第2章 第33話 あの日食べたチョコレートは苦かったかもしれない。
チョコレートってたまに苦いのありません?
私、篠原紗季はあまり目立つ方ではなかったと思う。
周りのみんなとも話さないわけじゃないけどどこか一線引いて落ち着いた雰囲気だったのも目をつけられた原因だったのかもしれないと今では思う。
勉強はできないし苦手だけど運動は得意、そんな見た目とのギャップからか小学生の頃は男の子とよく遊んでいたけど中学に入ってからはあんまり男の子と話さなくなった。
いや、話してくれなくなったといった方が正解かも。
かといって女の子と急に馴染めるわけでもないしそんな理由ですこし孤立していたのを周りからは落ち着いた雰囲気だったと思われたのかもしれない。
そんな生活が続いてた中学2年生のある日、ある人から声をかけられた。
「君、これ落とさなかった?」
そう言われて振り向くと私のハンカチがその人の手の中にあった。
大事な花柄で淡いピンクの中にダリアという白い花が刺繍されたハンカチ。
特別な思い入れがあるわけではないけどお気に入りの1枚だった。
「あ、はい。ありがとうございます」
その人の目はなんだか見られなくてアスファルトを見ながらお礼を言った。
「えっと、ごめん。なんだか怖い思いさせちゃった?」
「い、いいや……」
私が緊張?かなにかわからないけどすこしおどおどしてたのを感じたのか心配そうにその人は顔をのぞかせてきた。
目線をずらしていたのに強制的に合わせられてまた視線を下げるけど緩んだネクタイと開いている第一ボタンの隙間に目線ととられそうになって今度は髪の毛に視線をずらす。
中学生なのにもう髪の毛セットしているのかな?なんだかそんな感じの髪。
「そんなに目線ずらさないでよ。あ、えっと俺は3年の井島雄大」
あ、聞いたことがある。
2年生の女子の中でもイケメンって噂を聞いたことがある有名人。
「私は2年の篠原紗季です。ハンカチを拾っていただきありがとうございます」
「ううん。それぐらいいいよ。紗季ちゃんね。よろしく」
「あ、よろしくお願いします」
なんだか流れで知り合いになってしまった。
その日から廊下ですれ違ったり、一人で歩いていると井島先輩に声をかけられるようになってしまった。
でも本音を言うと別に悪い気はしなかった。
もとから積極的に声をかけてくれる人のも幼馴染の大輝を以外いなかったし、話せる人しかも1つ上の先輩はすこしかっこよく見える中学生という年頃も災いしたのかもしれない。
初めは無視をしていたけどいつの間にか会釈をするようになり一言、二言と話す機会がだんだんと多くなった。
「おはよ」
とすれ違う時に聞こえた先輩の声に振り向いてしまったり。
部活で大活躍の人気者大輝とはそのときからすこしだけ話す機会も減っていった。
いろんな背景が重なり合って無意識のうちに私はすこしづつ先輩の姿を探すようになっていった。
そんな新しい風が吹き出したある日、隣の席の男の子が私にしか聞こえない小さな低い声でこうささやいた。
「泣きたくないなら、あの先輩とつるむのやめなよ」
たまたま席が近いだけのあんまり仲良くない人が他人の交友関係に口だすなよ、なーんて思ったけど言えないので私は全力の苦笑いをしながらたった一言その男の子に伝えた。
「ありがとう」
前書きの続き
カカオの%が高いやつ。ふつーのスーパーに売ってるやつでもたまに苦いのありますよね。でもその時苦いと思っても月日が経てば忘れてそのチョコレートが苦かったのか甘かったのかなんて忘れる人が多いと思います。
いや、チョコレートなんだから甘いって記憶が塗り替えられているかもしれない。
それって青春も同じ気がするんですよね。
あ、長くなったのでまた今度




