7話 暴君降臨
7話
暴君降臨
今日、最初の授業は剣術。剣を握ると、初日にバラバラにされたことを思い出す。剣は一人ひとりに配布されるらしいが、俺とクレアラは今日の授業最初に教官より配布されるらしい。
「それがアカツキの剣?」
ロッカーで服を着替えている。普段は施設が用意した制服のようなものを着ているが、運動系の授業の時のみ運動着に着替える。当然これも配布され、他の人も同じものを着用している。
「うん。名前は雷切。なんか名前がカッコいいから選んだんだけどさー、これは魔剣の一種で、雷属性の魔術を最大威力以上に纏って戦えるって代物らしいけど、俺はあんまり魔術使わないから失敗なんだよなぁ……」
なんか、アカツキってそう言うところあるな。俺は手で持たせて欲しいという意を表すると、アカツキが悟って俺に剣を持たせてくれた。やはり重い。けど、ルザの力を引き出せばむしろ軽すぎるくらいまである。
「“アハハッ、当たり前じゃん。その剣は魔剣だよ? 魔剣は剣の至る所に魔術を発動させるための『桂字』が刻まれている。で、そこに魔力を注ぐことでその剣特有の力を発揮する訳だけど、発揮させなければただの木剣もいいところだ。因みに魔力を注げばその量に応じて剣も重くなるよ?”」
やっぱりそうか。ある程度の重さがなければ硬い魔族とかを切れないもんな。
「ありがとう。確かに名前と見た目は凄くカッコいいね」
「でしょ〜。まぁ魔力を注がなければ練習用の木剣としても扱っていいって教官に言われてるからそれはそれでいいんだけどさ」
“ルザの言う通りだね”
「“嘘は言わないよ? ボク”」
施設の長い廊下をしばらく歩くと、剣術の訓練場に到着した。来る方向が違うからか、他の部屋の子供たちは既に到着している。更衣室の位置は当然男女で違うためクレアラともリンカも俺たちと来るタイミングが異なる。今回は先に来ていたようだ。で、気になったのはクレアラに迫るガタイのいい男。そして、それを制するリンカだ。
「新入りかぁ姉ちゃん。名前は?」
「え、えっと……クレアラです」
「可愛い名前じゃねぇ〜かぁ。教官に2人で掛け合って部屋を一緒にしようぜ〜。当然良い気持ちにさせるからさぁ」
「やめろよクソゴリラ! 嫌がってんだろ」
リンカは凄いな。体格差がアレだけある男子にも怯まず突っかかってる。しかもクソゴリラって……。
「テメェみたいな無愛想女には言ってねぇーよ、失せろ」
粗暴な口調に悪人ヅラ。体格も大きい。ここに居るということは何らかの事情があったのだろうが、にしても態度が大きい。
止めに入らないと……。そう思って動こうとすると、真っ先に動いたのはアカツキだった。
「その辺にしとけよガーディア」
「ぁあ! アカツキ、テメェ誰に口きいてんだぁ? 雑魚の分際でー、俺様に指図してんじゃねぇーぞ‼︎」
凄い殺気だ。でも、迷いなく前に出て、今でもこうしてあの強そうな男の前で顔色ひとつ変えずに立っている。アカツキの実力はよくわからないが、もしかしたらとんでもない逸材なのかもしれない。きっとこの場面もなんとか……。
「オメェーの出番だぞ。マーク」
えっ⁉︎
「ダッサッ……」
アカツキから訳の分からない提案と、リンカから物凄い落胆の一声が聞こえる。
「でもアカツキ」
「男は男らしい生き方をしろ」
「…………」
「やれ」
悪魔だ。
「ん? テメェも見たことない顔だなぁ。新入りか?」
アカツキめ、俺にガーディアって男の視線を向けさせるないでよ……。
「はい。マーカライル・シラヴィスです。よろし……」
ズシュッと何かが弾け飛んだ。だが、それが何か知るのに時間がかかった。それだけの手際。この一瞬の間に、俺はガーディアに片腕を斬り落とされていた。
「がっ、ガーディアさん⁉︎ 流石にそれは」
取り巻きの一人と思われる者が声を少し荒げる。が、そんな切羽詰まった雰囲気などお構いなしに俺の落ちた腕をニヤニヤしながら見る。
「大きな怪我は治癒魔術で教官どもがどうにかすんだろ? 今更何を慌てていやがる。それにしても……お前弱いな。っ!」
「ガーディアさんでしたっけ? 俺は能力で再生するから、今のは大したことにはなりません。でも、クレアラにしようとしていることは、絶対ダメですよ」
事を荒立てないよう、ガーディアを刺激しないよう、伝えたい事を最小限の落差で伝えたが、ガーディアの心は既に俺が気にする所にはないようで……。
「ほー。再生すんのか……。気持ちの悪い『能力』だなぁ」
するとガーディアの後ろからリンカが蹴りを入れようと突っ込む。
「気持ちわりーのはテメェーだぁ!」
蹴りがガーディアの頭部に直撃。そう思われたが、リンカの足がガーディアの頭部をすり抜けていく。結果、空振りに終わる。
「そーら、どこ狙ってやがるクソ女!」
「ちっ……」
空振りで体勢が不十分な状態のリンカに、ガーディアが容赦のない拳を一発振るったが、リンカも驚異的な反射神経でその攻撃をギリギリ受け止め、ダメージを最小限にする。
受け止めたとはいえ、攻撃の威力を食らったのはリンカの方。しかし、何故かガーディアも拳の威力と同等の力に押されたように体勢を崩される。
「“なるほどね。もしかしたらとは思ってたけど、リンカって子。能力をもってるみたいだ”」
“能力? さっきガーディアもそんなこと俺に言ってたけど……”
「“能力とは、純粋な身体能力や魔術ではない第3の力。限られた者しか扱いない特別な力のことさ。おそらくリンカちゃんは、相手から受けた攻撃威力を反射する能力だね。ただ、発動条件として自分も相手の攻撃威力を貰わないといけないから、肉弾戦における究極の相打ち能力ってところかな……”」
反射により、ガーディアは自らの拳の威力で後ろに、リンカはガーディアの拳に押されて後ろに下がる。
どうやらガーディアは普段はあまり剣を使わないらしい。俺相手に試し切りみたく剣は使ったが、今は床に落として手放している。
「ちっ。相変わらず面倒くせー能力だなぁ」
リンカの今の発言から、ガーディアも先程の攻防でなんらかの能力を使用したことがわかった。
「ハッ。そりゃこっちの台詞だぞリンカ。攻撃した側の俺様までダメージを受けなきゃいけねぇーんだからなぁ……。だがっ、」
ガーディアは屈強な身体の持ち主としては到底行わそうな行動に出る。空中に文字のようなものを書く動作を一瞬のうちに済ませると、間もなく掌よりやや大きいサイズの火の玉が出現した。
これが魔術か。
「“そう。で、さっき空中に文字みたいなのを書いた動作こそが『桂字の記入』だよ”」
にしてもあの体格で魔術を扱うとは、いささか拍子抜けじゃないか? って思ったけどそうじゃない。ガーディアも頭を使って戦っているんだ。
「テメェの反射は近接相手には最悪相打ちを狙えるっつう面倒な能力だが、遠距離主体の魔術にはその効力は半減する。何せ魔術をそのままの威力で返したとしても、返した先に俺様が居なきゃお前はただダメージを食らったノロマってだけなんだからよぉ!」
「そりゃあどうだろうなぁ!」
一瞬のうちにリンカも桂字を書いた。すると出現したのは火ではなく水の球体。大きさはガーディアが出現させた火の玉と同等だ。
そして2人が同時に各々の魔術を相手目掛けて発射する。
「っ……! くそっ、」
突如リンカが後ろに下がる。と同時に、2人の術がぶつかり合ってサウナみたいに大量の蒸気が辺りを覆った。
「流石の反射神経だなぁリンカ! だがこの状態じゃあテメェの反応速度でも遅れるだろぉー?」
確かにリンカの反応速度は常軌を逸している。昨日の体術訓練の際、組み手をしてわかったが、アレは先が見えていると言っても騙されるレベルだった。今の危機察知も凄い。蒸気が発生する前に後ろに下がっていた。それに、キレているが完全に頭に血が上っている訳じゃない。ちゃんと手加減もしているのが一目でわかる。
「因みに今の術は火と水の混合魔術だ。こっちが火を使おうとすれば、テメェは水で対抗してくると踏んで考えたんだ。テメェの水とぶつかる事で初めて完成する術をなぁ……」
それがこの蒸気か。リンカのとんでもない危機察知能力も、視界が狭まれば意味は半減するし、パワーとスピードで格上のガーディアには勝てない。完全に相手の長所を潰し、自分の長所を活かせるように立ち回った。ガーディアの勝ちだ……。
魔術の撃ち合いの音がしばらく響き、そしてリンカは上から不意に撃たれたガーディアの火球によって床に伏せた。
おいおい、こんな奴が居るのか? シャレにならないぞ全く……。
床に倒れるリンカを尻目にニヤニヤするガーディアの顔が目に染みつく。次は俺と言わんばかりの表情だ。てか、俺そんなに気に食わないこと言ったか? とりあえずここは連携だ。やったことなんて当然ないけど、アカツキの力を借りてアイツを……。
「アカツキ、2人で……」
俺は確かに声を出してアカツキに提案した。いや、提案しようとした。けどそれは空振りに終わる。何故なら俺の考えよりも一歩先に、アカツキがリンカを助けるべく飛び出したからだ。
「俺の出番だぞ……俺!」
戦いが、いよいよ話の中に組み込まれてからました……。まだまだ書き慣れない故、下手ですが、少しでも読んでいただければ嬉しいです。
次回の更新予定日は、2025/11/08 土曜日です。
読んでいただきありがとうございました!




