第2章 第37話 光が届かない部屋なら幼馴染と壁をぶち壊せばいい。
恋はそんなに簡単じゃない。
付き合う直前に別れる事も、別れた後に付き合う事もある。
見えない糸は常に誰かと繋がっている。
その糸を自分に引き込めるか、運命の綱引きはすでに始まっている
甘いシロップに魅せられたその先には、氷があるなんてみんな知ってたのに。
大輝たちは教えてくれていたのに。
二人の言葉を無視して傷つけたのは私なのに。
どうして私を見捨てないの?
どうして...私の声が届くの...。
「紗季。大丈夫か?ケガはしていないか...?」
先ほどの勢いとは裏腹に優しい大輝の声が私、篠原紗季の耳に届く。
「う、うん。で、でも三木君が...!!」
「大丈夫。三木ならバスケ部のやつが保健室に連れて行ったよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は緊張でせき止めていた涙が溢れ出した。
先輩への恐怖。
甘い言葉にひっかかり本当に心配してくれている人を信じれなかった自分。
そしてなにより、大輝と三木君への罪悪感。
すべてが混ざり合ってただ涙となって溢れ出す。
「大丈夫。大丈夫だよ。怖かったな、よくがんばった」
大輝の大きな腕の中で、すこし汗のにおいがする――でも落ち着く――胸に沈んで私は泣き続けた。
すこし落ち着いた私は、三木君にも謝りに行った。
ただひたすらに「ごめんなさい」という言葉に自分の持てる気持ちを全て載せて。
普通なら許してくれない、ううん。許さないのが普通だと思う。
だって、三木君は助けようとしてくれた。
でも私は冷たい言葉を発して三木君を傷つけた。
それで許してもらおうなんてむしが良すぎる。
でも……
「篠原さんが無事ならそれでよかったよ」
すこし照れくさそうな笑顔で、君は私を許して言葉をつづけた。
「でも……。その代わりなんだけどさ。紗季ちゃんってよんでもいいかな?大輝君みたいに」
「そ、そんなこと……」
また世界が揺らぐ。
たまった感情が溢れ出しそうになる。
「いいにきまってる」
その声は私にも聞こえない声だった。
小さな、小さな声。
「ありがと。紗季ちゃん」
なんで聞こえちゃうの。
こんなに小さな声なのに。
なんで君には私の声が届いちゃうの……?
「ちゃん付けは……恥ずかしい。呼び捨て……でいい
また蚊の鳴くような声で私は言う。
それでも君は、
「りょうかい。紗季だね。これからよろしく」
「よ、よろしく。りょ、良太」
大輝以外の初めて男の子を下の名前で呼んだ。
いつもとは違う、眼鏡をはずしたかっこいい男の子の名を。
――――――――――――――
話し終わった紗季の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
大輝と良太は優しいまなざしで紗季を見つめる。
遥は無表情――というわけではないけど、真剣な面持ち。
風香は、紗季と同じく涙を浮かべている。
俺、海原雄志は自分自身どんな顔をしているのか正直わからない。
ここに居る六人全員が次の言葉を探していると、ゆっくりと大輝が言葉を紡ぎ始めた。
「そのあと紗季は、人に強く見せるように、自分を大きく見せるようにふるまいだしたんだ。もちろん最初は大変だったけど、俺と三木が協力してな」
「うん。あの時は紗季すごい頑張ったんだよね」
優しい良太の声が終わるとともに静寂が戻る。
「あ、あの...」
静寂を打ち破ったのは風香の声だった。
「紗季ちゃんさえよければ私たちといるときは紗季ちゃんの楽に過ごしてほしい!だめかな...?」
楽にすごしてほしいというのは言葉の通りだろう。
俺たちの前で見せていたすこし男っぽい紗季も、昔のすこし気弱な女の子の紗季でも。
学校でコロコロ性格をかえるなんて難しいだろうから紗季の落ち着くほうで居てほしい。
「ありがとう……」
紗季から出た声は、いつもの覇気がある声ではなくて優しい、すこし甘い声。
「それでなんだけど、私から1ついいかな?」
これまで黙ったいた遥が声をあげ、みんなの視線が一気に集まる。
「今の紗季ちゃんの話を聞いて、1つ作戦が浮かんだの」
「「作戦?」」
俺と大輝の声が重なる。
「うん。もちろん紗季ちゃんがokならの作戦だよ。おそらく井島先輩はまだ紗季ちゃんに接触してくるそれを利用した作戦」
「聞かせてほしい」
紗季の言葉に覇気が戻る。
優しく、女の子の声だけどしっかりと芯がある声。
「生徒会でたまたま見つけだ情報なんだけどね。井島先輩って……」
前を向いた紗季に答えるかのように遥は俺たちに作戦を話し始めた。
今まで見たことない笑みを浮かべながら。
ずいぶんとお久しぶりです。
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