18章 究極召喚獣ディエス・レイ
胸に勲章を付けたルイズは白衣を着ながらも、そんな2人に対して拳銃を構えた。
銃口を2人に向けては、引き金を何度も引いて銃弾を穿とうと試みるも、彼女たちは咄嗟に攻撃を躱し、一気にルイズへ近づいた。近づく2人にルイズは離れながらも銃弾を撃ち続けるが、雨あられの中で2人は容易く回避していく。彼女の背に回っていたユウゲンマガンは構えていた剣で一気に突き刺そうと半ば試みる。
しかし其れは早計、ルイズは身体を反らして剣戟を避けながらも、攻撃を避けられ隙を生んだユウゲンマガンに向かって引き金を引いた。
だが、其れも運命は片付いた。ルイズの後ろからレイラが銃弾を穿ったのである。銃弾はルイズの右肩を掠り、彼女は蒙った影響で一時的に狼狽えた。
一旦離れた2人は、左手で右肩を抑える彼女に対して引き続き警戒の色を見せた。
白衣に多少の紅が滲む。2人を睨み据えたルイズは被った怪我に後れを取られること無く、再び拳銃の銃口を差し向けては一気に引き金を引き放った。
銃弾の雨あられが舞い散り、それらは2人に対して飛んでいく。しかし、ユウゲンマガンはすぐに走りだしては彼女を回り込むように背中へと向かう。其れに反応したルイズは走りだした彼女に銃弾を迸らせるも、壁の陰に隠れて雨をやり過ごしていたレイラはユウゲンマガンに気を引かれていた彼女に狙いを定めたのである。
ルイズは気づいた。しかし、彼女は回りこまれてると言う現実にも直面した。
咄嗟にユウゲンマガンを執拗に追うのを止め、壁際に背を向けてユウゲンマガンに銃口を向けた。
血塗れた剣を構えた彼女はルイズを何ら無関心のように見据え、見下していた。
「―――悪いな、裏稼業界でも一応上位に食い込んでる身でな」
「フン、勝手にしろ」
「なら、勝手にさせて頂きますね」
そうレイラが言った時、一発の銃弾が……ルイズから放たれた。
その先にあったのは銃を構えようとして隙を生んでいたレイラ―――其れは真正面の先を見据えて。
だが、銃弾は弾かれた。唐突に現れた赤色。反射的に反応したユウゲンマガンが剣の刀身で弾いたのだ。
「―――遅い」
そう言った時、ユウゲンマガンの剣は白衣を鮮烈な紅で染め上げ、心臓は遠くから射られたのである。
壁に寄りかかった状態で、そのまま血を脳天から流しながら…。ユウゲンマガンはそんな彼女の胸に付いていた、多少血掛かった教団フィオムの勲章を奪い取ると、自身の懐に入れた。
そして遠くにいたレイラに話しかける。彼女もまた、邪魔者が消えた事を理解していた。
「―――爆破するぞ。…退路は確保した、あとは逃げよう」
レイラからアタッシュケースを投げられ、其れを受け取っては兵器に対して設置を試みる。
チューブに繋がれ、まだ開発途中であったと思われる兵器に対して受け取った爆弾を繋げ、時限を確認して設置する。爆破時刻は10分後。しっかりと繋げた彼女はやる事も終わったため、レイラに報告した。
「爆弾設置完了!逃げるぞレイラ!!」
「分かりました!!」
しかし、現実は甘く無かった。彼女たちの前に現れたのは、好き勝手振る舞った2人へのルイズの置き土産。其れは彼女たちを足止めすべく登場した、兵器であった。
まさしくミサイル基地で戦った時のように、電気を纏った龍がサイレンと共に出現しては立ち塞がったのである。地下実験場では五月蠅くサイレンがけたたましく鳴り響き、立ちはだかる龍は大きな咆哮を上げたのである。
「―――どうやら簡単には返してくれないようだ、早めに決着を付ける!!」
◆◆◆
既に爆弾の時限は動いている。彼女たちは戦う事に焦燥を駆られるのは事実明白な事象である。
宙に羽ばたき、電気を纏う龍は眼下の2人に対して備え付けられたマシンガンで銃弾を放った。
連続して繰り出される銃弾に避けながらも、一気に攻撃を仕掛ける。
剣で一気に斬りかかるも、その長いリーチはあっという間に躱されてしまう。
「すばしっこいですね……!!」
レイラは時限に間に合う為にも急いで銃弾を放った。
銃弾は龍の身体に被弾するも、電気を纏った機械兵器はびくともしない。
其処に反応した兵器はレイラに対して手榴弾を展開したのである。しかし、レイラは咄嗟の反射反応で躱し、手榴弾の展開は空振りに終わる。
「これでどうだ……!!」
隙を見計らったユウゲンマガンは宙を舞う兵器に対して剣で斬りかかった。
しかし電気を放った兵器は彼女を感電させ、彼女は動くことが出来なくなった。四肢が言う事を利かないのである。所謂に「麻痺」と言うものであった。
爆弾の爆破リミットは刻々と迫っている。此処で動いたのはレイラ、銃を構えては兵器を纏う装甲の抜け目を捜す。そしてそれは兵器の背中、錆びて打ち砕けつつある装甲に狙いを定めた。
「喰らえ!」
一発の銃弾は装甲を剥がし落とした。背中の一部分から緻密機械が垣間見える。
何とか麻痺が終わったユウゲンマガンに対し、兵器はマシンガンで銃弾の雨を浴びせてきた。しかし、彼女は動けるようになったため、避けるのも容易い。
てっきりとどめを刺せると思っていたのか、兵器は隙を生み出していた。此処で背中からユウゲンマガンは剥がれ落ちて緻密機械部分が露呈した場所に斬りかかったのだ。
「終わりだ!!」
◆◆◆
兵器は墜落し、炎をあげながら地へ堕ちた。
残骸には兵器名と思われる名前が刻まれている。―――『妨害龍兵器フェミオス・アルミニ』……しかし名前など今は気にしている暇は無い。彼女たちは爆弾を仕掛けたのだ。
焦りに駆られた。腕時計で確認してみれば、残りは後5分。これで間にあうか、ギリギリのラインである。
「行くぞレイラ!!脱出だ!!」
「は、はい!!!」
そう言った時、2人は元来た途を全力で走り抜けた。




