10話 チーム対抗戦
10話
チーム対抗戦
施設に入って半年が経った。俺がルザから引き出せる力の量は、入りたての頃より3倍ほど増えたが、一定量力を引き出すと見た目に変化が起こる課題は解決できなかった。特に早く出るのは目の色の変化である。そのため、実戦での身体能力は表面的に停滞している。
しかし、トリティヤ教官とルザの勧めは正しかったらしく、俺は双剣を着々と使いこなせる様になっていた。
「今の動きはよかったぞ。俺とお前の身体能力が互角だったら、かすりはしていたかもしれんな」と、言われるほどにはなった。
また、ルザからも1人で素振りをしている時間に剣術を口頭で教えてもらっている。
長く生きてるからこその知識だそうで、教官からは教われない剣の振り方、持ち手を変えるタイミングなどを教えてくれる。
「“そこ振ったら相手もこう返してくるから、そこを持ち方変えて逆に斬りつける。うん、上手い上手い。因みに今の剣技は『攻防一閃』って名前だよ”」
相手の剣とぶつかり合った際に、相手に上手く受け流されカウンターをくらいそうになった時、剣の持ち方を咄嗟に変えることで剣を振れる角度を変え、逆に相手のカウンターにカウンターを合わせる剣技、『攻防一閃』
利き手の右ではできるけど、左じゃまだぎこちない。
「“双剣は左右対称の動きができて初めて脅威となる。もっと腕だけじゃなく肩や背中から剣を振るうイメージをもつと対称の動きができると思うよ”」
“わかった。やってみる!”
この身体でいいなと思うのは、いくら剣を振っても手にマメができないことだ。傷に該当するものは全て元に戻るから。
そういえば、魔術の授業でも進展があった。
この前火属性魔術を使える様になった。出た火はタバコに一回火を灯せるくらいだが。(タバコを吸ったことはない)
一度小粒の火を出すと、次からは何も出現しなくなった。魔力総量が少なすぎるのだ。多分だけど、あと2年増え続けると仮定して、せいぜい掌サイズの火の玉一発が俺の魔術の限界だと思う……。
体術はそれなりに。相変わらずリンカに一本も取れない。アカツキにも勝てない。2人を比べると、リンカは直感で俺の動きを先読みし、対応してくるのに対してアカツキはきっちり技術で制圧してくる。
どちらにせよ、到底2人に体術じゃ勝てない。
剣術はリンカと互角。アカツキとは、俺の方が最近優ってきている。リンカと戦っても引き分けが続く。
こちらがかなりのペースで攻撃しても、全て受け流される。驚いたのは、完璧な形で決まった剣技を咄嗟の動きで対応されたことだ。
リンカは魔術の才能も凄いらしい。というのも魔力の総量がそれこそ伝説級なんだとか。
ただ、4人グループの中で一番魔術の才能があるのはクレアラだと思う。まず桂字を暗記する速度が驚異的で、この短期間で並みの賢者が覚えている桂字をほぼ全て覚えたそうだ。因みにクレアラの得意属性は雷。
また、この半年間で知れたこともたくさんある。その中で興味をひいたのは、この施設に居る者たちが特別な力。能力をもっている率が高い理由だ。この世界では、能力者を毛嫌いしたり恐れたりする地域や国があるらしい。まぁそれに関して言えば、俺が元いた世界でも秀でた何かをもつ人を変な目で見たりすることも珍しくなかったためわからなくはない。そして、そんな者たちは酷い扱い。つまりこの施設のフォローの対象となるため、必然的に能力者が集まっているのだ。
因みに、ガーディア含め凶暴な者たちが訓練の時のみ合同になるのは、彼らがマルチファリキュアの構成施設に所属しているから。子供ながら犯罪を犯してしまった場合、フォローの対象になるらしい……。
授業終わり、座学の教官から知らせがあった。
「座学担当の俺から言うべきなのかはわからないが、一応報告だ。1ヶ月後、お前たち全員には4人1組でチームを組み、1チーム対1チーム対抗の模擬戦を行なってもらうことになった。戦いたいチームがいれば申し出るように。お互いのチームの同意のもとで対戦カードを指定することができる。希望がなければ当日抽選だ。ルールは、剣術、体術、魔術。全ての要素を使って相手を殲滅させたチームの勝ち。但し故意に敵チームを殺す様なマネはしてはならない。細かなルールは後日改めて資料を配布する。以上だ」
チーム対抗戦……。しかも『故意に』敵を殺すのを禁ずるということは、事故に見せかけてさえいれば殺してもいいと言うことになる。
こうなると……。
「あのクソゴリラが、アタシらのチームと対戦したがるかもな」
「うあーー面倒くさっ。でもリンカちゃん、何かあっても俺が君を守るから安心して!」
「不安だ」
リンカの言い分が正しい。アカツキが弱いからとかじゃなくて、単純にガーディアが強すぎるから不安なのだ。
何か作戦を考えないとマズイな。
「えっと、じゃあ断ればいいんじゃないかな? この前の感じを見てても、とてもフェアなチーム対抗戦にはならなそうだよ?」
クレアラが一番不安そうだ。魔術の腕は立つ。けどそれと怖くないのは別だ。
それにクレアラは、あの日ガーディアに女の子として嫌な事を言われていた。
「断ったところで、暴挙に出ない保証もない。それにこの形式でチーム戦のチーム分けができるとなった時点で、俺たちはもう、ガーディアと戦わなきゃいけなくなった」
「なんで?」
俺の説明にアカツキが問いかける。
「あの日のを見た感じ、多分この施設の中じゃガーディアが群を抜いて強い。で、多分ウチのチームとガーディアのチーム以外でチーム間に因縁があるチームはないと思うんだ。つまり、他のチームは皆、どこと当たってもいいと考えている。そこでガーディアが脅しついでに一言、適当にチームを組んでおけと言う。そうすれば、もし仮に、当日までウチのチームがガーディアのチームとやり合うことを断っていても抽選で残ったチームがウチとガーディアのチームだけになり、確定で当たることになる」
「マジかよ……」
「…………」
アカツキは下を向き、クレアラは更に恐怖心が募った様子だ。
そんなクレアラを見かねたリンカがクレアラの肩に手を置く。
「そう思い詰めなくてもいいと思う。アタシらも居るし」
「………ありがとう。リンカ……ちゃん」
この半年間、リンカのことを『リンカさん』と呼んでいたクレアラが、初めて『リンカちゃん』の呼んだ。クレアラの中で俺たちの存在が少しずつ変わっていく……。
「『ちゃん』はやめて。あの馬鹿みたいで鳥肌が立つから」
「えーーいいじゃん! 私のこともさ、ちゃんと名前で呼んでよっ。今までなんだかんだ名前で呼ばれたこと……ないよ?」
「んんっ……それは、」
俺とアカツキは初日の段階でだいぶ打ち解けあった印象だが、クレアラとリンカはそうではなかった。話はしていたがどちらもどこか気を使い合っているような。
でも、今の2人の顔を見ていればそれがなくなったことがわかる。もう半年経ったが、時の経過は大事だな。
それを尻目にアカツキが俺に近寄って話しかけてきた。
「女の子って……いいな」
なんかアカツキ、凄く危ない目をしてる気がする。
「でも確かに、リンカとあんなに自然な感じで近づけるのはクレアラだけかもね」
「ハーーーーァ羨まし」
次の日、正式にガーディアからチーム対抗戦の組み合わせを合わせようとの報告を受けた。綺麗にまとめるとこうだが、正確には『やろうぜ』だ。
どうせ断っても戦うことになる。なので俺たちは、とても素直にその勝負を受け入れた。
いよいよ戦いが近づいて参りました! ガーディアみたいな奴らがいる理由や、能力者が多い理由についてチラッと触れられてよかったです。
最近気温が一気に下がって、私は喉を痛めがちになりました。最悪です……。
次回の登校予定日は2025/11/18 火曜日です!
読んでいただきありがとうございました!




