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愛と偽りの甘い関係  作者: 篠宮 梢
Aria
7/10

∮-5:麗しの貴公子②

いよいよご対~面。

 ――彼は正にこの場の支配者だった。



 ぼんやりと、どれだけそうしていただろうか。

 あの鮮やかな紅い瞳の持ち主である男性は、既に多くの人に囲まれていた。

 彼のすごい処は、性別を問わずに好かれている所。


 彼が本気で今の王家に対し、挙兵を企めば、王家は呆気なく倒れる事だろう。


「キャシー、貴女どうしたの?そんな顔して。」


「ユリア姉様・・・。そんな顔ってどんな顔ですか・・・。」


「うーん、恋敵に逢った様な、好敵手に逢った様な、とにかく運命の人に巡り合ったような顔ね。」


 運命・・・。


 そう、その言葉が何故かしっくりとくる。


 でも、これは多分悔しさが混じっているから、恋情ではないと思う。

 恋に現をぬかしているほど、今の私は悠長ではいられない。

 

 いくらユリア姉様が帰ってきたとはいえ、未だ姉様は公式愛妾の身分のまま。

 ならば私の務めは、文句のつけようのない婿を探し出す事。

 

 気を取り直して、羽根で出来た扇を広げ、口許をそっと覆い隠す。


 出るのは、溜息ばかりだ。


 脂粉の匂いと、葉巻、酒の匂いが混じった、何とも云い様のない胸が爛れる匂い。

 

 ケホケホと、咳が出てしまうのは仕方がないので許して貰おう。

 私がそうして咳き込んでいると、背中を誰かが擦ってくれていた。

 きっと、ユリア姉様だろうと、私は仮面を外した。


「ありがとう、ユリア姉様・・・って、あの・・・?」


「大丈夫ですか?あぁ、貴女の姉上でしたら、ほら、あちらに。」


 促され、そちらを見れば、姉様はご友人と楽しそうに談笑していた。


 姉様ッ・・・。

 なんてこと。


 私は激しい羞恥心から、しどろもどろに、背中を擦ってくれた人にお礼を言った。


「ありがとうございました。てっきり姉だとばかり・・・。」


「いえ、当然の事をしたまでです。」


 その優しげな声に惹かれ、顔をあげてみれば、あの印象的な紅い瞳と巡り合った。

 でもその瞳は、嘲りと孤独の色に染まり、凍てついた凍土を思わせる色をしていた。


 それを認識した途端、身体がぶるぶると恐怖で体が震えた。


 彼は人を信用していない・・・。


「--初めまして、アレスシードと申します。キャロルライン嬢。」


 アレスシード。


 その名は、この社交界において、覇王とも字されている、エスティエ公爵家の二男・麗しの貴公子の名でもあった。



 にっこりと微笑み掛けられた私は、何故か言いようのない恐怖と何かに飲み込まれないように、必死に耐えていた。

 


はい。無事にご対面。


 続きはいつになる事やら・・・。

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