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リアルフレンド、ゲームの世界へ。その12

 ◇◆◇


 ユミナとソロモン王の戦闘終了、十分前に戻る。


 ブッシュの手を引っ張る女の子、リアス。


「お姉ちゃん! 早く!!」


「待ってよ......リアスちゃん」


 リアスのお願いを叶えることにした三人。反対側は行けないので、東側2階を四人で探検した。

 探索中もリアスは三人を驚かす素振りを見せる。ホラー耐性がないブッシュは叫びまくる。ブッシュの叫びが面白かったのかリアスは笑っていた。楽しそうに無邪気に。

 リアスに感化されたアクイローネ、リズムも加勢する。怒ったブッシュの反撃を喰らう二人の醜態も見てリアスは楽しんでいた。ずっと一人の少女が友を得て、友達と一緒に遊び、心から楽しい素振りだった。


 洋館内を早歩きする二人。リズムとアクイローネは後を追いかけるだけだった。


「ゾンビ、出ないな」


「あんなに足音鳴らしているのに」


「ここを引っ張って! 引っ張って!!」


 リアスのお願いで壁に垂れている紐を見つけるブッシュ。ブッシュは少しためらった。けど、リアスの無垢な笑顔に負ける。ループレスの操作紐を下げた。


 天井が変化する。隠し階段が出現した。


 驚きつつもブッシュはリアスと一緒に階段を登る。


「ここがリアスの部屋だよ!」


 先ほどまでの洋館の劣化はなかった。多くの人形飾ってある可愛らしい女の子の部屋だった。


 左腕に抱えている人形とは別の人形を取る。お人形遊びを始める。


「リアスね。ずっと一人だったの」


 人形を床に置く。

 リアスは部屋で踊り出す。


「目が覚めたら、お姉ちゃんたちがいたの」


 可愛い笑顔を三人に見せる。


「楽しかった!!! ありがとう、お姉ちゃんたち!!!」


 リアスはブッシュに二個の人形を渡す。リズムとアクイローネにも、それぞれ一個ずつ別々の人形を渡した。


「これ、お礼だよ。リアスと遊んでくれた......お礼!」


 リアスはベットに座る。あくびをして、眼を擦る。


「眠くなっちゃった。またね、お姉ちゃんたち」


 突如、部屋の窓から突風が吹き荒れる。咄嗟に腕で眼の前に置く三人。強烈な風は止む。ゆっくり腕を下ろした三人は驚愕する。


「えっ......!!?」


 綺麗な部屋は何処にもなく、2階までの洋館と同じ劣化具合だった。暗く陰湿な部屋。床には埃まみれの人形が散らばっていた。ボロボロのベットの上には小さな骸が一つ横たわっていた。苦しんだ様子はない、損傷もない。ドレスを着た綺麗な状態の白骨死体だった。


「ずっと、待っていたのね」


 三人の前にウィンドウが表示された。《愛しのドール人形》クエストクリアの画面だった。

 ブッシュが右手に持っているのが目的の人形。ブッシュの左手、二人が持つ人形は特殊アイテムだった。


 『リアスの心玩具(ドール)』。他プレイヤー破壊・譲渡不可のアイテム。


 効果は各職業に補正がかかる。そして、等身大の人形としてプレイヤーと戦うことが可能になる。人形が倒されても元の人形に戻り、再使用できる。


「リアスは楽しかったかな〜」


「どうだろうね」


「楽しかったと思うよ。私はそんな気がする」


「だな!!」


「ま、イタズラの素質は十分あってしね」


「あぁ!!!!」


 耳を抑えるリズムとアクイローネ。


「五月蝿いな、ブッシュ」


「二人とも、覚悟してよね」


 リアスから託された人形はストレージにしまったのだろう。身軽になったブッシュの手はクネクネしていた。


「さっきはよくもイタズラしてくれたわね」


 不敵な笑み。一切笑っていない。リズムとアクイローネは高速で階段を降りる。仕返しを結構したブッシュは追い掛ける。階段を降りる瞬間に後ろを見た。


「楽しかったよ、リアスちゃん!」




 ◆◇◆◇◆



 洋館1階の物置から出た私。も———ぉ長かった。しばらくは階段を登りたくない。後ゾンビにも会いたくない......

 この短期間にゾンビ軍団を相手にするとは。変な瘴気、纏っていないよね。ゾンビを呼び寄せるフェロモン的なやつ。


 幽天深綺の(ファンタズマ)魅姫(・ドレス)・エクシードの匂いを嗅いでも感じない。そもそもプレイヤーの五感はある程度制限されている。無駄な行為だった。


「ゾンビは積極的に迫ってくるし、女性NPCは狂喜乱舞で襲ってくるし......」


 ぜぇぇぇええええたたぁい!!! に何かあるはずだ。今度調査しよう。


 周囲を警戒しつつ移動を開始する。声が聞こえる? 絶叫声かな......


 声がする方へ進む。

 食堂の扉。ここを開ければ玄関ホールに行けるはず。


「家具が山積み」


 侵入を遮るようにバリケードが建設されていた。

 退かすのは重労働。魔法で蹴散らすこともできる。でも、今は色々と疲れている。

 魔術本:No.8:【熊王】、魔術本:No.24:【エレファントの終わりに】を開く。


「クーちゃん。エレレ。お願い」


 私のよって召喚された使い魔。白熊を模した魔獣、『アクア・スカルプスィト・グラディウス・ウルソス・マリーティモス』のクーちゃん。ゾウを模した魔獣、『テラ・チューニング・エレパントゥス』のエレレ。


 クーとエレレは主の命令に従う。勢いよく扉へ突進する。バリケードに使われた家具類は粉々になる。両扉は二枚とも玄関へ吹っ飛ぶ。


「......何やってるの?」


 声が聞こえたのは玄関ホール。正体は悪友ども、アクイローネ、ブッシュ、リズム。

 でも、カオスな状況だった。


 ブッシュはアクイローネも逆エビ固めされていた。悶えているアクイローネに一切の容赦を見せないブッシュ。

 床にはリズムが転がっていた。痙攣している......


「ごめんなさい、ゆ”る”し”て”ぇ”え”え”え”え”え”え”え”え”え”!!!!!!!」



「あぁ! ユミナちゃん」


 私の存在に気がついたのか笑顔を浮かべるブッシュ。


「ちょっと待っててね」


 アクイローネを解放し放り投げる。怖ッ!

 うめき声を出すアクイローネを放って、痙攣中のリズムへ向かうブッシュ。


 うつ伏せのリズムの腿を外側にブッシュは自分の足で巻き込むように挟んでいた。ブッシュは自分の両手で痙攣中のリズムの両手を持つ。最終的にリズムの体を吊り上げる。見事な開脚!!


「い”て”て”ぇ”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”!!!!!!!!!!!」


 絶叫が響く。


 状況は把握できない。でも、これだけは理解した。


 ニヤリッ! 面白そうだ!!


 様々な角度で二人の哀れな醜態をスクショ。100枚以上溜まったか。

 後でブッシュと共有しよう!



次話、明日6時投稿します!


リアスが登場したのはソロモンが大量のゾンビを増やし続けたのが原因。眷属を無限に増やせる魔法、グリモワール。星刻の錫杖を持つ者に大量のゾンビと対峙させて力量を計るために地上にいたユミナを招待した。穴が開いたことでグリモワールが放つガスが洋館内に充満。隠し部屋にまで浸透。一時的にリアスは復活した。地下よりも最も離れた場所にいたリアスの身体。ゾンビになる濃度数値が低いことが影響し、人間とゾンビの中間のような生物になっていた。ユミナがソロモン王を討伐したことで穴は閉じ、ガスは消滅した。力を失ったリアスは元に戻った。


ブッシュたちがクエストをクリア後、隠し部屋は完全に閉じられた。誰も二度と入ることはできず、静かな平穏が続くのだった。

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