「お前、学校行ってこい」って命令はパワハラですか?
世界は求める。自らを滅ぼそうとする悪に対する正義の守護を、星の力とともに人々に託す。
そしてすべての力が継承し終えたとき世界はその生を終える。
西暦2088年、人々の体内では星の命が芽吹いていた。
三十年ほど前より人体外のエネルギーが確認された。
星によって与えられた力・・・「星力」、そう名付けられたそのエネルギーは通常の人体では成しえないことを行う力となる。
しかし、星の変革はこれに留まらない。
世界各地の上空に奇妙な亀裂が出現するようになったのだ。
亀裂は次第に大きくなりそれがある一定の大きさになるとそれは大きな穴となる。
穴の奥にあったものそれは黒く塗りつぶされた空間であった。
そしてその空間に無数に動くものがいた。
そう、異形の怪物たちである。
人々は星の真意を知った。なぜ未知のエネルギーが人に発現したのか、その真実に。
それから深淵はこの世界への進攻を開始した。当然人も深淵に抗う。
両陣営の勢力は拮抗していた。それに人々は安堵した。
だが、そんな見せかけの平穏はいとも簡単に崩れ去る。そして人々は彼らに抗ったことを後悔した。
のちに畏怖の念を込め「魔王」と呼ばれる個体が登場したことによる拮抗していた勢力図の逆転。
そして現人類側には魔王に対抗しうる勢力が存在しないこと。
人々の心を絶望だけが支配していく。
そんなときであった。一人の少年が立ち上がり、彼は人々の前でこう宣言して見せた。
「私と私の同胞は、かの魔王をも打ち取る力を持つ。我々の勝利は星によって始まる前より決まっている」
そういった彼は仲間とともに一体の魔王を打ち取って見せた。
そうして彼と四人の仲間は世界にあだなす魔王を討つ星の王「星王」と呼びたたえられた。
人が初めて魔王を討ってから約二十年間、世界は平和そのものであった。
しかしいつまた奴らが襲ってくるかわからない。
すると星王たちは対深淵組織「アルスマグナ」を立ち上げたのであった。
そしてそのアルスマグナの本部は太平洋の真ん中を悠々と走行していた。
海上移動要塞「ヨルムンガンド」それこそがアルスマグナの本部にして母艦である。
そんなヨルムンガンド内部、統括理事室は今、緊迫した空気に包まれていた。
机前の椅子に深々と腰を下ろした初老の男性が目の前に立つ少年に対し口を開く。
「お前、明日から学校いけ」
「は?」
少年はあまりの突然な命令に開いた口が閉まっていない。
「ちょ、ちょっと待てい!学校ってあの学校か?あそこは支部に配属されたものの問題児や力不足な者を再育
成する場所だろ。何故俺?俺何もしてないじゃん!」
「そうだな、お前は問題行為もしない。だが働きもしない・・・・・・前言撤回。それが問題なのだ」
「うそ~ん」
「本当だ。明日には船が着く。準備しとけよ」
「マジか・・・・」
学校。正確には星森学園という世界唯一の「星力者」育成機関である。
そして、そこに編入する者は決まって支部を落とされた問題児であるということ。
「まぁそう落ち込むな。今回の編入はお前への任務兼プレゼントなんだからな」
「?」
正直少年には男性の言っていることがいまいち理解できなかった。
任務だけならわからなくもないが、プレゼントとはいったいどういうことなんだろうか。
「で、任務の内容は?」
重要度の高いほうの疑問を解消すべく質問を投げかける。
「なに、毎年この季節にやってることさ。お前も知ってるだろ?」
男性の顔には笑みが浮かんでいた。
それとは対照的に少年は真剣そのもの。先ほどまでの飄々とした雰囲気はそこにはなかった。
空気が、水が、いや世界そのものが少年に恐怖しているような・・・・
そしてその真剣さは声音にまで宿っていた。
「そいつは・・・・骨のあるやつか?」
「時期星王候補筆頭との噂だ。何としてもうちが抑えたい」
「・・・・やっぱりそういう魂胆か。まぁ俺には関係ないことだけどな」
少年の雰囲気が元に戻る。それと同時に大気の振動も収まりを見せていく。
そして思い出したかのように少年は男性にもう一つの疑問を投げかける。
「それはそうとプレゼントってのはどういうことだ?」
「ん?ああそれはほらお前、学校行ってみたいってこの前言ってたじゃねーか」
それは先日の酒の席でついつい口を滑らせたものだった。
「よくそんなどうでもいいこと覚えてたな」
「記憶力で負けたら俺に存在価値はないからな」
「それは言えてる。なら、お言葉に甘えて学園生活でも満喫するとしますかね。あ、でもよ戸籍はどうするんだ?俺コードネームはあれど、一般の名前は持ってないぞ」
「戸籍はこっちでもう用意しておいたから安心しろ」
そういうと男性は机の上の一枚の紙を少年へと差し出す。
その紙は名前から年齢、果ては両親の名前まで無数の嘘で埋め尽くされていた。
「と、いうわけで明日から頑張ってこい。星見竜也隊員」
その言葉を聞き届ける少年はにこやかに笑い、その姿は一瞬で消え去った。
「やっぱりこの通話はいつまで経っても慣れねーな」
それでも彼のあの笑顔に救われた一人として彼にはささやかでも恩返しがしたかった。
「俺もあんたよりじいさんになっちまったよ。ラスト・・・・」
いままでこれと言った投稿ができていませんでしたが、今回ついに念願の新作投稿です。
このあとがきって何書けばいいんでしょうか?正直わかりまへん!
だからこの小説を最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
「星屑の英雄と最後の魔王」はこれからどんどん続いていきますのでどうぞよろしくお願いします!