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タウロスのやる気、爆上げ大作戦。その2

 街中を巨大ゾウで移動。


 目立たない方がおかしい。実際、ユミナたちを見上げるプレイヤーやNPC。

 NPCは目を吊り上げ、口を開きっぱなし。

 プレイヤーは忙しそうだった。誰かに連絡を取っている者も入れば、ユミナ達よりも上。

 屋根に登り、ユミナたちを追いかけている様子が見えた。


 パパラッチでも、ここまでの行動力はない。


 ユミナの使い魔、ゾウを模した魔獣。名は”エレレ”。

 水色の巨大ゾウの上では、外の騒音を無視して会話をしだす。


「どう、タウロス。なんかピンときた物ある?」


 ゾウで移動しているのにはちゃんとした理由がある。


 タウロスが喜ぶ物。一番は武具やモンスターの素材、アイテムなど。

 生産職には楽園的な街、ムートン。


 ムートンをウィンドウショッピング感覚で歩けば、やる気の戻るのでないかとユミナは考えた。

 しかし、問題がある。


 ユミナ含め、ユミナの従者は非常に目を惹く存在になってしまった。

 先日、未知の武具を公衆の面前でお披露目したことが原因だ。

 普通に歩けば、一斉にプレイヤーに捕捉される。


 最悪、捕まるかもしれない。


 そこで、絶対に捕まらない方法を模索。

 選ばれたのが、使い魔に跨って観光作戦。


 ムートンは広大な敷地面積を保有している。舗装された道も広い。

 ゾウ一匹が道を移動していても、交通に影響は出ない。



 後ろからタウロスの声が聞こえた気がした。

 音が小さく、聞き取れなかったからだ。


 ユミナに助け舟を出したのはキャンサー。


「ユミナ様。タウロスが『降ろしてくれ』と」


「良いもの、見つかった!?」


「いえ、そうではなく。タウロスは羞恥で耐えれない、と考えます」


 エレレを停止させた。


「ありがとうね、エレレ」


 ユミナは使い魔にお礼を言って、魔術本を閉じた。

 既に疲れ切ったタウロス。綺麗に立っているキャンサーはユミナに話しかける。


「この後の予定はどうなさいますか、ユミナ様」


 どうやら、タウロスは立てない。歩けるには少し時間がかかる。


 ストレージから別の魔術本を取り出す。

【魔術本:No.3】、”煉獄猟犬戦争”。ユミナ命名:ベス。


 地獄の番犬、ケルベロスを模した魔獣。黒い毛、三つの首には銀の兜、爪も銀色。首輪は金色となっている。

 蛇の尾を生やしていた。


 ケルベロスは周りを威嚇していた。ヤバいオーラを放つ獰猛な捕喰者。主の邪魔をする者は即、息の根を止める。そう、頭で理解している。ベスのおかげでムートンの地に降り立ったユミナたちに話しかける者はいなかった。


 ユミナとキャンサーはタウロスをベスの背に乗せた。


「とりあえず、タウロスはこれでいいっか」


 側から見たら、捕らえた牛を担いでいるケルベロスの図。

 地面に落ちないようにロープでタウロスの体を括り付けている。

 より一層、獲物と捕食者に見えてしまう。


「ベス。お願いね!」


 三頭のあごの下を撫でるユミナ。気持ち良さそうなベス。

 先程の警戒心MAXの狂犬は緩み切った顔になった。


 地獄の番犬と同じ姿の魔獣は主にすっかり懐柔されていた。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ユミナ様。一つ、お願いがあります」


「うん!」


「私の頭を、撫でてください」


 首を傾げるユミナ。


「そんなので、いいの?」


「はい。先程、ユミナ様が使い魔にしていたのを見て、私もやって欲しいです」


 直球な甘え。可愛いんだけど〜〜〜♡♡♡


 ユミナはベスを見る。

 主の命令を忠実に守っているベス。ユミナとキャンサー以外、近づく者は威嚇してもいい命令に。

 唸り声。他を圧倒する威圧。番犬に相応しい存在だが、主にあやされる姿は愛犬。ギャップ萌えと言うのかもしれない。


「良いよ!」


 無表情なのに、声は非常に喜んでいるキャンサー。


「よ〜〜し、よ〜〜し」


 ユミナはキャンサーの頭を優しく撫でた。


 下を向くキャンサー。同時に体が小刻みに震え始める。


「大丈夫? 痛かった?」


「お気遣い感謝します。大丈夫です。良いものですね。主から頭を撫でられるの」


「昔はなかったの。私以外と......」


「ありませんでした」


 キッパリと言う。ここから、キャンサーはユミナ以外とは何もなかったことが分かる。


「キャンサーが望むなら、毎日やってあげるよ!」


「よろしいのですか?」


「いつでも、癒してあげるわ!!!」


 満面の笑みになるキャンサー。

 幸せだった。そして、非常に笑顔が可愛すぎるんですけど!


「ふふ〜〜♡!」


 鼻唄しながら、スキップまでし出すキャンサー。

 ゴシップドレスを着た表情豊かな赤髪の美しいシルエットの機械人形(オートマタ)


 周りのプレイヤーは突如現した謎のNPCに釘付けだった。



「お〜〜い」


「あ、生き返った!」


 タウロスが目を覚ました。


「お嬢......アタイに恨みでもあるのか」


「えぇ〜!? 酷いよ」


「お嬢の泣きマネが通じるのヴァルゴだけだぞ」


 学習してやがる。ま、良いっか。


「逆に、ヴァルゴなら100%効果抜群は確定してる」


「どんだけ、ポジティブなんだよ。てか、降ろしてくれ〜」


 ロープを解く。


 タウロスも歩くことになった。



暫く街中を歩き、タウロスの好奇心を高めていった。

三人で布製品の防具を着て、ミニファッションショーを開始したり、掘り出し物があるかと露店を巡り。

知り合いの生産職のプレイヤーが引き連れた軍団から逃げていたりと、時間が経過していった。


不意に立ち止まるタウロス。

ガラスケースに入ってるパフェに吸い寄せられていた。


「ここに入りたい!」


瞳がキラキラしているタウロス。


ユミナとキャンサーはうなづく。ユミナたちは喫茶店に入室した。

例の如く、オトモくじを行い。

ヴァルゴは当たりを引けなかった。


「お嬢様ぁあああああああああ!!!!!!!! 行けないでぇぇえええええええええ!!!!!!!」

ギャン泣きする大人の女性......


いつメンは通常運転。支配から解放された精霊は、毎回恒例の『え、誰この人』状態になる。

相変わらずのヴァルゴさん。

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