幽霊現象であれ突っ撥ねてしまうからだ。

所々では囚人たちが入れられており、地面に座り込んでいたりしている。そんな彼らに何の同情も示さず、3人は咲夜を先導に深淵へと足を踏み込んでいく。


中は警備が甘いようで、警察官の誰とも遭遇しないまま深淵へとたどり着いた。

其処は機械室で、錆びた機械が点在している。しかも稼働しており、暗闇の中で灯る赤は多少不気味だ。

その中、咲夜は2人に対して話しかける。さぞ計画通りに進んだ事象に満足していたかのように。


「この先に極秘監獄へ繋がる階段があったハズです、確か……。

―――私たちも行きましょう、其処で囚われているルナチャイルドさんを助けましょう!!」


そう言った時、3人の前にやたら重たい響きが轟いたのであった。

黮黯の中に光る、謎のセンサー。すかさずスマホの明かりで部屋内を照らした咲夜は、目の前にいた存在に驚愕した。そして、さぞ不機嫌そうに冷たい顔を浮かべては、武器である投げナイフを構えた。

ユウゲンマガンとレイラも其の"存在"を確認しては武器を構えた。…面倒そうな顔面を浮かべて。


「―――警備用兵器だな。しかも、簡単には通してくれなさそうだ」


暗闇の中の機械室にいたのは、巨大な蠍型のロボットであった。

重たい機構の尻尾を持ち、重厚感を受け持っているのが暗闇の中でも朧げに映る輪郭で分かる。

動体センサーを持ち、3人に対して侵入者と見なして備え付けられた、何本もの電動のこぎりを一斉に稼働させては、機械室にけたたましい音を鳴り響かせて。

咲夜は兵器に至近に寄っては刻まれた文字を確認した。―――『警備兵器オーディン・ソウル』……教団フィオムの紋章をしっかりと掲げた、秘密監獄の存在の示唆をする兵器だ。


「―――なら、行きましょう。私たちで倒すんです!!」


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