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永追の異世界線戦  作者: 社会の歯車
第0章 異世界転移編
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1話 絶望の中

            1話


           絶望の中


 [合格通知書 マーカライル・シラヴィス

上記の者は〇〇年の試験において合格したことを通知します]


 ポストに夕方、投函された大学の合格通知。俺はそれを見て心を躍らせた。合格したのは国内屈指の難関大学。かなり勉強した。今までで1番頑張った。努力が報われた。それがただただ嬉しくて、とにかく合格したことよりも、自分の幸せを掴み取るための“努力”が、自分を裏切らなかったことが嬉しかった。


  『続いてのニュースです。また、変死事件が発生しました……』


 そんな幸せの絶頂の自分とは裏腹に、不幸な事件が最近多発している。今もこうして、帰宅早々につけたテレビに映し出されているニュース番組でそんな報道がされていた。この変死事件は不可解な点が目立つらしい。何よりその事件が起こった現場が毎回バラバラ。既に9件も起きているが、そのいずれも距離があるのだ。事件が起きる頻度と移動距離を考えると、犯人は複数人いて集団で殺しを働いているのでは? との見方も強まっている。

 とにかく夜は、家の戸締りに気を配らないとな。


 こうして時は1週間経った……。


 その日は家で小さなパーティ。主役は俺。内容は俺が大学に合格したことを祝ってくれるというもの。参加者はなるべく少なく、父と母。そして妹に、恋人のシスティアラと親友のダンザの計6人だ。


 「なんだよ〜ご家族だけじゃなく、シストが居るなら俺が来た意味あったかぁ?」


 シストとは、恋人システィアラの愛称。因みに俺はマーカライルでマークと呼ばれている。


 「あるよ。ダンザには俺が苦手な数学のコツを何度も教えてもらった。呼ばなきゃ罰当たりだよ」

  「そ、そうか……?」


 頬を指でかき、あからさまに照れるダンザ。

俺の隣にはシストが居て、終始笑顔だった。


 「本当におめでとうだねマーク。私マークが合格したって聞いた時、自分が受かったみたいにはしゃいだよ!」


 シストは本当にいい子だと思う。俺にはもったいないくらい可愛いし、性格もいい。


 「次はシストだね。2週間後だっけ? 大学の入試」

 「あっ……!」


俺がシストにそう尋ねると同時に、シストは俺と身体が密接している方とは逆の手で持っていたコップを床に落とした。


 「ご、ごめん! なんか変に力が入っちゃって!」


 すぐさま母さんが溢れた飲み物を拭くためのタオルを何枚か持ってくる。そしてそれを俺も含めた3人で分け、床を拭いた。


 「そうだよ、2週間後に入試。急に言われたから、力が入っちゃったっ。ゴメンね!」

「いいや、こっちこそゴメン。自分が受かったからって、ちょっと舞い上がってた」


 一瞬だけ、しらけた雰囲気になる。だがその状況を打破したのは父さんだった。


 「んだよー、シストちゃんとイチャイチャばかりしやがって〜。せっかくのパーティなんだからもっと皆んなで盛り上がろうぜ〜」


 妹も続けて。


 「そんだよ! いつも控えめな感じでいないで、たまにはドーンっと盛り上がらないと!」


 妹は14歳。そろそろ反抗期になりそうな年頃なのに、俺の話に付き合ってくれたり、近寄ってきてくれたりする。父さんも母さんも文句の付け所のない、いい両親だ。親友のダンザも、自分だって大学の受験が控えているのに俺の勉強に付き合ってくれたし。

 こうして、自分の周りの人をなぞって感じられることがある。


 俺はなんて幸せ者なんだろう……って。


 「そうだね、もっと主役が盛り上がらなきゃ白けるもんね!」


 皆んなが頷く。もっと盛り上がろう。たまには少し、ハメをはずすくらいでもいいかな。


 「少しトイレに行ってくるよ。俺を気にせず楽しんでて!」


 そう言って俺はトイレに向かった……。


 ウチは広く、リビングから溢れる光だけでは夜のトイレに続く廊下の隅までを照らすことはできない。やや不気味だ。けど自分の家のトイレには行き慣れているし、わざわざ廊下の灯りをつけるまでもない。そう思っていた。

 でもその判断が、今後起こる最悪の展開を招いたのかもしれない……。


 トイレの前に辿り着く。そんな中、ふとトイレのすぐ近くに位置する玄関から気配を感じてそっちに目をやった。すると、玄関前に俺の腰の高さくらいの“何か”が立っていた。


 誰? なんて言葉は二の次で、開口最初に出たものは悲鳴にも似た声だった。

 それと同時に、その何かが大声を上げながら俺に迫ってくる。


 「カァァァァァァァァァァァァァーー!!」


  “何か”の動きは凄まじかった。けれど反応できないほどの速さというわけではなく、咄嗟の判断で身体を半身ズラして回避する。ここでようやく、その“何か”の正体がリビングからの灯りで判別できた。


 「悪……魔?」

 「シャァ!」


 油断した。そう思った瞬間、俺は前腕を噛みつかれた。でも、たかだか噛まれただけ。悪魔に見えても暗がりで、実際は動物か何かだろう……。そう思っていた矢先、何かを喪失した感覚とともに、やや重たい物が足元に落ちた音が聞こえた。


 「えっ……」


 腕だ。誰の……? 俺のだ‼︎


 「ぁ、あああああ! ぐう、」


 痛い、痛い痛い痛い痛い、痛い。


 声にならない悲痛な叫び。噛みちぎられたのか? 前腕とはいえ腕だぞ? あんなに小さいんだぞ? あんなに小さい“何か”に、腕を……。

 頭が回らなくなる。それが出血のせいなのか、はたまた急に起こった悪魔の所業のようなこの出来事のせいなのかはわからない。


 「どうしたマーク!」


 皆んなが俺の声? それとも“何か”の声に反応してこの場に駆けつける。けどここは危険だ、警察を呼んだりしなければ……。


 「ダメだよ。ここは危な……、ぁ、、、」


 次の瞬間、視界が真っ赤になって、俺は気絶した。


 目が覚める……。いいや、ずっと目を開けていた様な感覚もある。訳がわからない。次に俺は直立していた。気絶していたはずなのにだ。意識も記憶も、その場にはなかった。なのに立っている。

 そして……その日俺は、家族と恋人、親友を皆殺しに“していた”。


 もはや声など出なかった。ギリギリ家族だとわかる、辺りに散らばった肉片。それに俺は愛情を見出せなかった。ただただ恐怖がその肉片にはこびりついていた。


 俺がやった? いいややる訳がない。でも、俺がやったに違いない。そうだ、俺が家族を皆殺しにしたんだ、鮮明に覚えているぞ。殺意を剥き出しにする俺を相手に、当然皆は本気で相手にすることができなかった。殺さなければ俺に殺される。そんな状況でも皆は情に負け、俺を殺し損ねて俺に殺された。フォークで眼球を切り潰し、もう無い腕を押し付ける様にシストと妹を殴り飛ばした。嫌なはずなのに、噛みついた家族の皮膚と筋繊維の味は、待ちに待った食事の如く美味であった。


 ここで唐突に嘔吐する。

 先ほどまで大切な人を殺したはずなのに気分は踊り狂い、そして今度は悪寒が身体を縛りつける。


 「……ホント、最低だな……」


 そう言い全てを投げ捨て、その場に転がっていたナイフだけは拾い上げる。そして、そのまま迷うことなくそのナイフで自分の首を………


刺した。

本日22:00から、拙いものではありますが物語を掲載させていただきます! 

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