タウロスのやる気、爆上げ大作戦。その1
この作品は『星霊女王ユミナ ~ユニークNPCを助けまくったら、女性に囲まれる女王になってた~』のアフターストーリーです。
ユミナはボルス城内部にある鍛治場に足を運んだ。
ログインしてすぐ、『タウロスの様子が変』とアリエスに言われたからだ。
「タウロス、いる?」
鍛治場に入るとタウロスはいない。
「ねぇ、ポーア。タウロスは」
鍛冶場にいたのは刻獣のポーア。
亥を襲名したボブカットにメッシュが入った女性NPC。
ユミナの声に反応したポーア。
「ユミナ様。実は......」
ポーアに案内されたのは、庭。
ボルス城は日々、改築されていく。城正面は広大なフランス式バロック庭園となっている。
正面に庭園は壊さない。それ以外は手を加えれる。
敷地面積を拡張したことで、従者が思い思いの庭を造っていた。
並木道を抜けると、日本庭園がたどり着いた。
”華麗宮”という場所。
茶室にはタウロスがいた。澄み切った空をぼーっと眺めている。
隣に座るユミナ。ユミナの隣にポーアも座る。
「お嬢か......」
「ここ、良いよね!」
茶室には池庭がある。静寂が心を和らぐ。
「アタイはもう、ダメかもしれない」
突然の言葉。
ユミナが口を開く前にタウロスは続けた。
「なーんにも。思い浮かばねぇ」
「創作活動って事?」
タウロスは鍛治師。ユミナが知る中で最高級の腕前。
ユミナが持つ装備品のほとんどがタウロス印。
ユミナはタウロスに身体を侵食されてると言っても過言ではない。
今までは相手の声が届いていない集中力でアイテムを生産していた。
「ここ数日な。道具を持っても身に入らないんだ」
ウラニアの指輪から製造の金槌を取り出しても、ため息を吐く。
全く覇気が感じられないタウロス。
タウロスは一種の燃え尽き症候群に陥っていた。
簡単に治る人もいれば、そのまま続く人だっている。
何がきっかけで完治するかは人それぞれ。
「だからな。静かな場所で自然を感じてたんだ」
「そっかー」
ユミナは暫し考え、立ち上がった。
「良し! タウロス、おでかけよ」
「おでかけ?」
「静かな場所にいるのも良いけど、混雑している場所に行っても良いと思うのよ」
自然のエネルギーで治らないなら、好奇心が倍増する街中に行けばいい。
これ、私の持論!
ユミナはタウロスの腕を引っ張る。
「重ッ!? ポーア、手伝って」
駄々をこねるタウロス。
ユミナとポーアはタウロスの腕をそれぞれ、掴み茶室からボルス城まで引っ張っていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
スラカイト、ムートン。
オニキス・オンラインでプレイヤーが生活する十二個の街。
ムートンは八番目の街。
ムートンは一言で言えば、生産職の街。
生産職を目指すプレイヤーが滞在するのに最適な街なのだ。
NPCがやっている店は、武具に必要な素材が溢れている。
魔法学園で採取できる素材を除き、ほぼムートンで揃う。
店を出せるのはNPCだけではない。
もちろん、プレイヤーも自分のお店を出店できる。
生産職専用のギルド、『クリエイト』からのクエストをクリアしないといけない。
報酬の『出店の証』を獲得するとお店を開ける。
大々的にお店を開くプレイヤーもいれば、隠れ家的なお店を出すプレイヤーも存在する。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ムートン、メインストリート。
周りの景色を見ないように目を手で隠すタウロス。
「なぁ、お嬢。降りないか」
タウロスは恥ずかしい気持ちでいる。その証拠に頬が若干、赤い。
逆に周りを物ともしない楽しい雰囲気を出すユミナ。
「タウロス。慣れよ、慣れ!」
ユミナは跨っている水色のゾウに指示を出す。
「エレレ。加速ッ!!」
ユミナは腕を上げ、前方へ指を指す。
ユミナの使い魔。魔術本、No.24。題名は《エレファントの終わりに》。
ゾウを模した魔獣、『テラ・チューニング・エレパントゥス』は嬉しそうにムートンの道を走り出す。
ユミナは顔を後ろへ向ける。
「キャンサー、タウロスが落ちないようにしてね!」
ユミナの命令に女性的な機械音で応えた。
「了解しました。ユミナ様」
顔周りはレイヤーカットで長め前髪。瞳も髪同様、赤色に統一されている。
ゴシック衣装を着ている蟹座は白くか細い片腕でタウロスの鍛治服を掴んでいた。
美しき機械人形は新しい主に忠実である。
お読み頂き、誠にありがとうございます!!
どうも〜
初めましての方は、初めまして!
お久しぶりの方は、お久しぶりでーす!
麻莉でーす。
なんか、アフターストーリーとか書きたいなと思い、投稿することに決めました。
基本、ゆるいお話となります!!
完全な不定期になりますが、よろしくお願いします。
もしお暇な時がありましたら、こちらの作品もよろしくお願いいたします!
『怪物令嬢 〜貴族令嬢に転生した元魔法少女、筋肉や物理攻撃の力技に興味を持つ!〜』