∮-4:麗しの貴公子①
1週間ぶり~♪
ダインセルン聖王国の社交界は、常に一人の青年の事で話が盛り上がる。
「今日も素敵ねぇ~。アーレイ様。」
「彼もそろそろお年頃でしょ?私、立候補しちゃおうかしら。」
「あら、なら私だって。」
ひそひそ、くすくすと囁き合い、笑いあいながらも、牽制しあうのは、いずれも夫がいる身の貴族のご婦人たち。
彼女達は果たして自分達の姿を、鏡で見た事があるのだろうか。
欲望にギラついた淀んだ瞳に、毒々しいほど紅く塗った口紅。
そして、無理やりに作り出した醜いウェストライン。
「キャシー、その顔何とかならないの?」」
「だって、ユリア姉様、つまらないんですもの」
「キャシーは子供ねえ~」
ふふふと、仮面の裏で笑う姉は、何を考えているか分からない。
今日は、とある伯爵家の主催している仮面パーティーに、お姉様と二人で来ている。
仮面パーティーの目的は、身分を忘れ、出会いを楽しむこと。
でも仮面をしていても、正体は丸わかり。
現にあそこで囲まれているのは、某子爵家の子息だし、あちらはつい先日婚約を発表した男爵。
そして・・・
あれっ?
あの人って誰だろう。
一際目立っている、あの人は誰?
「どうしたのキャシー?気になる人でもいた?」
ユリア姉様は冗談か、私をからかうつもりで聞いたんだろう。
だけど私は素直に頷いた。
上等な金糸の様な髪に、遠目からでもわかる炎のような瞳。
目が何故か離れなかった。
この時の私は、確かにあの人に見惚れていた。
毎度短くて、申し訳ありません。