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スキル最弱魔王は、愛の力で戦況を一気に覆す  作者: あざらし かえで


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10.長い戦いの始まり

 エールネスが三隊のうち二隊のせん滅及び戦闘不能を宣言する。

 ゼルキオスも頷き、残る一隊の様子を見ながら顔をしかめた。


「あれは……冥魔連合だな」

「はい。下の実力のものとはいえ、冥魔連合は一番手練れも多く侮れません。グラードの突撃に少しずつ対応してきている様子。ゼルキオス様、少々お傍を離れてもよろしいでしょうか?」

「構わない。この程度の敵ならば、撃退できずとも身を隠す程度はできる」

「すぐに戻ります。行ってまいります」


 ゼルキオスが頷くと、エールネスは一礼して影に姿を溶け込ませて消えた。

 ヴァンパイアは様々な手段を用いて移動できるが、これもその一つだ。

 ゼルキオスが映像に目を移すと、エールネスは森の中に急に姿を現して迷わず一直線に進んでいく。


「なっ……お前は……エールネス」

「お久しぶりですね、義兄さん」

「貴様……この一族の恥さらしめ! あの魔王のできそこないのために一族を裏切るなどと……うぐっ」


 相手が言い終わらないうちに、エールネスはいくつもの投げナイフを投げながら瞬時に距離を詰めて相手の喉元にナイフを突きつけていた。

 周りにいた者たちも、あまりの素早さに対応が追いついていない。


「私は己の信念で動くのみ。それが、前魔王様の命令です」

「今の魔王は、ただのできそこないではないか!」

「あなたには分かりません。親族の言いなりになるだけの操り人形には。主は自身で選ぶだけのこと。どのみちあなたはただの偵察係にすぎない。さっさと兵をひきなさい」

「この刃は……ヴァンパイアキラーか! おのれぇぇ!」


 ヴァンパイアキラーは、不死であるヴァンパイアの命も奪える武器の一つだ。

 エールネスが前魔王から預かった武器であり、この武器の存在はゼルキオスも知っているものだ。


 義理の兄だと言われたヴァンパイアは、苦々し気な表情を浮かべたまま兵の撤退を宣言する。

 すると、みな揃って兵をひいて撤退を始めた。


 +++


「エールネスが少し脅しただけで、敵が瓦解するとはな」

「……すみません。遅れました」


 エールネスは一仕事終えて、再びゼルキオスの隣へ戻っていた。

 ゼルキオスは視線を向けてから、頷く。


「ひとまずは追い払えたようだな」

「はい。ですが、結界の修復が終わるまでは油断はできません」

「ああ」


 映像で確認すると、三隊は一斉に撤退を始めていた。

 ゼルキオスは口元に笑みを浮かべて頷いてみせた。


「ゼルキオス様、この度は防衛での勝利おめでとうございます」

「ああ。お前のおかげで俺は何もせずに無事終えることができた」


 ゼルキオスのローズピンクの瞳は、これからの戦いについて思いを馳せているようにも見える。

 魔王ゼルキオスの戦いは……まだ始まったばかりだ。

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