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人が壊したこの世界で  作者: 鯖丸
第一章 『 かみを統べる者 』
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002:高額契約成立

毎年緩やかに発展を続け、もう少しで"田舎"という印象(レッテル)を物色出来るであろう場所。

それが俺たちの住む【ウィルキー】という都市部から離れ、山と草原に囲まれた故郷であった。

時代は常に発展している、かつてはここにも多くの何でも屋の組合(ギルド)があった。しかし、町の発展。特に役所の設立、そこから派生し生まれた治安維持や魔物の襲撃に対する防衛などを生業とする【騎士団】の結成によりギルド(ソレら)はその職を追われ次々と廃業に追い込まれていったのである。

それも当然であろう、魔物の討伐などを依頼(クエスト)として受注しそれぞれに報酬金を必要とする何でも屋(ギルド)と町が給与を払う事で市民に無償で安全を約束する【騎士団】。どちらが支持を得るかなど考えるまでもない。

今の時代、昼から酒を煽り呑んだくれ、必要な時だけ命を賭して闘うといった絵に描いたような冒険者などもはやどこにも存在しないだろう。


世は大・社畜時代!!働け大人たちよ!!!


そんな情勢の中この町で唯一残った何でも屋(ギルド)尖鋭(ノクシッド)の翼】。それこそが俺たちの所属する場所であった。とはいっても、そこに登録されている冒険者は自分を入れて10人にも満たない程である……


しかし、かつては隣町にまで名を広めたと言われているだけはありウチのギルドの拠点は100人は入れるであろう広いロビーと上階には職員達が宿泊出来る各室や食堂と、その繁栄をそのままに残している。最も今そこを活用するのはほんの僅かともはや寂しさを感じられるがそれは仕方がない事だろう。


そんな町の中心、役所のすぐそばにある拠点二階、客室用室内で呼び出しを受けたオレこと、カイル。そして幼馴染の二人は来客用にと綺麗に手入れされたソファーに腰掛け、その前に設置されたテーブルに並べられている依頼書(クエストカード)へと目を通していた。

対面で腰掛けている依頼主は、28歳という若さで【騎士団】の団長の座を手にする女性ーーイヴリン・アンジュリーナさんであった。非番の隙にやってきたのか、いつも身に付けている、各所にプレートを施した騎士衣装ではなく、シワのない綺麗な青シャツにズボンとラフな格好であるはずだが、その整った顔つきに勝気なキリッとした目。金髪のポニーテールは町で知らぬものがいないだろう団長の風格をそれでもかと醸し出している。


「 みんなこんな時間にすまない。書類に記載している通りだが町の外れに多数の【ワンガルド】が確認された。明日の昼に我々騎士団はその魔物の殲滅作戦を開始するが、知っての通りウチの団員達は戦闘経験も浅く、このまま作戦を決行すれば高い確率で怪我人、最悪の結果犠牲者が出る事も考えられる。そこで君たちの力を貸して欲しい。本来いないハズの魔物が突然現れた事も気にかかる、君たちには騎士団の作戦が始まる前に魔物殲滅、あるいはその対処と調査をお願いしたい。もちろん突然の申し出に加え、危険もある討伐依頼(クエスト)だ、それなりに高額の報酬金を支払おう。どうだろうか? 」


手にしていた書類を机に戻し、イヴリンさんが座るソファーの後ろでそわそわとしている受付嬢へと視線を送る。


「 あっ、責任者(マスター)からの許可は得ています。カイル君の判断に任せると言ってました。 」


ふむ、となると慎重に考える必要がある。

狼型群列タイプの魔物【ワンガルド】。高い機動性と繁殖力を持つこれはその群れの個体数によって危険度が大きく変わる。

書類によると今回現れた数は約30。本来であれば危険度は銀4(シルバー・テッセラ)級だ。少なくとも3人編成のパーティーで挑むレベルではない。しかし、記載されている情報の通りならこの状況は簡単にひっくり返せるかもしれない。

隣に腰掛ける幼馴染に視線を移し、質問を投げる。


もしこの依頼を受けるなら、彼女の力は絶対不可欠だ。


「 ルイス、どうだ?試してみる価値はあると思うが 」

「 う〜〜ん……確かにこの数なら"いる"と思うわ。うん、大丈夫!! 」


それを耳にリースも「よし」と喝を入れるかのような声をあげた。3人の意見が合致した事を確認し、イヴリンさんへと視線を戻し力強く言葉を口にする。


「 この依頼受けさせて頂きます!よろしくお願いします 」

「 依頼しておいてなんだが、無茶だけはしないように。みんなも気を付けてくれ 」


手を差し出す彼女と契約成立の握手を交わす。

騎士団が動き出すのは明日の昼。となれば今日は身体を休め明朝に依頼(クエスト)を開始すべきだろう。

拠点を後にする彼女を見送った後、一旦書類のことは忘れ、それぞれに準備を始める。


やれやれ、明日は忙しくなりそうだ。


満点の空に一つ浮かぶ月を見ながら、今日で何度目になるのか深いため息が漏れたーーー



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