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ワンチャンの女神  作者: 黒森 冬炎
ワンチャンの女神(全3話)
2/7

ワンチャンの女神(中)

魔術氏は誤字ではありません。





 姉のシャルルに対する敗因は、奴を身内と認識してしまった点でしょうかね。王様をオジキと呼んでも怒られない環境が仇となりました。シャルルは、正統派王族のお妃様に似ましたからね。格式を重んじる元隣国王女ですよ。


「ロゼリアさん、淑女らしく」

「ロゼリアさん、お口がすぎます」

「ロゼリアさん、女性と言うものは」


 独善的でしばしば間違っているシャルルに、ついつい嫌味を言う姉貴。お妃様が嗜めるものだから、シャルルが姉貴を嫌う気持ちに拍車がかかりましたね。


 私も王宮へ遊びに行きますが、お妃様には嫌われてます。お妃様は、多分王様の事もお嫌いですね。そんなそぶりは見せませんけれども。解りますよ。脳筋嫌なんですよね。



「クラウディアー!!!」


 なんでしょうか。悪役兄ィ。家のなかでそんなに怒鳴らないで下さいよ。従者とか侍女とかに呼びに行かせたら良いでしょうに。全く粗野で困ります。


 読みかけの本に栞を挟んで、取りあえず庭に出ましょうか。庭は外からは見えないけど、使用人も家族もそれなりにウロウロしています。そんなところでイチャイチャしているから、私は大して面白くもない本なんか読んで、引きこもる羽目になるんです。うっかり庭にも出られないんですよ。


 あらま。どなたでしょうか。脳筋じゃない風の男性がいます。ダークブロンドを緩く撫で付け、柔らかな菫色の瞳が程よく焼けた肌に映えています。彫りもあんまり深くない。家の脳筋どもみたいにガッツリクッキリ自己主張の強い顔ではないのが、なんとも落ち着く容貌ですね。ああ、和む~。


 兄ィ、この人をご紹介下さるのでしょうか。しかし油断はできません。人は見た目ではないのです。この人も、顔立ちは知的で穏やかだけど、体格が騎士ですね。怪しいです。



「よう、クラウディア!元気か?」

「ええ、ダグラスお兄様。お元気そうでなによりですわ」

「これ、親友のプラム・マッドドッグ」


 え。渾名ですか。しかし、どっかで聞いたような?


「こっち、俺のロゼリアの妹。クラウディアっての」


 俺のロゼリア。姉貴も否定しないですね。父もスルーしておりますよ。何か進展でもあったのでしょうか。


「はじめまして。プラム・マッドドッグ・ド・モーガンです」


 何ィィッ!

 ド・モーガン公爵ですと?いま世界的に最もホットな若公爵!魔物に一族郎党皆殺しにされて、単身リベンジした男。悲劇のヒーローですよ。しかも穏やか笑顔の紳士とは。海の向こうのお方が何故我が家に?あとマッドドッグは渾名ですか?


「はじめまして。クラウディア・スカイハートです」

「ふうん。君、飛びそうな感じだね」

「失礼、飛び、そう?とは?」

「体幹が云々」


 うぜぇタイプの脳筋でした。しかも魔術バカタイプです。最悪。はいパス。無理ですよ。


「あー、ゴメン。プラムさん。妹、興味無いみたいよ」


 ナイス姉貴。

 私は、結局マッドドッグが渾名か本名か知ることが出来ませんでした。兄ィもお見合い失敗を素早く察知して、適当に私を部屋に還してくれましたよ。


 でも、あんたたち、お友達の前でイチャイチャしてたんですね。気が知れないですよ。

 その晩、ダグラス兄ィとド・モーガン公爵は我が家に宿泊しました。明日からは兄ィの家に泊まるそうです。


「こいつらの婚約式まで、のんびり観光でもしたくてね、1ヶ月こっちに居ることにしたんだ」


 感じよく話しかけてくるウザ脳筋魔術氏。

 婚約、いつの間に決まったのでしょうかね。知らなかったですよ。


「正式に決まってはいない」


 あらそう。


「何だよオジキ。2人で決めたんだからいいだろ」


 だめでしょ。


「常識を弁えろ。お前は、本当に!」

「エドワード、だめよ、怖い声しちゃ」


 優しくも恐ろしい圧力が来ました。母上様でありますよ。


「そうかな」

「そうよ」

「お前がそう言うなら」

「お目出度いじゃないの。ダグ、兄上にもちゃんと知らせた?」


 母の兄上とは、ダグラス父、元第二王子、脳筋騎士団長、のことですね。


「ああ、言ったよ、アンバーおばさん」

「よしっ、アンバーおばさん準備張り切っちゃいますわよ」


 お母様……

 貴女にもやはり、騎士王子伯父上と同じ血が流れておりますね。


「ダグの家族は、本当に明るくていいなあ!」


 心の底から笑顔を見せるウザ氏。この人、つい最近魔物のせいで天涯孤独になったんですよね。


「ねえ、ド・モーガン公爵様は、どうしてダグと友達になったの?」


 母、切り込みますねえ。


「幼年魔術学校のサマーキャンプで仲好くなったんです」

「あら!そんな前から?ダグ、もっと早く連れて来ればよかったのに!」

「ライバル増やしたく無いんで」

「ダグ!あたしそんなにモテないから」

「いーや。言わないだけで」

「こら、2人とも、やめんか」

「はは。楽しいなあ」


 イチャイチャが?まあ、陰惨な経験しましたからね、この人は。人にもよるでしょうけれど、平和な情景に癒されてるのかもしれないですね。


「でもさ、ほんと早く連れて来てほしかったよ」


 何ですか。流し目やめて。


「ん?お前、クラウディア?まじ?」

「何だよ、自分で紹介しといて」

「いや、ロゼに来ないようにするだけのつもりで」

「ダグッ」

「ロゼ可愛い、赤くなってるー」

「やめんか!」


 早くデザート来ないかな~。


お読み下さりありがとうございました

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