表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永追の異世界線戦  作者: 社会の歯車
第0章 異世界転移編
4/12

4話 初戦敗北

すこしでも読んでいただけたら幸いです!

             4話


            初戦敗北


 かなり長いこと、ルザと精神の中で会話した気がする。まぁ事実、決して短い会話ではなかった。そのおかげか軽く走りながらでもルザとの会話が成り立つ。

 しばらく走ったところでルザが案内以外のことを口にした。


 「“そういえば、なんでボクの力を使わないんだい?”」

 “……え?”

 「“いやほら、ボクは堕天使なんだし、鍛えていない人間より素量は遥かに上だよ? だからその力で移動した方が十倍は効率がいいと思うんだ”」

 “使うって言っても……どうやって?”

 「“ただ身体を力ませる様に。されどまだどこか慣れないことをする様なイメージで、胸の内から、身体の底から力を引っ張り出すんだ。あー因みに、ありきたりな物語みたく引っ張ってきた力が大き過ぎて身体が初期はぶっ壊れるとかって事にはならないから存分に引っ張り出しなよ。慣れれば扱えるボクの素量も勝手に増えるしねっ。さぁー、存分に引っ張り出しな! まぁ、あんまり引っ張られるとボクが疲れちゃうんだけど……”」


 早速やってみよう。身体を力ませる……。けどそれだけじゃなく、慣れない事をするように。まだやったことのない事をするように。

 

 「これか!」


 感動を覚えた。走りながら精神の中でルザと会話する感覚も考えてみれば今までにない感覚。それと似た様な感じで体に力がこもる。そして1歩、俺は力強く踏み込むと……。


 ドッと低い音が足元から聞こえた。が、その音はすぐに足元から消える。瞬間的に俺は悟った。今の1歩で、俺は音を追い越したのだと。


 「“あーーやっちゃったか”」


 精神の中から、そんなルザの気の抜けた声が聞こえたと同時に、俺は急いで足を地面に押しつけて動きを止める。


 「くっ……!」


 幸いたった1歩の動作だったので動きはすぐに止まった。でも……。

 後ろを振り返ると、俺が1歩の中で移動した直線距離200メートルほどに生えていた木々は爆散。砂煙が天高く舞い上がって人が近くにいたら大惨事になる事間違いなしの状況となった。


 「な、なんだこりゃ……」


 「“君、堕天使の力を引き出す素質があるかもね! 初動でまさか君本来の100倍程度の身体能力をボクから引っ張り出せるとは思わなかったよ。精々5倍とかかなぁってね。ナハハッ、上手くいかないもんだね”」


 “笑い事じゃないよルザ。もし周りに人が居たら、大変なことになっていたんだよ?”

 「“反省してまーす”」


うわ出たっ。


 “でも100倍って凄いよね! これならすぐにでも悪魔を倒して、悪魔の総大将をコテンパンに……”

 「“また自殺するつもりなのかいマークは。言っておくけど今の君の力はこの世界の剣士と闘士の並か少し上くらいだからね?”」

 “え? そうなの?”

 「“うん。安全策を取ろうとかそう言うんじゃなくて、本当にその程度だよ。まぁ、勇者の募集が出てる街に行って実技試験を受け、勇者になればいい。中の上くらいの強さではあるからすぐに勇者にはなれると思う!”」

 “まぁなれるのならいいけどさ……”

 「“じゃあ早速行動だ! 引き続きボクが案内するからマークは移動を。並の勇者程度と言ってもここは少し変わった森だ。後で色々説明するけど、とりあえず今度は力を上手くコントロールしてね?”」

 “はいよ……”


 少なくとも俺が元いた世界じゃ、俺は結構器用だった……気がする。だからそんなあやふやな自信を盾に頑張ってみるしかない。

 イメージ。さっき引っ張り出した力を少し抑える。だいたい十分の一くらいがいいかな。


 「………ほぉ!」


 自らの身体能力に、ルザから取れる力をほんの少し乗せる。すると物凄い速さで移動することに成功した。無論今度は周りの木々を破壊したりしていない、安全な速さでだ。


 「“おおー上手上手〜。じゃあ軽くこの世界について説明するね。まぁ案内しながらの説明だからこの世界について全てを網羅した内容ではないと思うけど、そこは勘弁。あー、そこの分かれ道左ね。では! 説明していきます‼︎”」


 俺は走りながらルザの説明を受けた。まず驚いたのはこの世界の人たちの強さだ。

 この世界にはやはりと言っていいのかわからないけど、『魔力』という概念があるそうで、その魔力は、この世界に生まれた瞬間から無自覚に人間の体内に溜まり続ける。生まれた瞬間からだいたい20歳までに、1人の人間が体内に溜め込める魔力の総量が決まり、35歳程度から落ち始める。いわば生まれつき体力に自信のある子とない子みたいなものだ。そして、魔力という概念があるおかげでこの世界の人たちの強さは、俺がいた世界の人たちとは比べ物にならないほど高いらしい。なんでも魔力は文字通りの魔法。魔術を使うためだけの力ではなく、シンプルに筋力を高める効果もあるようだ。ここで俺の疑問、「それじゃあこの世界の人たちは、さっき俺がしたみたいに本気で走ったら建物やらを崩壊させちゃうの?」とルザに聞くと、なにも魔力を溜め込むのは生物だけではなく建物の素材となる石や木材もそれに該当するんだとか。だから相当なショックを与えない限りは誰かの行動で間接的に建物が壊れることはないらしい。因みにさっき俺が壊した木々は、たまたまこの森に存在する木々が魔力を多く溜め込まない種類のものだからだそうだ。

 次に勇者の種類。大きく分けて勇者は3種類いて、剣士・闘士・賢者となる。剣士は文字通り剣を使う。

 補足説明: かつてとある堕天使と短時間とはいえまともにやり合った剣士の剣筋は光をも切り裂き、その剣士の体表からは神の気配そのもののような霧が出ていたそうだ。


 闘士は己の身体で戦う、殴ったり蹴ったりする人たちだ。剣士よりもシンプルな動きが多く、多くの人間が鍛錬を積めば一定水準まで強くなれる。しかし、剣士よりも相手に近づくため死亡リスクも高い。

 補足説明: かつて魔王と得位魔族3体を相手にし、見事勝利を収めた闘士は、触れるだけで対峙する相手を動けなくさせされたほど、シンプルな体術に秀でていたらしい。


 最後に賢者。賢者は言い方を変えると魔術師だ。その名の通り魔法を使って戦う。賢者だけは先に述べた剣士、闘士とは違ってほとんど遠距離専門かつ、2つよりも頭を使うことが多い。

 その要因は戦い方にある。賢者が魔術を使うためには『桂字』という、魔術の柱となる文字のようなものを空中に指で記さなければならないのだが、それが1つ1つの術ごとに異なるため暗記する必要がある。それに大火力だけではなく回復魔術をこまめに味方に使ったり、攻撃も味方の剣士や闘士の邪魔にならない様配慮したりながら戦わねばならないため賢者自体の人数が少ないらしい。

 補足説明: かつて5万人の勇者がとある強大な力を持った魔王と戦い、短期間で命を奪われる、あるいは大きい小さいに差はあったが怪我を負った。しかし、1人の賢者が一瞬のうちに死傷した5万人を全回させた後、1人で大火力を放ち、一帯を消し炭にしつつ魔王を討伐したらしい。


 最後にコネクションについて聞いた。この世界にもコネという概念はやはりあるらしく、多くの金を注ぎ込んだのち、勇者養成のための学校を卒業して勇者になった者は、早い段階で高い役職に就けるらしい。まぁ、俺は復讐目的で勇者になるので地位なんてどうでもいい。


 しばらく走って街に出た。そこの街はラウラという街で、非常に栄えているのが一目でわかる。ルザに言われるがままに街にある出店を回ると、4軒目の出店の壁にチラシが貼ってあった。それに目をやると、『勇者募集』と大きく書かれていて、興味のある方はとの文言の後に詳しい集合場所と集合日時が記載されていた。


 「あった……!」


 「“この世界じゃ、かなりの頻度で勇者の募集をかけるんだ。だからちょっと栄えてる街に行けば必ず勇者への第一歩を踏めるかなぁって思ってたよ。まぁそれだけ、悪魔をはじめ、魔族とかとの戦いが残酷なものだって意味でもあるんだけどね〜”」


 残酷……。脳裏に浮かぶのは自分の大切な人たちが命を落として目の前に肉片として倒れている光景。俺はまだ、ルザの力を借りてすぐにでも復讐できるからいいものの、その権利がなくただただ大切な人を失った人たちは嘆くことしかできないのだろう。

 

 ……やっぱり絶滅させないと。

 

 歩いて元来た道を戻る。宿を借りようにも残念ながら今の俺は一文なし。勇者募集のチラシに書いてあった集合日時は2日後の正午。ルザからは「森の中にいる生き物でも殺して食べなよ」って言われた。でも仕方ない。何かを盗むわけにもいかないし……。というわけで、俺はトボトボ森に入って行った。


 「は、離して‼︎」


 森に入って早々、ここより僅かに深い森の方から女の子の声が聞こえてきた。その声は切羽詰まったものに感じられる。身体中の危険信号が灯った。


 助けなきゃ……‼︎


 そう思い立って声のする方へ駆け出す。もちろん加減した速さだ。何があったかは知らないけど、もし本気の速さでさっきの女の子を巻き込んだらマズイ。


 「“放っておきなよ。今の君にはなんのメリットもないだろう? ハズレくじを引くようなものだ”」

 「やっぱりルザは……天使じゃなくて堕天使ってわけだっ、」


 見つけた、やや暗がりだけど人数と助けるべき女の子の位置は把握できた!

男3人が1人の女の子に目隠しをして何やらしようとしている。何をしようとしているのかはまだわからない。けど、ロクでもないことなのはわかる。

 今の俺の強さはルザいわく中の上。男3人を相手に勝てる確証はない。だから女の子を救出することに目標の重きを置く。そのために俺がまずすべきことは……。

 俺は自分の量の手の指を絡めて握りこみ、バッドをスイングする様に、手加減なしの一撃をもってして爆風を生み、それで4人の周りの木々をなぎ倒した。土煙と爆音が巻き上がる。女の子には少し怖い思いをさせちゃうけど、怪我をする前に俺が女の子を空中で捕まえられれば問題ない。

 木々を強引に倒すアクションを起こしたのは、単に男たちの視覚を少しでも封じるのが狙いだ。


 「逃げるよ!」


 男たちが動き出す前に女の子を自分の方へ抱き込むことに成功した。あとは走って街を目指す。拉致やら強姦やらの類いなら人気の多い所に出れば追っては来ないはずだ。

 抱き抱えて更にわかる。女の子は小刻みに震えて怯えていた。背丈は俺より少し低いくらいか? 多分歳もそこまで変わらないだろう。

 

 とりあえず駆けつけられて本当によかっ、、


 ガクッと膝から下が崩れる。元いた世界でもたまにある、足の力が抜けてちょっとつまずくアレに似ているが、次の瞬間に俺は膝から下の感覚を失い、地面に膝下の剥き出しになった肉を地につけていた。


 「はっ……⁉︎」

 「“マーク後ろ‼︎”」


 精神の中のルザの声で後ろを振り返ると、もう目の前に剣を持った屈強な男が迫っていた。先程女の子を抱えて通り過ぎた際、3人のうち1人だけ明らかに強そうな男が居た。そいつだ……!

 剣……ってことは剣士。じゃあ足を気づかぬ間に斬り落とされたのか!

 咄嗟に女の子を庇いながら半ば倒れると、迫る男に向かって足を蹴り上げる。高さ的に顔には当たらないが、腕とかに当たって一瞬でも怯んでくれれば……。

 だが、俺の狙いは甘かった。真横への薙ぎ払い。俺が目で追えたのはそこだけで、今度はもう片方の足が血を吹きながらなくなった。


 「ぐゔゔゔ、、」


 苦痛と絞り出される涙。中の上なら、3割以外の者には勝てる。そう心のどこかでたかを括っていたが……。この男は、残りの3割に入る強さだったわけだ。


 「“急いで足を再生するんだマーク! 早く‼︎”」


 バサっ……。これで合っているだろうか? 今俺を襲った救い様のない事実を伝える際に使う効果音は。今度は足というより、下半身の感覚がなくなった。身体真っ二つか。

 ……かなり痛い。そのまま

俺は気を

失った……。


 

 マーカライルが大ダメージを負って気を失い、辺りには散乱したマーカライルの血液と、マーカライルの上半身に包まれた少女。そしてマーカライルを軽々斬り伏せた男だけとなった。


 「………相手が悪かったな。んっ!」

 「キィィッ……‼︎」


 突然体を真っ二つにされ、死んだはずのマーカライルが操り人形のようなやや不可解で気味の悪い動きのもと、剣士の男に手を伸ばして襲いかかったのだ!

 だが、流れるように2撃。伸びてきた手と、今度は首を、剣士の男はマーカライルから斬り奪った。


 「“………ハーーァ。やっぱり、マークの力を元にした今のボクの力じゃどちらにしろこの剣士には勝てないか。なら仕方ない。しばらくは出しゃ張らずに静観するとしよう……”」


 それでようやく、マーカライルからは生気が失せた。


 「……先ほどよりも速くなっていた。雰囲気も……」

 「さ、さっ……きの、、男の人はどう……っなったの?」


 震え上がる声を必死に抑えながら、少女がマーカライルの安否を確認する。

 その問いに、剣士の男は答えようとして、それを1度やめた。何故なら、確実に斬り伏せ、殺したはずのマーカライルの体が、ゆっくりと元に戻ろうとしていたからだ……。


 「これは……」


 残りの2人が合流する。

 

 「どうした……? ん、これはまた派手に斬り殺したな」

 「……お前ら、長いことこの仕事やってるくせに目の付け所が絶望的だな。この男の傷口をよく見ろ」


 その指摘、その催促に不満そうな顔をしながらも2人はマーカライルの傷口に目をやった。


 「傷口が再生している……」

 「あぁ。意識がなく、魔術の類いなら桂字の記入が大原則だがそれをしたのも確認できなかった。つまりそいつの再生は……」

 「能力か……⁉︎」


 マーカライルを取り囲む一同がひとつ、納得のいく結論を導き出したその時、一同の真上からフードを目深に被り、拳を大きく振り上げた者が迫り来る……‼︎

 

 「んっ……………‼︎」


 拳が剣士の体に着弾したと思われたが、ギリギリのところで剣が拳を食い止め両者の動きが止まる。


 「完全な不意打ちで反応するかよ。やるなぁ」

 

 不意打ちに見事な反応を見せた剣士を讃える闘士と思わしきフードの男。一方で剣士の男はフードの男の衣服に目をやると、戦いの場から退く決意をしたようで、剣を下ろして数歩後ろに下がった。


 「なんだ? もう終わりか?」

 「その服、マルチファリキュアだな……」


 剣士の男がそう呟くと、2人も何かを察したのか立ち去る態勢に入った。


 「悪いが、そう簡単に逃すわけにはいかない」

 

 フードの男が体勢を低くし、臨戦態勢に入った直後、剣士の男は2人が一緒に逃げることなど一切考えず、1人でさっさと逃げ去ってしまった!


 「んあっ! まっ、、」


 一瞬だけ悲しそうな表情をしたのち、剣士の男の逃亡に気を取られ油断した2人の男の首元にフードの男が拳を打ち込み、気絶させた。

 フードの男はまず、身動きがとれないでいるマーカライルが助けようとした女性を解放してやると、次にマーカライルの方を見た。


 「こりゃスゲーや。もう傷が完治してる。嬢ちゃんは大丈夫か? 怪我とかしてない?」

 「は、はい。あの、助けていただき、ありがとうございました。その方はご無事ですか?」

 

 女性は最初に自分を庇って痛手を負ったマーカライルをかなり心配している様子だが、フードの男が無事を伝えると安堵と疲労からか、その場で腰を抜かして動けなくなってしまった。

 こうして、女性もマーカライルもなんとか無事で済んだのだが、異世界にきて最初のまともな勝負にで、マーカライルはいきなり敗北した。次回より、新章開幕。

3話で土台の土台が終わって……と3話の後書きに書かせていただきましたが、4話終わって次の話から新章に突入します! 慌ただしくて読みづらく、大変申し訳ありません。


とにかく書き続けること、頑張ります!


次回は2025/10/31 金曜日更新予定です♪


読んでいただいた方、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ