ボツにした素人作品①
冷原です。
今回は前回でお話しした通り、恥ずかしいですが、ボツにした作品を載せます。
正直、ボツにした作品は扱いが困っていました。
いくらボツにしたとしても、私が試行錯誤して書いた作品なので、愛着みたいなものが湧いてしまい、消さずに残していました。
しかし、ボツにしたのだから、発表出来る場は基本ありません。
ですから、いっそのこと消してしまおうとも考えていました。
そんな風に消すか消さないか悩んでいましたが、前回の手記を書いている時に、この場を借りて載せる事を考えついたのです。
ボツにした作品を載せる事に抵抗や恥ずかしさはありますが、やはり愛着を持っている作品でもありますし、前回でお話しした成長の確認もあるので、この場を借りて載せさせて頂きます。
ボツとはいえ、私が愛着を持っている作品を載せられる事に深く感謝致します。
ありがとうございます。
♢ ♢ ♢
それでは、ボツにした作品を載せますが、初めにお断りしておきます。
起承転結などはありません。
物語のプロローグ部分しかありません。
中途半端に終わります。
加筆修正もほぼしていません。
上記の通り、稚拙な作品となっておりますので、過度な期待をしないで下さい。
自分でいうのもなんですが、本当に面白くないですからね?
では、始めます。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
第1話 初恋の人
「いらっしゃいませ」
入退店チャイムが鳴ったので俺は挨拶をした。
俺の名前は高橋凌。
フリーターで深夜のコンビニバイトで生計を立てている。
今まさに仕事中。
入ってきたお客様を確認して、行っていた作業を中断しカウンターに向かう。
自己紹介の続きを。
身長、体重は共に年齢平均。
会社の健康診断でも異常なし。
顔は整っている方だと思う。
俺の母親が言っていただけで、自分で自分をイケメンだとは思っていない。
髪型は坊主にしてそこから髪が伸びている状態。
中学生の頃まで野球をしていた為に髪が短いのに慣れてしまった。
さすがに坊主にはもうしない。
けど髪が短い方が楽なので、これ以上伸ばす気もない。
カウンターに入り、レジの前に立つ。
お客様を見るとカゴを持ち商品を選ばれている。
自己紹介の続き。
24歳、独身、交際経験なし。
おっと、早とちりはいけないよ?
童貞じゃないからな?
風俗に入った事がある素人童貞だ!(どや)
風俗はたまに行く。
男の子ですから。
お客様が品物を決めてこちらに移動しようとしている。
いかん、煩悩を振り払わなくては。
目を閉じて深呼吸する。
「スゥ~」
「ハ~」
目を開けてお客様を確認する。
お客様がいらっしゃっり、目が合った。
俺はごく自然に接客を始める。
「いらっしゃいませ」
「ポイントカードはお持ちですか?」
「合計で1960円になります」
「ありがとうございました」
定番の挨拶を口にしてお客様を見送る。
入退店チャイムが鳴り、お客様が店から出て行った。
出て行った、という表現は接客業として正しくはないのだが、そんな事は気にしない。
何故なら心の内で何を考えていようと、露見する事はないからだ。
だいたい、お客様と呼ぶのも好きではない。
あくまでも買い手と売り手の関係であって、そこに上下関係は必要ないはずだ。
買い手は欲しいから買う、売り手はそれを売り利益を取れるから商売しているのである。
お互いに持ちつ持たれつだ。
一定の礼儀は必要だが、過度な接客は必要ない。
「ふぅ…」
そんな事を思いながら、一息つき店内に目を向ければ、人の姿はなかった。
それを確認してからレジから離れて途中で止めていた品出しの続きを開始しながら、さっき会計した時に確認した深夜2時という時間を思い出しながら、黙々と作業に取りかかっていった。
♢ ♢ ♢
朝7時。
「おはようございます」
出勤してきた朝のスタッフ達に挨拶をする。
「「おはよう」」
と2人とも挨拶を返しながら、カウンターに入ってくる。
1人目は身長が160cmくらいで少しふくよかな体型の中年の女性。
石川幸代さんだ。
頭髪に若干の白髪が覗いており、印象としてはお母ちゃんというのが近いと思う。
性格もお喋り好きで世話焼きなので、まんまお母ちゃんである。
そしてもう1人の方が、石川さんの夫である、石川甚五郎さんだ。
歳が幸代さんの8つ上で、今年で68歳である。
甚五郎さんは幸代さんに比べればスリムであるが、白髪が頭髪の半分以上を占めている。
もちろん白髪は年齢相応の物なので気にはならない。
この人も幸代さんと一緒で世話焼きで、俺の事を気にかけて可愛がってくれている。
まさに昭和の時代にいそうな、近所の優しいご年配夫婦だ。
「何か引き継ぐ事はある?」
「ありません」
「そう。それじゃあ今日もご苦労様でした。
ゆっくり休んでね?」
「はい、お疲れ様でした」
「お疲れ様」
幸代さんに返事をして、仕事終わりの挨拶を口にする。
俺の挨拶に甚五郎さんも挨拶を返してくれた。
俺はそれを聞いてからカウンターから出てバックヤードに向かった。
バックヤードで着替えを済ませる。
と言っても上に着ているコンビニの制服を脱ぐだけであるが。
着替えを済ませ荷物を持ち、バックヤードを後にして、店内からマンション内のエレベーターホールに続いている出入口を通る。
俺が働いているコンビニは、俺の住んでいるマンション一階に立地しているので、最高の職場環境である。
エレベーターに乗り俺の住んでいる302号室前まで歩いきて、鍵を開けて部屋に入った。
俺の住んでいる部屋は2DKだ。
玄関を上がるとリビングがあり、右手に脱衣場とバスルーム、左手に台所だ。
リビングの奥がベランダに通じている。
ベランダの右側手前にある部屋が寝室だ。
俺は玄関を上がりリビングのテレビを着けた。
テレビではニュース番組をやっていた。
流し目でニュース番組を観ながら、着替えを始める。
「?」
ふと、テレビに写っている女性が気になった。
その女性はニュース番組の進行役の補助係みたいだ。
今も進行役の隣で資料を読みながら、適切なタイミングを待っている。
進行役の男性が次のニュースに移るようだ。
隣でタイミングを待っていた女性は顔をカメラに向けて、次のニュースを口にする。
「次のニュースは……」
初恋の人だ。
俺の初恋の人だ!
まさに今カメラに向けて喋っている女性こそ、俺の初恋の人、七瀬フローレンス遥だった。
♢ ♢ ♢
第2話 「昔の自分」と今の俺
七瀬フローレンス遥。
名前が特殊である。
彼女はイギリス人と日本人のハーフだ。
ハーフだけあって、非常に整った顔立ちをしている。
肌はやや白くて、鼻は高く、瞳はブルーアイ。
髪は少し黒が混じっている金髪であり、長さは腰に届くぐらいまである。
体型はスリムで、足も長い。
身長も160cm以上だ。
とても画面映りはいいだろう。
テレビに出ていたのは彼女で間違いなかった。
番組の出演者の一覧に名前が載っていた。
かなり驚いたが、冷静に考えればそれほど不思議な事ではなかった。
彼女は約5年前から女性雑誌のモデルとして活動していた事を、俺は知っている。
おそらくニュース番組の会社からオファーがあったのだろう。
七瀬とは小・中学生の時に同級生だった。
当時も可愛かったので、学年可愛い子ランキングでも常に上位にいた。
当時の俺が恋したのも当然といえるだろう。
俺の初恋の人だ。
違うな。
正確に表すなら、「昔の自分」の初恋の人だ。
今の俺と「昔の自分」は別人だ。
外見上の事ではなく、精神的な事だ。
「昔の自分」とは、中学生までの俺の事だ。
当時の自分を一言で表すなら「馬鹿なガキ」だ。
学力は学年で下から数えた方が早く、精神的にも子供で、一般教養も不足していた。
赤ちゃんは女性のお腹から生まれるのだと、当時の自分は本気でそう
思っていた。
自分で言うのもなんだが、本当に馬鹿な奴だった。
だが高校に入学してから様々なきっかけがあり、そのおかげで今の俺の下地が出来ていった。
ラノベにハマり、小説に夢中になった。
勉強のコツを掴むと、勉強が楽しくなった。
最終的には学年1位を取り、高偏差値の大学に合格。
オタク文化にも詳しくなり、見事オタクにもなった。
その他にゲーム、映画、スポーツなど興味のある事は何でも経験した。
なので比喩ではなく「昔の自分」と、今の俺は別人だ。
実際に中学生の同級生達と会った時は、かなり驚かれた。
そのような過去があるので、今の俺にとっての七瀬は「昔の自分」が初めて恋した女性というわけだ。
今の俺が恋したわけではない。
だから俺は七瀬に恋していない。
……そう言い切れる自信はなかった。
何故なら七瀬の動向はたまに確認していたからだ。
とはいっても連絡先や住んでいる場所は知らない。
成人式に参加した時に小耳に挟んだので、インターネットで活動を確認していただけだ。
今回のテレビ出演は知らなかったが。
俺は今でも七瀬が好きなのだろうか?
……分からないな。
この様な自問自答は俺の癖みたいなものだ。
自問自答する事が、もはや俺の趣味の1つみたいなものである。
俺は高校を卒業後、都内の高偏差値の大学に入学した。
大学の決め手に選んだのは、哲学科があるかどうか。
高校の時に読んだ本がきっかけで、哲学に興味があったのだ。
約1年学んだが、俺が望んでいたのとは違ったので中退した。
哲学と聞くと難しいイメージがあるかもしれない。
実際に俺が大学で学んだのは、そのイメージ通りのものだった。
哲学を学門として学ぼうとすると、どうしても小難しい内容になってしまう。
だから俺は大学を中退して、哲学を学門として学ぶ事はやめた。
俺が求めていたのは学門の哲学ではなくて、ただの哲学だ。
この2つは、まったく異なるものであると俺は思っている。
ただの哲学とは、様々な事柄に対して自問自答する事だ。
俺はそう考えている。
例えば、「国とは何ですか?」と自分に問いかける。
答えられるなら答えてもいいし、分からなければ分からないでいいのだ。
分からないという事が分かったのだから。
これこそが俺の考えた、ただの哲学である。
学門の哲学は小難しい。
だが俺の考えた哲学は違う。
自問自答する事。それだけ。
俺は今日も、趣味の自問自答をする。
答えられないと分かっていながら。
恋とは何ですか?
好きとは何ですか?
愛とは何ですか?
♢ ♢ ♢
第3話 休日
「ピ」
「ピピ」
ん?
「ピピピ」
う~ん?
「ピピピピ」
……目覚ましか。
……止めねぇとな。
「ピピ」
俺は左手で目覚ましを止めた。
「ふぁ~ぁ~ぁ~」
体を起こして目を擦りながら大きなあくびをする。
目覚まし時計は午後21時を示している。
「起きるか」
俺は布団から出る。
俺の寝室にはベッドがなく敷き布団で寝ている。
布団から出た俺は、そのまま脱衣場の洗面台に向かった。
洗面台で顔を洗い、リビングで食事の準備を始める。
食事の準備といっても寂しい男の独り暮らしなので、選択肢は出前か冷凍食品、即席麺ぐらいしかないが。
うん、冷凍食品にしよう。
冷凍庫を開けて、何を食べようかと思案する。
冷凍ピザに決定する。
俺は冷凍ピザを電子レンジに入れて、温めのボタンを押した。
普段仕事があった日はコンビニの廃棄賞品を貰ってくる。
今日も貰ってきたが、それは帰ってきて寝る前に食べてしまった。
今日は帰ってきて、七瀬が出ている番組を偶然にも観てしまい動揺してしまった。
なので早く寝てしまおうと考えて、シャワーを浴びて職場のコンビニから貰ってきたお弁当を食べたのだ。
そしてそのまま布団に入り、七瀬の事を考えたり、いつもの自問自答をしていたら寝てしまったというわけだ。
俺は深夜のコンビニで働いているので、必然的に夜型の生活サイクルだ。
朝の7時過ぎに仕事から帰ってきて、夜の21時ぐらいに起床。
そして22時の10分前に家を出てコンビニに出勤する。
仕事の日は出勤する前に食事をしない。
食事をする時間があるならその時間分、寝ていたいからだ。
つまり今日と明日はお休みである。
ありがたい事に、俺が働いているコンビニは連休でお休みが出来る。
どうしてもシフトが埋まらない時は1日休みを別々に取るが、それは稀な事で大半は連休でお休みが出来るのだ。
これも経営者である愛川店長のおかげである。
"チーン"
温めが終わった。
冷凍ピザを電子レンジから取り出してリビングのテーブルに置いて座り、テレビと録画レコーダーの電源を入れる。
俺は録画した番組の中から、異世界転生系のアニメを再生し、冷凍ピザを食べ始めた。
しかし、最近は本当に転生系のアニメが増えたな~。
俺も嫌いではない。
むしろ好きな方だ。
剣と魔法の世界とか、めちゃめちゃロマンである。
男なら、一度はそういう世界で活躍する自分の姿に憧れると思う。
俺も剣を振り回したり魔法を使ってみたいぜ。
でもな~。
英雄とか勇者とか魔王とかには興味ないんだよね~。
世界を救うとか、滅ぼすとかは実感湧かないな―。
もし俺が転生したらどうするんだろう?
う~ん。
分かんないな~。
まあ、本当に転生した時に考えればいいか。
俺は異世界転生を完全なフィクションだとは切り捨てていない。
何故なら、死んだ事がないからだ。
死んだ事がないのに、死んだ後の事なんて分かるはずもない。
だから俺は思う。
死んだら、異世界転生してみたいと。
撮り溜めていたアニメを観終わったので、俺はテーブルから離れて立ち上がり、食事の後片付けを始めた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
以上で終わりです。
読んで頂き、ありがとうございました。