独り歩き彷徨い。
[第6話] 独り歩き彷徨い。
そんな窮地の中、私は最近彼と婚約を予定している。
今夜はその彼を招いて夕飯を一緒に食べることにした。
彼には、流行りの幽体離脱についても話しをしていて、自分も実践している事も打ち明けた。
そんな矢先、インターホンを鳴らす音が...。
覗き穴の先には、夢美Bが立っている...。
やはり裏切りに来たのか?
不安になり、急いで魔美に電話すると、
「だから暴走するから気をつけてって言ったのに...」
「どうしたら暴走を止められるの...?」
そんな電話のやり取りの最中、
玄関越しに「ねぇ〜、今誰といるの?」と聞こえてきた...。
驚いて私は電話を切ってしまった...。
何か迫る雰囲気を感じた私は一旦呼吸を整える...。
もう一度、覗き穴を確認すると夢美Bの姿はなかった...。
なぜ夢美Bが訪問してきたのか理由は分からなかったが、恐らく何かしら邪魔しに来たのであろう。
その夜寝ていると、何か気配を感じた。
枕元には夢美Bが立っていたのだ...。
「あんたは一生バカンスしてればいいんだよ。私が働くから」
「そのかわり...」
と言って消えてしまった。
「そのかわり...」って何だろ?
数日間その意味を考えていたが、結局分からず終い...。
私は藁をも掴む気持ちで魔美に相談してみた。
そこで、ピンチを脱するための解決策を教えてくれた。
それはかなりのリスクがあるやり方みたいで、それをやるのは本当のピンチの時だけだと彼女から釘を打たれていた。
そして、ついに答えが分かる日がやってきた...。
最近は彼と夕飯を一緒に食べるようになった私は、帰りが遅くなる彼のために夕飯を作らなきゃ!と、楽しみに帰宅しようと家路を急ぐ...。
自宅前に来た所でリビングの窓から灯りが漏れているのが見えた。
彼が先に帰ってきたのかな?
でも今日は遅くなるはずなんだが...。
玄関の鍵を開けようとすると何だか料理の匂いが。
家の中から謎の鼻歌が聞こえてくるんだけど...。
そっと外からリビングを覗くと、
料理しながら夢美Bが鼻歌を歌っている様子が見えた。
鼻歌は私もよくやる癖だ...。
やはり私の生活を奪う意味の
「そのかわり...」なのか!
急いで玄関の鍵を開けて中に入る...!
するとキッチンに居たはずの姿がない...。
私が来たから消えたのか、料理途中の火も付いたまま...。
どうやら姿を見失ってしまったみたいだ。