第2章 第16話 今日の放課後あいてますか?
青春を込めた小説です。
一歩一歩前に進むキャラクターの心情を書いています。
ランニング中の大輝と別れた俺は薄暗い校舎の中に入った。
生徒や教師とすれ違うこともほとんどない。
ただ隙間風のように吹奏楽部の演奏が校舎の中を通り過ぎる。
俺、海原雄志は昨日風香と別れ際に閉じたはずの罪悪感の蓋をすこしだけずらした。
俺の家に遥はよく来る。
ごはんをつくってくれたり、俺の作ったものを一緒に食べたり。
母親が家を空けるようになってからもうかなり立つのに、俺の家に遥を示すものはない。
いつも来客用の食器や余っている食器を使っている。
いつでも気が付けたのに、いや気がついてはいたが気にしていないかった。
遥のことはわかっているのに、いやわかったはずだったのに。
遥から俺に言うわけないのに。
そんなこと知っていたのに。
言わないからと言ってなんにも感じていないはずないのに……。
まだ昨日感じた気持ちの少ししか思い出していないはずなのに、すこし、またすこしと量を増やしながらこぼれ落ちる。
ゆっくりとためいきを漏らしているせいか、それとも夏の湿気のせいか空気が重たくて足を前に出すのさえおっくうになる。
大丈夫。
ごめんと言えるかはわからないけど、遥にあれを言うために脳内の中で何回も練習してきたんだ。
大丈夫。
「ふぅ」
生徒会室の前に着いた俺は大きく深呼吸をして扉を開けた。
「おはよう、雄志」
俺の足音に気が付いていたのか静寂の中、急にドアが開いたのにびっくりすることもなく遥はゆっくりと俺の方を向きながらそう言った。
「おはよ、遥」
挨拶を返した後に俺はいつもの席、遥の横に座る。
「遥いつもより早いね」
「そうだね。いつもは誰かさんを待ってるから」
「おい。それ俺のことだろ」
「心当たりあるんだ」
「いや、おれしかいねえし」
「どうだろね~」
あははと笑いながら、遥は目の前のPCに打ち込みながら会話を続ける。
「雄志こそ今日は早いね」
「まあ……」
口ごもりそうになった。
さっき決心した自分の気持ちにさえすぐに逃げようとする。
そのせいでこれまでの俺は何もできなかったし、過去の俺から前に進めなかった。
いつまでも過去に縛られて、それを理由にして俺は前に進まなかった。
あいつのことを忘れるなんてできないかもしれないけど、俺が前に進まない理由にはなるわけがない。
大丈夫。
すこしだけ目を瞑って大きく深呼吸をして、俺は答えた。
「遥に話があるんだ」
「え?」
ぽかんとした遥をみて俺はすこしだけ笑いそうになる。
だってここ最近で一番びっくりした顔してるし。
俺はもう一度ゆっくりと息を吐き出して、背筋をただして言った。
「今日の放課後あいてますか?」
ダンスを誘うように丁寧に優しく、小説の一文を語りかけるように。
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