逆境を超え、スバルは輝き続ける
1限目終了後、竜也はすぐさま彼に話しかけた。
「初めまして。さっきも自己紹介したけど、俺は星見竜也」
しかし彼は挨拶を返すどころかこちらを向こうともしない。
もしかして、俺こいつにすら嫌われているのか!
最初クラスに入った時、唯一俺のことを睨んでいなかった彼ならと思ったのだが。
竜也が落ち込み俯いていると、彼は机の横に掛けていた手提げ鞄からおもむろに一冊のノートとペンを取り出し、何か描き始めた。
「ん?」
彼は描き終えるとそれをこちらに向けた。そこに書かれていたのは・・・・
『自分に何かご用ですか?』
言葉を交わすことすらしてもらえない嫌われっぷり!
だが、彼の表情は俺を軽蔑していないと物語っている。
「・・・・もしかしてお前」
彼が持っているノートに小さく質問する。
『もしかして、耳が聞こえない?』
すると彼は目を見開きこちらに向かって縦に首を振った。
なるほどな、だから何を言われても反応できなかったのか。
でもそれ位クラスメイトなら分かっていることだろう・・・・いや。わざと、か。
彼が聞こえないことをいいことに堂々と陰口を叩けるっていうわけだ。
「ほんとこのクラスは腐ってやがるな」
『俺の名前は星見竜也。今日からよろしく』
『僕は七星昴。見ての通り耳が聞こえない』
『喋れないないのか?』
彼の表情が一瞬微かに曇った。
それを感じ取った俺は、すぐさまノートに付け足す。
『悪い、踏み込んだこと聞いて』
すると彼は首を小さく横に振る。
「喋れぅけえど、ちゅあんと話せでぇるか、あかんなぃから」
されど竜也の心に罪悪感が波紋のように広がっていく。
『辛いことなのに、教えてくれてありがとう』
彼に向かって謝辞を送る。
すると彼は、とてもきれいに笑ったんだ。
それはまるで夜空に煌めく星のように。