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永追の異世界線戦  作者: 社会の歯車
第1章 施設マルチファリキュア編
11/12

11話 前夜の語り部屋

             11話


          前夜の語り部屋


 1ヶ月の間、4人で作戦を考えた。が、どれもガーディアとその他3人の攻略の決定打となる考えは出てこなかった。


 一方でガーディアのチームは……。


 「いいか。テメェら3人が適当に能力ぶっ放して奴ら4人を散らせ。アイツら4人のレベルなら、テメェら三人で余裕だ。んで、死にかけたところを俺が……殺す! 故意に殺したと思われねぇよう、テメェらが奴らの動きをある程度封じられたと感じたら速攻で殺す。いいな、巻き込まれねぇよう注意しろ」

 「はい!」


 いよいよガーディアのチームとの決戦を明日に控えた日の夜。ルザから引き出せる力は自身の素量を遥かに凌ぐ。おそらく500倍前後はあるだろう。ただそれでも、ガーディアとの差は大きい。

 どう足掻いても1人でガーディアを制圧することが叶わないと理解している。


 「“降参が認められているんでしょ? ならさっさと降参しちゃえば?”」

 “確かにそれも一理あるけど、それはなるべく避けたい”

 「“あー。今回の戦いの評価次第では、ここを出るまでの時間が縮まるからかい?”」


 今回の模擬戦は、教官たちが勇者の素質を見極める時間としても使われている。そのため、できる限り良い印象を残したい。


 “うん。早くここを出て、次は施設の地上層で勇者になるため動く。そうしないと、いつまで経っても”

 

 「“それでもし、他の3人が死にそうな目にあったら……どうするの?”」

 “………そんなの、考えるまでもない。たった7ヶ月。でも皆んな、大切な仲間だよ。3人のことを思うと、その先にあの日殺された皆んなの顔が思い浮かぶんだ。それくらい大切なんだよ。だからもし、3人に何かがあったなら、その時はルザ。君の力を余さず使う。堕天使の力だと皆んなに知られてしまうとしてもだ”

 「“ボクの力を、余さず……ね”」


 ルザがいつもは出さない低い声を出した。余さずという言葉に何か引っかかりを覚えたような感じがする。


 “ゴメン、ルザの力を全部使えてたら、もっと楽に勝てるんだよね……”


 ルザの力を侮ったことに対して謝っておく。だが、ルザの意識はそんなところにはもうないらしい。


 「“マーク。ボクには君の考えていることが全て筒抜けだ。だからこそ、今後の展開が大体読める。君、ガーディアのチームに勝つためには3人の力が必要だって考えてるんでしょ?”」

 “そりゃ3人の力は必要不可欠だけど……”

「“そう言う意味じゃない。誤魔化さないでよ。ボクは全てわかってるんだ。君、疑っているんだろ? あの3人を……」

 “そ、それは……”


 この施設に、必然的に能力者が集まる。その理由を加味すれば、俺が3人に対して向ける“とある疑い”は更に根拠を強める。


 「“その疑いを真実にさせた時、初めて君のチームはガーディアのチームに勝つことができるだろう。でもその前に、君は必ず彼らを疑わなきゃいけない。疑う過程が必要だ。けれど君に、心の優しい君に、仲間への疑いを表に出すことができるのかな……?”」

 “……俺は、”


 俺が今まさにそうしているように、おそらく俺が疑いを3人にしっかり向けなければ、事は運ばないだろう。


 「“もし君が、自分の殻を破って仲間を疑えたのなら、その時は……ほんの少しだけボクのことを君に教えるよ”」


 「眠れないの? マークくん」

 「ぁ……クレアラ」


 ついルザと精神の中に深入りして話していたせいで、現実に注意を払うのを忘れていた。


 「最近、ずっと夜はここに居るから、もしかして眠れないのかなぁって思ってたんだけど、大丈夫?」

 「………大丈夫。少し考えとかまとめてたんだよ。ぶつぶつ独り言を言ってると、皆んなを起こしちゃうじゃん? だからここへ」


 クレアラ、君は本当にシスティアラに似ている。自分自身が全然強くなくても、不安でも、自分より他人の弱さを心配し、気遣うことができるところ。そんなところが本当に似ている。


 昔の記憶が唐突に蘇る。


 「シスト。いいやシスティアラ。俺は君が好きだ。付き合って下さい!」

 「私も好きだよ。付き合おう、マーク!」


 俺と付き合うことが、シストに更なるプレッシャーを与えることになると知っていても。


「マーク、最近勉強のし過ぎじゃない? 少しくらい休んだ方が……」

「俺は大丈夫。それより、シストも頑張ってね? 大学受験はお互いにあるんだからさ!」


 自分が相手より弱くても、相手を心配する様な奴だって知っていても。


 俺はシストに最後の最後で気を利かせられなかった。


 利かせられないまま、死なせてしまった。


 本当はあの時、たったひと言。『ありがとう』だけ言えばよかったんだよね? 自分も頑張らなきゃいけないことくらい、わかってた上で俺の心配してくれてたんだよね?


 「明日だもんね。緊張するなぁー」


 クレアラが手で自分の顔を仰ぎながらそんなことを言った。


 「クレアラ、無理はしないでね。無理だと思ったら諦めていい。仲間とか、信頼できる人に無理やり合わせなくてもいい。自分のペースでやればいいと……」

 「私は、頑張れる自分が本当に好きな自分だから、皆んなに合わせて頑張るよ!」

 「ぇ……」


 俺を見るクレアラの目は、信じられないくらい真っ直ぐだった。

 そうか、確かにシストとクレアラは似ている。でも、同じじゃない。

クレアラと、2度と届くはずのない恋人のシスティアラを同じにすることが、そもそもの間違いだった。


 「また深刻そうな顔をしてるけど、どうし、わっ……!」


 俺はクレアラの両の手を取る。本当に俺は最低で、軽薄だ。見ているだけで、そばに居るだけで、シストに似たこの女の子の事が、どうしようもなく好きになってしまった。

 吐き気がする。この世界では、俺は復讐する者でしかない。そう割り切るつもりだった。

 なのに……元いた世界の恋人に近しい何かがあるからって、それだけの理由で、たった半年と少しで恋心を抱くのは……あっちゃいけないだろ。


 「“いいじゃん恋心。何がいけないの? 恋人の仇だとか、家族や親友の仇だとかって言うけどさ、それと今の君自身が抱く感情はまるっきり別物だろ?”」


 「ま、マークくん……どうしたの?」


 “あぁ、確かに別物だよルザ。軽薄なんて言葉は綺麗ごと。俺はあの時死なせてしまった皆んなと違って生きている。だから幸せになる権利をもっている。でもさ……綺麗ごとに縛られるのが、人なんだよ”

 「“……そっ。君に任せるけどさ”」


 俺はクレアラから手を離す。


 「急にゴメンね。俺も……ちょっと不安になってたのかもしれない。あー、女の子の手を急に握って不安だっただなんて話、かっこ悪すぎるよね。本当にゴメン! この事は、どうか内密に」

 「うんっ、もちろんだよ。それに、かっこいいだけが、かっこ良さじゃないよ? マークくんは私の命の恩人だもん、たまには弱みも見せてよね」

 「ありがとう。本当に困ったら、頼るよ」

 「うん!」


 現状、この子とどうにかなる事はない。いくら関係が延長して行っても、それこそ仲間の延長線上だ。

 全ての復讐が終わって、それでどうにかなるかならないか……って感じだと思う。


 「“でもいいのー? 復讐が完了した時、そこに恋心があるかもわからない。彼女が君のそばに居るかもわからないんだよ?”」

 “……いい。昔から俺は、頑固だからね”

 「“そう、”」


 アカツキとリンカが雑魚寝する部屋に戻ってくる時、俺は最後にクレアラに伝えた。


 「もしかしたら明日、俺は3人に厳しいことを言っちゃうかもしれない。でもそれは、4人で勝つことを考えた末に言うことだから、どうかわかって欲しい」

 「知ってるよ……。大丈夫。全部知ってるから」

 「知ってる……って、」

 「2人も、私と形は違えどわかってるはずだよ。だから安心して! じゃあ、そろそろ寝ないと明日起きられないよ?」


 不思議だ。なんだか結局俺が、クレアラに励まされている。


 「そうだね。もう寝よう。あんまり話していると二人を起こしちゃうし」

 「うんっ」

いよいよ次回、戦いが始まります! 今回はその前段階。戦いの中で起こる展開のための話を書きました。


どんどん冷え込みますが、体調に気をつけてください!


次回の登校予定日は2025/11/22 土曜日です!


読んでいただきありがとうございました!

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