「武術大会実行委員会からのお知らせです」 この手のお知らせってちゃんと読まないよね
作者が楽しみにしてた育成イベントの開始です・:*+.\(( °ω° ))/.:+
ここまで持ってくるのが大変でした
最後まで読んでいただければ幸いです
俺が学園に編入してから早二週間が経とうとしていた。
学園の授業にも慣れてきて、クラスにも若干馴染んできた・・・・と思う。
だが進展もあった。友達ができたってことだ。
「なあ昴、一緒に飯食いに行かないか?」
午前中の授業も終わり、昴に声をかける。
『ああ、構わないよ竜也』
昴から鮮麗な機械音声が聞こえてくる。
耳の聞こえない昴のような人とコミュニケーションをとるためのアプリケーションツール。
その名も「トークン」
その機能は多岐にわたり、チャット形式の通信はもちろん。打ち込んだ文字を音声発信でき、集音した会話を文章に起こす事もできる。
このアプリは既に俺たちの生活の一部と化していた。
「昴は何食うんだ?」
『僕はやっぱりお魚かな』
「またヘルシー料理かよ。そんなんじゃ大きくなれないぞ」
『君みたいにお肉ばっかりだと体壊しちゃうよ?』
「まあいいじゃないか。気にしたら負けだ!」
そんな普段通りのやりとりをしながら二人は食堂に向かった。
食堂に到着すると券売機に向かい、竜也は唐揚げ定食を昴はサバの味噌煮を購入しカウンターの職員に手渡す。
するとすぐさまお盆に乗った定食二つが二人の前に姿をあらわす。
それを持って空いている席を探す。
辺りを見回すと少し遠いが窓際の席が一つだけ空いていた。
「昴、あそこにしようぜ」
竜也がその席を指差しながら言うと『ああ』という端的な答えが返ってきた。
席に到着すると昴が通路側に座り、俺は昴と向き合う形で座った。
各々学食に舌鼓を打ちながら先程教員から伝えられた内容について話し合う。
「武術大会、竜也はどうするんだ?」
武術大会。それは学園が主催する一種のイベントである。
参加は自由、各自ソロ、デュオ、スクエアに分かれそれぞれ決闘を行うというもの。
「俺は出るつもりだぞ?なにせ実戦なんて久方ぶりだからな」
この武術大会にいてのみ学内で唯一星力の使用が認められる催しなのである。
「そういう昴はどうするんだ?」
画面を見た昴が素早くパネルを操作する。
『僕?僕はほらこの通り耳が聞こえないから、参加しないよ』
「そうか」
『ごめん』
「気にすんな。そもそも俺は最初からソロで出場するつもりだったしな」
たわいない会話を終えると各々食事を再開する。
それから数分が経った頃、二人の席の真上にある構内スピーカーから放送が入る。
『1年Aクラス星見竜也君、至急生徒会室まで。繰り返します・・・』
「ごめん昴、俺行ってくる」
昴は画面を見つめると微笑んで・・・
『僕のことは気にしないで、行ってきていいよ』
それを聞き届けた竜也は小さく頷くと食器を下げて足早に生徒会室へ向かった。
廊下に他の扉とはあからさまに違う荘厳な扉の前に竜也は立っていた。
扉の上には黒いプレートに金色で書かれた「生徒会室」の文字を見上げると、扉に向き直り軽く三度ノックする。
すると扉の内側から若い男性の声が聞こえてくる。
「入りなさい」
「失礼します」
重々しい扉を開けるとそこには三人の男性がコの字型並べられた机一つにつき一人ずつ椅子に腰掛けていた。
両脇の二人は職員室で見た顔だな。けど、中央のこの人は見たことないな。
竜也が彼らの前に立つと、中央の男性が口を開く。
男性は黒いスーツに身を包み、蓄えた白い髭を自慢げに撫でていた。
推定70代後半といったところか、じゃあさっき俺を呼んだのは左右のどちらかだろう。
「および立てして申し訳ない星見竜也君。私は武術大会実行委員長の大西天馬という」
いやお前かよ!しかもキラキラネーム!!
多少崩されたテンポを取り戻すために竜也は軽く咳払いすると中央に座る初老もとい天馬に視線を戻す。
「ところで、今回はどのようなご用ですか?」
「そのことなのだがね、去年の武術大会においてデュオとスクエアで優勝した生徒が二人いたのだよ」
そのことと今回の件になんの関係があるのか。そんな竜也の心中を知らず委員長は続ける。
「その二人の影響か、今年の武術大会のソロ出場者が君しかいないのだよ」
なるほどなるほど……ん!?
「えっと…それじゃあ俺は?」
「そのことで呼び出したのだよ。せっかく出場の意を表してくれたのに申し訳ないと思っているが、出場者が一人なのでは…な」
つまり今回の大会は出場できないのか!そんな馬鹿な、この大会を結構楽しみにしてたのに。
だって武術大会だよ?アニメなんかに出てくる体育祭みたいなやつじゃん!
「というわけで君には、デュオ若しくはスクエアでの出場を命ずる」
…………あー、そういうことね
瞬間、室内を静寂が支配する。
それは竜也によって強いられた静寂であった。
「任務なら仕方ねぇな。どうせ本部に引きこもってる糞爺どもの差し金だろ?」
「そうだ、ラスト…いや今は星見君だったな。これは本部からの辞令である。武術大会に参加し対象の評価を下せ。対象は…」
「昨年度優勝者の2名、だな?」
天馬の言葉を遮るようにして答える。
天馬も竜也の回答に肯定する。
「そうだ、資料は追って渡す」
「いらねぇよ、んなもん持ってたんじゃフェアじゃねぇしな」
「そうか?それは君の自由だ。ところでペアを組む相手の候補はいるのか?こちらで用意も出来るが」
しかし竜也はまたも拒絶する。
「それもいいわ。元々目をつけてたやつはいるしな」
「ほお、君が気に入った者か。とても興味がある」
天馬の目つきが鋭さを増す。しかしそれも一瞬のことで、すぐに元の柔らかい笑顔を見せる。
「一応その生徒の名前を聞かせてもらってもいいかな?」
その言葉を待っていたと言わんばかりに竜也は口を釣り上げ、まさに自分のことのように誇らしげにその者の名を口にする。
七星昴…と。
最後まで読んでいただきありがとうございました
少々投稿がスローペースなので少しスピードアップしようと思います