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愛と偽りの甘い関係  作者: 篠宮 梢
Aria
9/10

∮-7 叩きつけられた挑戦状

 大観衆を前に、夢の様な愛の告白を受けたのなら、恐らく大概の淑女やご令嬢方なら、嬉しさのあまり失神してしまうか、歓喜の涙で頬を濡らす事だろう。


 けれど。


 しっかりするのよ。

 騙されてはダメよ。

 彼を信じてはダメ。


 直前までの極度の緊張状態から、すぐにいつもの状態に立ち戻った私は、私の手の甲に口付けている男性の紅い瞳を見据え、意識的に口角を引きあげ、外見上は如何にも幸せそうに微笑んでいる様に見せた。


「私を本当に守って下さるのですか?この忌まわしい栗色の髪ごと、愛して下さるのですか?私と伯爵家を盛りたてて行って下さるのですか?」


 私に求婚するという事は、ベルクート家を継ぐという事。

 有事の際は、国をも裏切り、家を捨てるという事。

 

 でも、彼にはそんなつもりは微塵もないだろう。現に、彼の眼差しには私への恋情は欠片もないし、宿ってもいない。あるのは憎しみと歪んだ想いだけ。


 それを承知の上で、彼の求愛を受けるような言葉を口にしたのは、喧嘩を売られたからだけではない。


 幸福そうに微笑む私を、今にも呪い殺しそうなほど睨んでいるご令嬢、ジニエス侯爵令嬢。

 彼女は、今私の手の甲に口付けている彼が好きらしい。それならそれを利用してやるまで。


 家族をバカにされたままでは、私の気が済まない。


 仮面を外し、素顔を晒す。

 それは相手の求愛を受け入れた事を示す。


「どうか私をお守りくださいな。アレスシード・アーレイ・フォルド・ザスク=エスティエ様」


 私が彼に正式な礼をした瞬間、仮面舞踏会の会場は、大きなざわめきに包まれた。


 恋なんてしない、恋になんか落ちない、彼に騙されたりなんかしない。


 と、この時の私は、自分の心に誓っていた。なのに、私は後々彼に心を奪われてしまう事になる。でも、その時はそんな未来を予想だにしていなかった。

   

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