幽体離脱に意思。
[第4話] 幽体離脱に意思。
私はもう一人の自分に対して恩返しするように幽体離脱した後に立場を変えてみる試みを始めてみた。
何を隠そう、もう一人が意志を持っているかもしれないという疑念を確認するために...。
〜ここからは本人を[夢美A]。もう一人を[夢美B]と呼ぶことにする。〜
きっかけは3ヶ月が経ったある日のこと。
仕事が忙しくなると、疲れを癒す時間が足りない事に気付いた夢美Aは夢美Bに働いてもらう形で心身を癒す旅に出掛ける事にした。
それは日に日にエスカレートしていき、気付いた頃には夢美Bが8割型働く状況になっていた...。
夢美Aは完全に甘えて休み過ぎていたのだ...。
そんな過ごし方をしていたある日、寝ていると、自分と同じ姿をした夢美Bが夢に出てきて、「上手くやろうね!」と言われて目が覚める...。
「そうだね...」
「上手くやらないとね...」
この時は理解できなかったが、まさに夢美Bが意志を持ち始めた瞬間であることを認識したのだった。
その経験から夢美Aはその日を境に立場を逆転してみる思いに駆られたのである...。
あの時、「あ〜、これでずっとこのまま一生バカンスできたら一石二鳥、いや一石三鳥。素晴らしい」
「しばらくは楽をして過ごそうかな」
と、そんな事を口にしていた自分が恥ずかしく思えた。
それ以来、幽体離脱をした後に恩返しをするが如く仕事に向かうようにして、夢美Bにはリフレッシュの旅に出掛けてもらうようにした。
夢美Bが意志を持っているのを認識しているだけあって、負担を掛けるわけにはいかないのだ。
数日後、また夢に夢美Bが出てきて、「楽しいバカンスだったよ。疲れたらまた交代してあげるね」
予想外に自分が生み出した存在にも関わらず上手く共存していることに喜びすら感じていた。
このまま2人で協力すれば、これからも、上手くやっていけそうだな...。
そんな彼女(達?)はとても幸せであった?
仕事とバカンスも両立出来て幸せと思えた日々に妙な変化が出て来た。
またもや夢に夢美Bが現れて、
「早く休ませてよ」と。
何で夢に出てきたかその時は理解できなかったが、実は夢美Aはバカンスしている一方で夢美Bを仕事場へ放置したまま過ごしてしまっていたのだ。
取り返しがつかない事を知った上で、夢に出てきたことを魔美に相談してみた。
「それは独り歩きだよ」
「夢に出るなんて、相当ヤバイよ」
「裏切られないように気をつけてね」
と言われた...。
いつもは幽体離脱は当日に戻していたが、なぜか気付いたら、注意事項を破り、3日以上放置してしまっていたのだった...。
いつから放置していたのか忘れるくらい月日が経ってしまっていたのだ。
でも、存在としては自分と同じだから気にすることはないね。
夢美Bを休ませて立場を変えたいけど、放置した夢美Bを今更戻すなんて無理。
「このままでいいや」
今までを振り返ると確かに自分はバカンスばかりだったと少し悔やんだ。
思いに変化もありつつ、幸せ?な日々も半年が経とうとしていた。
放置した夢美Bは裏切られることなくコントロール出来ているから心配ないと思い、普通に仕事に向かう夢美A。
だが、出社しようと歩いているといつもと雰囲気がと違う。
もう一人の自分が明らかに会社に向かって歩いている。
やはり独り歩きしているのか?
念は思い通りに伝わっているはずなんだが。
やはり、アニメみたいに裏切られるのか?
念が伝わっているのはただの思い過ごしか?
でも自分には変わりないんだから
妙な事はしてない筈。
その日は会社には来ず、どこかへ姿を消した。
しかし明日の行動が心配だ。
「どうしよう...」
ある日、帰宅して風呂に入り、テレビをつけると、インタビューを受ける自分の姿が!!
取材された覚えないんだけど。
その瞬間、恐怖を覚えた。
ニュースでは会社での不正が発覚して夢美BがTV取材を受けているのだ。
自分の事だが自分じゃない気がして、気にも止めなかった。
もう一人の事だし何とかなるだろうと思っていた。
だが、社会的には夢美がAであろうと Bであろうと夢美であることには変わりはない。現実には、そうも言っていられなくなり、夢美Aにも取材の嵐が。
実は不正の内容というのが、隠れて夢美Bが売上を横領する疑惑が発覚。
憎しみの思いを巡らせたが、夢美Bを何とかしないと夢美Aの立場が危ない。
確かに夢美Bを放置した上、負担を掛けてしまっていたから自分にも責任はあるから憎んでいる場合ではない。
しかし、その思いとは裏腹に夢美Bは知らない所で本当に独り歩きしており足元の存在の色が段々と濃くなっていった。
「このまま放置しては本当に危ない」
窮地に立たされた私。
果たして生き残るためにどんな選択をするのか?