第2章 第6話 ぎゅっと苦しい気持ちに気づかないふりをして
2週間毎日投稿です。
青春という儚く短いされど人生に強く残る時間をかければと思います。
「いや、なんか私あいつあんま好きじゃない」
私、篠原紗季は嘘をついた。
夏休み初日、応援団の練習であの人、いや団長に話しかけられて震えが止まらなかった。
さっき団長のもとに行った時も怖くて、前を見るのがやっとだった。
今の「私」で居るために、そして風香に強く見せるためにただ私は嘘をついた。
いや、厳密には嘘はついていない。
あの人とは知らない人のふりをしただけ。
好きではないし。ってか嫌いだし。
だから風香に嘘はついていない。
大丈夫。私は強いから。
そういって私は雄志たちのいる場からすこし足早に教室に向かった。
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「紗季……」
僕たちが、いや今度は僕が守るから。
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雄志君たちと別れて教室に着いた私、松原風香は紗季ちゃん、良太君とお昼ご飯を食べていた。
「あーこの暑い中夕方まで練習かよー」
そう言いながら紗季ちゃんは少し大きめの卵焼きをほおばる。
「確かに暑いな。紗季も風香ちゃんも水分補給しときなよ?」
良太君、紗季ちゃんの保護者みたい。
いっつも紗季ちゃんと大輝君の心配してる。
あ、でも今は私の心配もしてくれてるから……口のなかにあるもの飲み込んでっと、
「ありがとう、良太君。あとで自販機行かないと足りないかも」
「お、うちもいくー。良太も一緒に行こうな」
「うん」
会話が止んでご飯をもくもくと食べていると紗季ちゃんがいきなり大きな声を出した。
「あ!」
「どうした紗季」
「良太、風香、練習の後暇?」
「僕は暇」
良太君が即答する。
「えっと、私も暇だよ」
「お、よかった。なら二人ともあとで大輝の練習見に行かない?」
大輝君の練習……?
バスケ部の練習ってこと?
「どうしたの紗季?大輝の練習見に行くって」
「今度夏のおっきな試合あるらしいじゃん?それ見に行きたくて」
試合?えっと試合は見に行きたいけど今日の練習を見に行くって話じゃないの??
私の頭の中にはてなマークがいっぱい飛ぶ。
「いや、試合はわかるよ。僕も大輝の応援したいし。でも今日の練習見に行こって話はどこから出てきた?」
良太君ありがたい!聞いてくれて助かります!
「前に放送部の人と体育館の2階にいったんだけどそこからだとめっちゃ練習風景見られるんだよ」
「え、それいいの?僕らが入っても」
「んー多分大丈夫!」
「おい、風香ちゃんもいるんだぞ?」
良太君の言葉に紗季ちゃんもそっかーといって口をとがらせる。
いつもはすこし強気な紗季ちゃんも諦めたのかお弁当の具材を口に運ぶ。
紗季ちゃんは大輝君の練習を見に行きたかった?
どうなのかわからない。
だけど……
「私行きたい!……です」
すこし私にしては大きめの声を出してしまって恥ずかしくなった。
紗季ちゃんと良太君は目をまんまるくして私を見る。
応援団参加するっていったときとおんなじ目。
「え、えっと、風香ちゃん?紗季がいったからって無理に行かなくていいんだよ?」
「そうだぞ風香」
ううん、違うの二人とも。
私が大輝君の練習を見たいの。
いつも私たちの前では明るくて元気をくれて、さっき私が体調崩してたら走って駆け寄ってきてくれた大輝君の頑張る姿を見たい。
大輝君だけじゃない。
紗季ちゃん、良太君、遥ちゃん、そして雄志君。
応援っていうとすこし気恥ずかしいけど、私にこんなに楽しい学生生活を与えてくれたみんなに恩返しがすこしでもできるならさしてほしい。
私なんかが「がんばれ」って言っても響かないかもしれないけど、それでも言いたい。「がんばって」って。
努力を認められないのはとってもつらいことだから。
「えっとね、私が見たいの。ダメかな?」
心の中ではたくさんのことを思ったのに説明できないのダメだなぁ私。
「そっか!まあ、かわいい風香にそんなこと言われたら行くしかないよね」
「だね。練習おわったら3人で行こう。雄志と遥ちゃんはさすがに忙しいか」
「多分忙しそうかも。雄志君前に、体育祭と文化祭の会議が多すぎるって嘆いていたよ」
「うちの学校、体育祭と文化祭が近すぎるからなー」
「1か月離れてるかどうかだもんね」
「そりゃ生徒会大変だわ」
本当にすごい。
雄志君も遥ちゃんもすごい。
会長、副会長もいるとはいえ1年生たった二人で生徒会のお仕事頑張ってるなんて。
二人で……。
雄志君と遥ちゃん、だれがどう見てもお似合いだよね。
お似合いだよ。
でも……でも……私も……。
「紗季、風香ちゃん、そろそろ自販機よるなら移動始めよう」
「おっけー」
「う、うん」
気が付いたら紗季ちゃんと良太君はお弁当をすでにしまっている。
私はあわててお弁当をしまって練習の準備をした。
「風香ちゃんいくよー」
良太君と紗季ちゃんが教室のドアを出たところで待ってくれている。
飲み物とタオルとお財布をもって私は教室を後にした。
ぎゅっと苦しい気持ちに気づかないふりをして。
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