第1章 第16話 「そのときはその時かな?」
「海原雄志君、生徒会に入りませんか?」
そう言い終わった会長は次の言葉を発さない。また生徒会室を静寂が包み込む。
夏のうるさい外の音に対抗するかのように動いている。音は確かにあるはずなのに俺の耳には届かない。
あまりにも突然でなんの前触れのない言葉にさすがの遥も目を見開いている。
俺は一度目を瞑ってゆっくりと目を開けて、
「すみません、話が見えてこないです。もうすこし詳しく理由などを聞きたいです」
というと会長もその言葉を待っていたようにスピーチのように話し始めた。
「今、生徒会は人手不足です。生徒会長の座を争って負けた派閥は生徒会から去るという習慣のせいで今生徒会にいるのは私、副会長、新見さんだけです。足りないところは友人たちに手伝ってもらっていますが頼ってばかりにもいられません。そこで後輩の中で部活に所属していない優秀な人を探した結果、海原君に行きあたりました」
なるほど。確かに言っていることはわかる。
ただでさえ忙しいといわれる生徒会を3人で回すには不可能だ。だけどまだ宮前先輩は会長に就任したばかり、だからこの発足から間もない今戦力を補強しようとしたのだろう。
「すみません会長、いくつか質問よろしいでしょうか」
「もちろんです」
「まず、第一になぜ僕なのでしょう。僕以外にも適任はいると思います」
「もちろん海原君以外の人物も検討しました。ですが部活に入っていない人で成績などから見極めさせていただきました」
「そうですか。しかし例えばですが同じクラスの松原さんも部活には入っていません。しかもかなり優秀だと思いますがなぜ彼女は選ばれなかったのでしょうか」
「松原さんももちろん考えましたが今生徒会は女子しかいません。生徒会は生徒の幅広い意見を聞きそれを先生方につないで協議する架け橋のような役目を持っています。その特性上男子の生徒も生徒会にいるべきだと判断しました」
「ありがとうございます、わかりました。もう1つ質問させてください」
「はい。なんですか?」
遥はやっと思考が追い付いてきたのかなにかを考えている。副会長は時折スマホをつつきながら終始髪の毛をいじっている。
「会長は何が目的ですか」
俺と遥はあまり言いたくないがビジュアルだけはいい。そのせいで学校での人気もあり遥に至っては性格まで最高だから俺が知らないところで多分めっちゃモテてる。
おそらくさっきの条件で絞れば俺以外にも数人候補はいるだろう。それをあえて俺にした。
「さすがだねー、かいはらっち」
いや、副会長かいはらっちてなんですか。まさか俺のあだ名ですか?
ギャルコワイムリ
まあ、俺の予想は当たったてことか。
「目的ですか……。今はまだお話できません」
「私にもですか?」
遥も気になるのかやっと会話に参加してきた。
「そうですね、新見さんにもまだお話できないです。ですがお二人の力が必用になったときまたお話させてください」
何を企んでいるのだろう。頭がいい会長はおそらく俺の思考では想像つかないことだろう。
いや、その前に生徒会入るかどうしようか。
確かに今は部活に所属していないし、正直部活動は苦手だ。誰かと絶対に話さないといけないのは苦手だ。
正直今はまだ決めかねる。風香や篠原さんたちとやっと仲良くなれたのに生徒会のせいで時間が取れなくなって距離ができてしまったらどうしようか。
でも遥と近くに居られるのはうれしい。学校での遥の助けにもなれそうだし。
「すこし考えさせてください」
これしか今は言えない。どっちも大切でどっちもやっとつかんだものだから。
「もちろんです。もし生徒会の活動の見学をしたければいつでも言ってください。待ってますね」
「はい、ありがとうございます」
ガラガラ
俺と遥が教室から出ると熱風が襲ってくる。
「よく頑張ったね、雄志。よしよし」
頭の上に優しい感触が乗る。ちょっと落ち着く。
「恥ずかしいからやめろ。誰かに見られたらどうすんの」
「そのときはその時かな?」
「そんなわけにもいかねーだろ……」
人通りが少ないこの廊下は昼でも電気がついていないので薄暗い。
汗が止まらないこの暑い廊下を俺たちはいつもよりゆっくりと歩いて行った。
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「ゆうくん~!!なんで気が付いてくれないの!私はちゃんと覚えているのに!」
「はいはい、望。よしよし、いーこいーこ」
「なーぎーさ~」
「望の太ももやわらかい~。すべすべ~」
「変態か!」
「イケメンなのに陰キャすぎて幼馴染としか喋れません」連載中です。
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