8話 無理難題
8話
無理難題
アカツキがガーディアに迫る。驚異的な移動速度だ。というより、さっきから途切れ途切れの動きで前に進んでいる。まるで細かな瞬間移動。いや、これももしかして能力?
「“十中八九そうだろうね。あとで詳細を聞くといいよ”」
“だね……”
ピョンピョン細かな動きでガーディアを撹乱しながら上手いこと後ろを取るアカツキ。そのままの流れで頭部に蹴りを狙うが素の身体能力で優れているガーディアが簡単にそれを回避する。
「へっ、お前もリンカもトロイ。そんな程度の時間操作じゃあハンデにもならねぇ!」
なるほど、アカツキの能力は短時間ながら時間を操れるのか……。そんなことより、助太刀しないとアカツキがやられる!
本能的に身体が動く。まずは床に伏せるリンカの救出だ。ルザの力をある程度加減しながら引き出すイメージで身体に力を入れ、リンカの元まで一飛びし、見事抱えることに成功。クレアラの近くまで運ぶことに成功した。
「サンキューマーク。んじゃあ気兼ねなく!」
アカツキは片方の指を色々な角度に曲げ、その都度時間操作をした。何の意味がある指の動きかは知らないけど、とりあえず手を貸さなければ。
殴られても蹴られても、斬られても痛手にならない俺は突進するようにガーディアに迫る。自爆覚悟だが自爆しないのが今俺ができる最高のパフォーマンスだろう。ひとまずアカツキがガーディアから距離を置いたタイミングで軽く作戦を決めたい。
アカツキやリンカのような能力者みたいに奇抜な動きを生み出せないけれど、工夫はできる!
何度か見たアカツキの時間操作の制限時間は約1秒。今はそれしかわからない。可能ならば時間操作のより詳細な情報が欲しい。
2人の距離が開いた瞬間、すぐさまアカツキの元へ駆け寄る。
「アカツキ。君の『時間操作』は具体的に何ができるの……?」
「んっ。あーっと、時間を止める・切り取る・加速させる・戻すの4種だ」
頭をフル回転させて、作戦を考える。こんな時、イメージするのは親友のダンザ。彼は少し変わった奴だったけど、天才だった。勉強も運動も、なんでも少しやっただけでできたし、同級生の仲裁とかもダンザが入れば一瞬で終わる。
ダンザになりきって……振り絞るんだ。いい作戦を……!
「アカツキ、俺の時間を1秒、指示した瞬間に切り取って欲しい!」
「……ぉぉおう!」
「あと、さっきから片手で変な動きしてるけどアレ何?」
「えーっと、印を結んでます」
「それって能力の強化とかに……」
「ぃいーや、ならないよっ? カッコいいから」
何度も思うけど、アカツキってそういうところあるよな。
「とりあえずお願い」
「おーけー」
ガーディアがゆっくりとこちらに来る。てか早く授業開始時間になって教官に止めてほしいものだ。
………今から行う作戦は完全な不意打ち。正面から自分よりも遥かに優れるガーディアの不意を取る。
勝てるのか……。そもそも無事に作戦を遂行できるのか。不安が頭を支配しそうになる。
だが、そんな時は……。
いっそ人任せに考えることにする。自分で全て考えて全て終わらせられるほど、俺は優れちゃいない。だから、あえて最後まで考えずに人の手も借りること前提に動く。
無言で俺は動き出した。ルザの指摘通り、ちょっと急に動き出した程度じゃガーディアの脅威にはならない。だから油断して、今もなおゆっくりと歩いている。
「………今っ!」
俺は瞬時にそれを見切ってアカツキに指示を出す。それを目で追ったアカツキが俺の指示通りに……。
「『断』……、」
俺の時間を約1秒分、切り取った。
凄い能力だなぁ。気づけば目の前にガーディアの後頭部が見える。ガーディアは後ろの俺が見えず、俺自身は身体の大きなガーディアの後ろに隠れて周りの人から見えない。
そう、この作戦には、戦いをどうにかする以外にもうひとつ、別の理由が絡んでいる。それが、ルザの力を引き出した際に変化する見た目を周囲の人にわからなくすること。この1週間、ルザの力を引き出すにあたっての色々な事を検証した。それでわかったのは、見た目の大きな変化。体表に赤黒いオーラのようなものが湧き上がり、目は赤く染まる。この変化を人前で見せるのは、リスクの方が大きいだろう。
“そうなんだよね?”
「“言わないほうが君のためになると思うよ?”」
力の差は大きい。それこそ赤子と大人並みに、ルザの力を引き出そうとも俺とガーディアの間には力の差があるのだろう。だが、後ろから頭にしがみつかれれば早々振り解けない!
「がっ、クソッ。いつの間に後ろに……」
「アカツキ魔術! 俺ごと吹っ飛ばせるやつ!」
が、しかし。ここで大誤算を知る。
「俺魔術使えなーいっ」
「………はぁぁッ‼︎」
マジでかアカツキ! それじゃあこの作戦、完全な不発に終わる……。
目を瞑った。もう体感だとあと一秒足らずで振り解かれ投げ飛ばされる。殺される……!
「“正確には再生するから致命傷受けて復活って感じかな?”」
だが、ここでまたしても誤算。ただ今度は、いい意味での誤算が生じる。やや斜めの位置から、倒されダメージを負っていたはずのリンカがこちらに魔術を構えている。突風で髪がなびいている、風を操る魔術か?
「たくっ。ホンット世話が焼けるなぁ、馬鹿アカツキ!」
「アイツ、復帰しやがったのか⁉︎」
ガーディアが驚くのも無理はない。しばらく倒れ込んでいるくらいのダメージがリンカには入っていたはずだが……。そうか、アカツキが鼓動1回分、リンカの時間を瞬時に戻していたのか。
放たれる風魔術。空気砲の巨大版なのか、よく切れる風を飛ばしたのかはわからないけど、どっち道俺は食らっても大丈夫だ。
ガーディアの動きが止まった。いや、やや焦っていて動きが支離滅裂になっている印象だ
勝てる……! 倒せる……!
「その辺にしておけよお前ら……」
突如風が止まる。いや、何者かの何かで風魔術が散ったのだ。
「ちぃ。トリティヤ教官……」
トリティヤと呼ばれる、おそらくこれから剣術訓練の教官を務めるのであろう男がリンカの放った魔術を一太刀で相殺したのだ。
俺はすぐにガーディアから手を離し、少し距離を置く。
だが、この状況ならガーディアもこちらに攻撃してはこないだろう。
「………派手に暴れたな、お前ら。まぁ訳は大体想像がつくが、、」
ガーディアの方を静かに見つめるトリティヤ教官。この人が剣術の教官か……。
全てを見透かしてくるような据わった瞳。なるべく睨まれないように今後の訓練に励もう。
そう心に誓った矢先、トリティア教官が俺の方へ近づいてくる。眼光はそのままだ……。
「お前は新入りだったな。俺はここで剣術の教官をやっているトリティヤ・タナビシャスだ。今回の件に関しては、どうせガーディアに半ば巻き込まれた形での戦闘故大目に見るとして、問題はガーディア。お前は次こういうのやったら即刻牢獄行きだ。いいな?」
「………」
ガーディアは黙ってその場をやり過ごした。
「リンカちゃーーーん! 大丈夫? 怪我は」
「うっせー近寄るな!」
なんかいつも通りの流れを二人は行っている。辺りの収集と、二人を見ている俺に、クレアラが近寄ってくる。
「大丈夫だった? マークくん」
「あ、うん。平気だよ。かなり怖かったけど。それよりさっきの人に結構言われてたけど、クレアラの方は大丈夫?」
クレアラを見ていると、本当にシスティアラを思い出す。だから無意識のうちに過保護になってしまう。心配してしまう……。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとね」
大丈夫か。よかった。
「ごめんアカツキ! 偉そうに命令しちゃった。君が魔術あんまり得意じゃないって聞いてたのに、それを考慮に入れてなかった。指図したくせに……」
「あ、まぁいいけどな。おん、次から気をつけ……」
なんかお叱りをアカツキから受けそうになった途端、それをリンカが反射でぶん殴って止めた。
「アイツの言葉は聞かなくていいから。それより、スゲーって思った。あのクソゴリラ相手に、上手く立ち回ってた」
「………凄いのはリンカの方だよ。リンカの先を見たような動きがあったから、ここまで上手く運べた。ありがとう」
「…………」
俺からの感謝の言葉を聞いたのち、リンカは何か言うでも反応するでもなく、その場を去って行った。それにしても…………。
起き上がるアカツキ。そして後退りするリンカの後ろ姿を見て俺は思う。
“どうして二人とも、あの時手を抜いたんだろう”
「“案外君みたいな理由だったりしてねぇ”」
身体がビクついた。もしそうだとしたら、異世界の仲間として、変な亀裂とか、入らないだろうか。
“今のルザのささやきは、堕天使というより悪魔のささやきだね”
拙すぎる文章ですが、物語を描くのがとても楽しいです! 今回の話が、マルチファリキュア編の掴みが大体できた……? と思います。ここからは主人公をどんな感じで強くしていくかです……。上手く書けるよう、更に気を引き締めて行きます!
次回の更新予定日は2025/11/11 火曜日です。
少しでも読んでいただきありがとうございました!




