12.ボツにした素人作品④
ボツにした素人作品③で、多分今後ボツ作品は生まれないでしょうと言ったにも関わらず、生まれてしまいました……。
ごめんなさい!
ボツ作品ですので、内容が起承転結しておりません。特に後半部分が穴ぼこ状態です! 話の展開が破綻しております! それでもよろしければ、お読み下さい。
正直なところ、あまり面白くないと思いますので、ブラバ(ブラウザバック)推奨です。
では、どうぞ!(ブラバを!)
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短編:「夢」と「10億」の天秤
「運営からのメッセージはない……な」
私は「小説家になろう」にログインして自らのホーム画面を開いたが、結果はいつも通り。
いくつかの感想は届いていたものの、私自身が一番望んでいる運営からのメッセージは今日もなかった。
小説家になりたいという「夢」を抱いたのが30歳の時。
私自身が書きたい小説を自由に書いて、その作品で書籍化デビューをしたいと思い「小説家になろう」に登録した。
ユーザー名は「卯恵樹秋数」に決定。
由来は私の本名「上木彰一」から、単純に漢字を置き換えただけである。
昼はサラリーマンとして働きながら、少しずつ小説を執筆する生活。
創作は苦しく辛い時もあったが、私の作品にブクマや評価ポイントを頂いて嬉しかったし、感想などもすごく励みになり、なんとか今日に至るまでの3年間、小説を書き続けることが出来た。
そしてついに――私の作品が日間ランキング1位に載ったのだ!!
ランキングの効果は絶大で、瞬く間にブクマや評価ポイントが増え続け、先月の月間ランキング2位にも輝いた。
後は出版社の目に止まりさえすれば、私の「夢」は叶う!
叶う、はずなのだが……。
一向に書籍化の打診を知らせる、運営からのメッセージはやってきていなかった。
……狭き門なのは自覚している。
しかし――諦めるのはまだ早い。
何故なら私の作品は、完結していないのだ。
全体構想の4割ほどが残っているし、これから様々な伏線が回収されて、より面白くなっていくのだから……。
――そう。
――可能性は――まだ残っている。
自分にそういい聞かせ、私は「小説家になろう」を開いているページを閉じた。
――そうだ。今日はもう一つ調べものがあったな……。
私は新しくヤフーの検索ページを開き「年末宝くじ当選結果」と入力した。
普段宝くじなど買わない私だが、他にギャンブルなどもしないので、年末の宝くじだけは毎年買っている。
……もちろん、当選するとは思っていない。
いわば、ちょっとした「ロマン」を買っているのだ。
全部で5枚買ってきた宝くじの番号と、パソコンに表示されている当選番号を確認していく。
1枚目、ハズレ。
2枚目、ハズレ。
3枚目、ハズレ。
4枚目、ハズレ。
5枚目、ハズ……レ?
――ん?
――いやいや、見間違いに決まっている。
私は5枚目の宝くじの番号と、一等10億円の当選番号を、最初の数字から交互に1文字づつ確かめていく。
1 4 9 5 0 5 8 0 2 4 9 ――1
……当たって……いた。
――10億円が。
♢ ♢ ♢
……翌朝、私はほとんど眠れなかった。
――それもそのはず。
宝くじで10億円が当選して、普通に寝れるわけがない。
しかし、横になって一晩考えられる時間があったことで、これからの方針は決まった。
1。会社を退職する。
元々私は、お金に関しては自制心が強い。
酒と女遊びが好きだが、貯金は300万円あるし、例え10億円を手にしても散財しない自信がある。
なので10億円が当選した以上、今の会社で働き続ける意味はない。
生きる為に働いていただけで、働く為に生きているわけではないのだ。
2。誰にも口外しない。
莫大なお金は、人を狂わせる可能性を秘めている。
それは親兄弟恋人すら例外ではない。
……私に恋人はいないが。
頭の中で方針の反芻をしながら、身支度を整えていく。
10億円が当選したからといって、会社を欠勤するつもりはなかった。
急な体調不良でもないのに、仕事を休むのは非常識であるし、休むにしても10億円が当選したので……とは言えるはずもない。
ならむしろ出勤して、退職願を部長に提出し、1日でも早く会社を退職出来るよう――仕事を片付けていくのが最善の行動だろうと思う。
私はスーツに着替え終わると、出社の為に家を出るのだった。
♢ ♢ ♢
退職願が受理され2週間。
この2週間は、小説を執筆する時間を…取れなかった。
退職手続きや引き継ぎ業務。
取引先への退職挨拶に送別会。
さらには当選金の受け取り手続きをする為、銀行にも足を運び、無事に10億円が口座入金された。
これほど多忙な2週間は、初めてであった。
そして今日!
やっと忙しかった日々から開放されたのだ!!
これで私は自由!
痴漢冤罪に怯えながら、毎日満員電車に乗る生活から解放されたのだ!!
――さて。
仕事を退職し、10億円が入金されたら……最初にやることは決めていた。
それを実行する為に、家を出た。
♢ ♢ ♢
私が向かったのはキャバクラ。
行きつけの店ではなく、初見の店に入った。
♢ ♢ ♢
――天秤は成り立っていたのだ。
――しかし私は、
――天秤に「夢」を載せることすらせずに、
――「10億」を選んでしまった。
♢ ♢ ♢
――数ヶ月後。私は匿名でエッセイを投稿した。
そのエッセイには、私が小説家を目指していたこと。
宝くじで10億円が当たったこと。
小説の続きが書けなくなったこと。
お金に目が眩み、勢いで己の作品を削除してしまったこと。
削除した作品に書籍化の打診がきていたこと。
などの私が経験してきた体験を書き、最後に以下の文章で締めた。
――10億円が当たったら、小説を書きますか?
――書けますか?
――どんな選択をしても、恥ではありません。
――ただ……後悔のない……選択を。
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ここまでお読み頂いた方に、最大限の感謝を!
ありがとうございました!
……さすがに、ボツ作品⑤は生まれないと思いたい……。