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15章 セカンド・ミッション

ゼラディウス国際フォーラムへと続く通りを走り抜ける2人。

メタトロン戦で周囲に気づかれ、何人かの警察官や警備員に負われることに焦燥を感じながらも、一目散に駆け抜ける。人混みは先程の銃声で疎らになったが、それだけに追手から逃げにくい。ミッション途中でありながら、彼らに誅夷ちゅういされることは笑い話では済まない。

するとさっきの銃声で混乱の挙句に乗り捨てられたであろう大型バイクがカギを刺したままの状態で路傍に止まっているのをユウゲンマガンは見つけた。焦って逃げるレイラの手を無理に引っ張って後ろに乗せるや、そのままバイクで国際フォーラムに向かって走り始めた。

エンジン音けたたましく、勢いよく疾走し始めるバイクに人の走りで辿りつける訳がある訳もなく、追いかけていた警備員らは国際フォーラムにいる別の警備員たちに連絡を一斉に入れた。其れと同時、国際フォーラムの中に1台のバイクが肆意しいに侵入しては多くの人々を轢かんとイベント内で強行突破に出たのである。


「しゃ、社長!?そのままバイクで突っ切るつもりですか!?」


「ああ、強引で悪いな!!」


国際フォーラムの玄関口、人の出入りが極めて多い場所にバイクは突っ込んだ。

大きなエンジン音を唸らせて、2人乗りのバイクはそのまま人混みの中へとダイブしたのである。

和御許わおもとは世に乞うか?つたなし世に憚らんものを、彼女は誰そ望み叶えんか?いずくんぞ人を轢き、自らの理性を保ち得るのだろうか。


籌画ちゅうかく施爲しいは難しいな…。

―――俗に嫌厭され、百靈ひゃくれい日晷にっき死歿しぼつ朶頤だいされても、私は現実と言う名の大瀛たいえいを知らない事を、どうも潔しとしない人物柄でね…。

……自分の行いをレトリックして見せよう、何ら普遍且つ夙興夜寐しゅくこうやびのような敷衍さを滲ませた、否、しこうして自己をへつらせ、妄執もうしゅうに駆られるのが世の常さ…。

嘆き果てよう、昂然こうぜん放蕩無頼ほうとうぶらいな生き方をして、不踰矩のりをこえず不遜ふそんを完全に否定することに変わりはあるか、爾後じご型に囚われた事に穿鑿せんさくし、慷慨こうがい磊落闊達らいらくかったつに生を重んじる事に、私は何を見据えればいいのか……畢竟ひっきょう、其れがさっぱり、分からないんだ」


そう言うや、慟哭の上がる会場でアクセルを思いっきり握りしめた。


◆◆◆


イベント準備室の中の準備室C―――其れは彼女たちが見つけるに容易く、混乱に乗じて追手から行方を晦ます事は至極簡単であり、バイクはそのまま熱気から隔たれた、冷涼な地下に潜り込んで行く。

なまじな決意では此処まで来ることは無い。此れもまた、政府に依頼された…セカンド・ミッションとしての多銭善賈たせんぜんこな事は失敗に終わりつるが、陳奮翰ちんぷんかんな事は朦朧としたまま、バイクは駆けることを忘れない。


幾多もの在る準備室の中は使用された木材や仕切り、そして展示会で置くに足らなかったものが置かれている。バイクは狭い通路を疾走し、Cとだけ描かれた看板を見つけるや、其処の部屋の前でバイクを停めた。

中には段ボール箱が積まれており、奥に排気口がある。

しかしながら、その排気口も段ボール箱の山が邪魔になっているようだ。レイラはその現実を前に面倒そうな顔面を浮かべ、口を開いた。


「―――社長、段ボール箱を退けましょう」


「そうだな。面倒だ……」


そう言った時、段ボール箱の山が唐突として崩落し、中から人が出てきたのである。

その人物は排気口を通ってきたからなのか、顔や体を黒煤で包まれ、眼は炯々としている。

疲憊ひはい仕切っているのか、息切れで呼吸が引切り無しに行われており、目の前で佇んで存在していた2人の存在に気づくや、眉を潜めた。

簡潔に服に付着した煤を払い拭い、儼然きっとした眼付で彼女たちを睨み据えては、重々しい片言隻句へんげんせっくを口にしたのである。


「……何故此処にいる?」



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