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10章 追憶の軌跡

下水道で起きたとされる爆破事件は、ゼラディウス一帯に波紋が及んだ。

大型商業施設ことゼラディウスシティもまた、ゼラディウス二番街は断水の被害に見舞われ、近隣住民や観光客は避難を余儀なくされた。

咲夜との電話で、正午に居酒屋で会うよう言われた彼女たちはおおよそ2時間半余り暇であった。

人が避難し、ゼラディウス二番街は段々と静寂に包まれていく。車通りも消え、歩道には2人がポツンと残されてるような、そんなような感覚であった。


「……人があっという間にいなくなったな」


「マスコミの影響ですね。こういう時は役立ちますね……」


レイラはマスコミを皮肉って発言した。

上空ではヘリコプターが飛び交い、視聴率稼ぎの為の生中継が必死に行われている。

そのカメラには2人の歩く姿も映ったのか、ユウゲンマガンがスマホで見ていたテレビの生中継では歩道を呑気に歩いている姿が映し出されていた。

リポーターは必死に中継をし、ゼラディウス二番街の被害の状況を事細かく伝えていた。


「……マスコミは私たちの事を何か言ってるみたいだな。それもそうだ、こんな時にゼラディウス二番街を裕に歩いていたら絶好のカモだしな」


「取り敢えず、今は正午まで時間を潰しましょう」


レイラがそう提案した時、2人が歩いていた歩道の真後ろが陥没を始めたのである。

まるで渦に吸い込まれるように、歩道のレンガやコンクリートが飲みこまれていき、其処から水が湧きだすかのように噴き出たのである。

唐突の地の揺れと同時に湧き出た水に2人は腰を抜かし、一時的にその場から離れた。ユウゲンマガンは何とか冷静になれたが、レイラに関しては何が起きたのか混乱していた。


「なななな何があったんですか!?」


「下水道管の破裂だ。先程、私たちが爆破した際による二次災害だな」


しかし、彼女の予測を裏切るかのように、水が噴き出している場所から1匹のロボットが現れたのである。

其れは先程戦った蜘蛛型とはまた違う、2本の巨大な鋏はさみが付けられた、蟹型であった。

重々しい眼からはサーチライトで2人を焦点に当てて、下水で濡れた装甲を陽の光で乾かしながらも徐に2人へと迫っていく。


「―――追跡してきたのか。…やるぞ、レイラ」


「分かりました、社長。…一気に叩き潰しますよ!!」


◆◆◆


長い剣を抜刀し、一気に斬りにかかるユウゲンマガン。

何をも恐れぬ意思で、勇猛果敢にも斬りかかったのだ。其れは歩む閃光となりて、轟く雷鳴に如し勢いは蟹型ロボットに牙を剥いた。しかし、俊敏な動きによって剣戟は躱されてしまう。

避けた隙を狙ったレイラは拳銃を取り出しては狙撃を試みる。引き金を何度も引いては、目の前に存在するロボットに向かって。


だが、ロボットはそんなレイラに向かってホーミングミサイルを撃ち込もうとしたのである。

背中の装甲を展開し、一気に放たれた4本の小型ミサイルはそれぞれ弧を描きながら、一目散にレイラの方向へ向かって飛んでいったのだ。

レイラは其れに気が付いては焦りが生じるも、一旦現場を離れてミサイルから逃れる事に専念した。

その隙を狙い、ユウゲンマガンは剣の刃を突き立てては装甲を一気に突き破った。


「喰らえ!!」


剣は蟹型ロボットの背中の装甲の一部を綺麗に剥がし、中の機械が垣間見えた。

しかしロボットの動きには何にも影響を与えておらず、蟹型ロボットはカウンターとしてユウゲンマガンに向かって備え付けられた2丁のマシンガンで連射狙撃を試みたのである。

ここでホーミングミサイルから逃れていたレイラが彼女の元へやって来たのだ。


「社長、離れてください!」


レイラの声を汲み取り、一旦その場を離れた際、ホーミングミサイルに追いかけられていた彼女はマシンガンによる狙撃を避けながらもロボットの後ろへ回ったのだ。

ミサイルはそのままロボットへと着弾、爆発し背中の装甲が全て剥がれ落ち、中の機械部分が全て露呈したのである。

電撃が迸るようになり、段々動きが鈍くなっていくのが目に見えて良く分かった。


「……後は畳みかけるだけだ!」


そう言った時、レイラは至近距離にまで行き、一気に銃撃を試みた。

銃声が虚空の中に響き渡る中、蟹型ロボットの露呈された緻密機械部分を穿つべく、引き金を幾度も引いた。

銃弾は何発か緻密部分に着弾し、其れはロボットの行動回路を著しく阻害するものであった。

遂にロボットは行動判断回路制御不能に陥り、暴れ始めたのだ。備え付けられたありとあらゆる攻撃機械で2人を殲滅しようとしたのである。

オーバーヒートし、緻密機械部分では火も上がっていた。


「とうとう制御不能に陥ったらしい、早く決着を付けよう!」


「は、はい!!」


ユウゲンマガンはそう言うや、一気に決着を付けるべく、剣を構えては間近に迫ったのだ。

電流が常に漏れ、狂ったかのような動きを見せる蟹型ロボットを止めるべく、襲い掛かる銃弾や高圧電流を避けながらも一気に近づいた。

そして、蟹型ロボットの背中の上に乗っては、一気に剣を真下に刺したのであった。

其れは全てを破壊する、究極の一撃であった。


ロボットは剣を刺された事による障害で機械同士が噛みあわなくなり、遂に大爆発したのである。

其れはロボットが出てくる際に起きた、下水管破裂事故よりも凄まじいものであった。

すぐに彼女は離れ、何とか大暴発からは逃れられたものの、着用していたスーツ服は煤だらけになっていた。

爆発の際に生じた煙が消えた後、其処には電流が迸っていた機械の断片が幾つか落ちていた。


レイラはその断片の1つを拾うや、掌の中で其れを見据えた。

断片には先程戦ったヘミス・アードナーと同じ紋章が刻まれており、他にも事細かく記載されていた。

紋章を見た時、カルト教団こと秘密結社フィオムの執念さに何処となく呆れ、何処となく絶望した。


「―――追跡型対象殲滅用兵器、『オルフェヌス・アーク』。…なんかカッコいい名前ですね」


◆◆◆


オルフェヌス・アークとの戦闘はやはりテレビの中継にも映っていたらしく、ネットでは話題になっていた。

ユウゲンマガンがスマホで確認してみた時、やはり掲示板には関連のコメントが多くついていたのは既成事実である。

多くの人物が今回の下水管爆破事件もといミサイル基地爆破事件が戦闘していた2人の人物ではないか、と疑念を抱いていたのも事実である。


下水管破裂事件は間違いなく爆破事件の派生であり、其処からロボットが湧き出たのも政府のものだと仮定づけられていたのである。

ネットでは彼女たちの行いが如何に怪しく、どうして避難勧告が出されたゼラディウス二番街に悠々自適と存在してるのか、問題はそこであった。

ネットでの書き込みでは着実に疑いが深まっていったのは確かであり、彼女たちは何処か焦燥に駆られた。

かつてサニーミルクがいた時の、あの時のようであった。


「……ネットでは私たちのことで盛んになっているようだ。一旦逃げよう、中継のカメラから逃れるために」


「分かりました。一旦、裏路地に入りましょう」


そう言った時、2人は裏路地に入ってはマスコミの生中継を攪乱させた。

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