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タウロスのやる気、爆上げ大作戦。その6

 キャンサーと捕らえた盗賊の濃密な時間が過ぎ、夕方に入っていた。


「どうやら、ここのようです」


 キャンサー先頭で移動し、目的地に到達した私たち。

 キクジの家から北東に進み、木々をかき分けた場所に盗賊がアジトにしている洞窟があった。

 天然の洞窟だ。黒々とした入り口は入ったら最後、命はないを暗示しているようだった。


「で、お嬢。どうする?」


 木立の陰からアジトを観察する私たち。

 入り口には両端に見張り。数は二人だった。武装はキクジの家で対峙した盗賊と似ていた。顔バレ防止なのか、口元を白いスカーフで覆っている。街を守護する憲兵NPCと違ってやる気のない雰囲気を醸し出していた。


「相手は油断してる。なら、やることは一つ!」


 星刻の錫杖(アストロ・ワンド)を構え、しゃがむのやめた。前へ一歩足を出す。

 私の意図を察したタウロスとキャンサーもそれぞれ、武器を装備。


「さっさと盗賊団を壊滅させるよ!!」





 ◇


 キクジは目を覚ました。

 頭が痛む。頬にはかたまった血がついていた。そこで自分が傷を負った理由を思い出す。

 注文で花火玉を製作中に、見知らぬ男たちが工房に侵入してきた。抵抗するも呆気なく攻撃を受けて気を失っていた。自分が狙われた理由は検討がつく。花火玉に使用する素材アイテムの中には貴重な鉱物を盛り込んでいる。そして、その鉱物は使い方次第で人を殺す道具へ変貌するからだ。


 状況を確認するが、目の前に広がる光景は想像していた景色ではなかった。


「お前さんは、いや、貴方様は天使様か?」ここは......天国か。わしは死んでしまったのか」


 目に映る女性は天の遣いの様だった。陶器のような白い肌に赤髪で奇抜な服を着ていた。自分を襲った盗賊の一味ではない。それははっきりしている。


「ここは......天国か。わしは死んでしまったのか」


 キクジの震える声で女性に質問し出す。

 無表情の女性は首と傾げなら口を開く。かえってた答えは欲しい言葉ではなかった。


「私は天使ではありません。ただの機械人形(オートマタ)です。そして、ここは天国ではなくただの洞窟です」


 衝撃的な返答。その瞬間にキクジの視界が回復する。目先の女性の周りの景色が鮮明に広がる。

 左右を確認し、光あふれる楽園ではない。薄暗いジメジメした洞窟に自分はいた。


 キャンサーはキクジの体を調べる。と、同時に足音が近づく。


「キャンサー、どうだ?」


「傷を負っていますが、無事です」


 タウロスは持っていた炎神の星槌(ヒノカグツチ)を地面に刺す。緊張が解けたのかぐったりとした顔を浮かべていた。


「タウロス。貴方の仕事は終わったのですか?」


 キャンサーの質問に答えるようにタウロスは拳から親指だけ出す。そして親指で視線誘導した。

 キャンサーは確認したのち、首を縦に振る。


 そこには、山があった。天然物ではない。ましてや本物の山ではない。盗賊団で構成された人工山だ。

 山形成の部品として成り下がった盗賊たちは誰一人動けずにいた。


 キャンサーとタウロスは洞窟内に潜伏していた盗賊団の構成員を片っ端から無力化していった。

 後で憲兵に引き渡すために一ヶ所に集めておく。キャンサーの提案は今、タウロスによって完了していた。


「お前さんたちは......」


 状況が未だに飲み込めていないキクジ。


「貴方の救出しにきました。喫茶店のボタン様からの依頼です」


 キャンサーが発した”ボタン”。その言葉で理解したキクジ。


「アイツには苦労をかけたな。お前さんたち二人か?」


「いんやぁ〜 アタイたちの主人も一緒だ。洞窟の奥に逃げた盗賊を追いかけに行ったよ」



「早く助けに行くんじゃ!!!!」



 キクジが声を荒げる。キャンサーもタウロスも眼を見開く。


「急に大きい声を出すとお体に障ります」


「お前さんたちの主人が追っているのは盗賊団のリーダー。指名手配されている極悪人じゃ」


 工房に入ってきた一際、異様を雰囲気を放つ男がいた。筋肉隆々で顔に傷がある浅黒い男。

 目的のためなら平気で人を殺める冷酷な殺人鬼。それが盗賊団のリーダー、”シュウ”。


 リーダーの話を聞き終えたキャンサーとタウロス。二人は慌てる素振りもなく、苦笑いしかしない。


「............多分、大丈夫だぜ」


「キクジ様。心配はご無用です」


 洞窟の奥から足音が一つ。何かを引き摺る音と一緒に近づいてきた。


「タウロス! キャンサー! 終わった?」


 少女の声。手を振る女の子は、洞窟という暗い空間では似つかわしくないドレス衣装の格好だった。


「こちらは任務完了です、ユミナ様」


「お嬢の方は?」


「私は......」


 左手に持っていた何かを投げてきた。何かの正体はすぐに判明した。

 そう、盗賊団のリーダー。”シュウ”本人。シュウは完全に伸びて戦闘不能状態だった。


「メンテ、必要か?」


「いいよ。対して消耗してないし。はぁ〜〜〜 あの弱さで盗賊のリーダーって」


 文句しか言っていない少女。先ほどの可憐な女の子は幻影としてキクジの中から消えた。

 仰天していたキクジはキャンサーと眼が合う。


「大丈夫でしたね」


「そ、そうじゃな......」



菊花火と牡丹花火


テメェェエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーーー 

その強さで長、やってるのかぁあああああああああああああああ


そんなんじゃ、誰も守れないわ

私が教えてあげる。本物の強さを。


あぁ、貴方の得意の毒攻撃。存分使いなさい!

私、毒効かないから!


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