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無知な主人公は異世界転移にて異世界を学ぶ  作者: rere
1章 始まる異世界生活
1/1

0話 異世界転移とは

連載始めさせてもらいます


不定期更新ですができるだけ早く更新できるよう頑張ります

 目を覚ますと、自分がちゃんとそこに立っているのかどうかも分からないような、見渡す限りの純白に囲まれた部屋に居た。


 そして目の前には、形容の仕方の分からないほど、神々しい美女が、うっすら開いた優しい目でこちに微笑みかけている。


 奏は止まっていた脳をフル回転させ今の状況がどういったものか仮説を立てていた。


「やはり、夢という線が1番高いのかもしれない 」


 奏はボソッ呟く。


「夢ではありませんよ 」


 返事をくれるとは思っておらず少しびっくりした顔をしたが直ぐに表情を戻す。


「あの、名乗りもせず申し訳ありません。神童奏といいます 」


「えっ、あっ、いえご丁寧にどうも。私は女神のリシアと申します 」


 あまりに落ち着いた物言いにその神々しい見た目とは反したどたどしい自己紹介となった。


「女神、ですか 」


「そんなに驚かないのですね 」


「いえ、驚いています。出来れば今の状況を聞きたいのですのが 」


 リシアはこの状況でここまで冷静で居られる、見た目にまだ少し幼さがある少年に驚いていた。

 いや、もしかするとかなり、こういった展開の話を小説やアニメを嗜んでいたかもしれないと予想をした。


「簡潔に申しますと、貴方は先程、1人の少女を信号無視したトラックから庇い、お亡くなりになられました 」


 リシアは、彼がどのような反応をするのかと内心思いながら言った。


「少女は、無事なのでしょうか 」


「ええ、体は無事です。けれど心に傷が残ってしまうでしょうね 」


 彼の反応に好感が持てて、初めは嬉しそうな口調で言ったが、彼の性格から後の内容は気にしてしまうと思い少し悲しくなった。


「そう、ですか 」


 リシアの懸念した通り、奏は悲しげに目を伏せる。


「けれど、貴方のしたことはとても素晴らしい。まあ、貴方を慕っていた人達の気持ちをふまえたら手放しに褒められないかもしれませんが 」


 すぐさま明るい調子でフォロー。

 すると奏は「ありがとうございます」と微笑みかけた


 奏の儚げで魅力的な微笑みに、少し女神は照れくさそうにするが、コホンっとわざとらしく咳をして本題を話し始める。


「神童奏さん、貴方を異世界転移させてあげましょう 」


「いせかいてんい……それはどこかの地名でしょうか 」


 奏はきょとんとするが、それ以上にリシアはポカーンとしていた。

 彼はこういう状況のアニメや小説を嗜んでいるのではないのかと思っていたので、さらに困惑を深めた。


「あの、すいません、異世界転移をご存知ないですか? 」


「申し訳ありません、まだまだ未熟者なので、いせかいてんせい、なるものを聞いたことがありません 」


 リシアは、「ちょっと待っていてくださいね 」と言って真っ白な空間からぱっと消え、数秒したら直ぐに帰ってきた。


「申し訳ありません、僕の不勉強で…… 」


「貴方が悪いのではありません。いえ、ほんとに 」


 正直リシアは驚いていた、先程急いで彼の経歴を確認しに行くと、た今まで異世界転生に導いてきた中で初めて見る経歴だった。


 なんと彼は、アニメ、漫画、ゲーム、ラノベなどのオタク文化と呼ばれる類のものに触れたことがなかったのだ。


「1から説明させてもらいますね 」


「よろしくお願いします 」


「人が死んだ後どうなるかは、基本的には2つ、例外が1つです。基本的なのは1つがそのまま同じ世界で生まれ変わるパターン、もう1つは、異なる世界つまりは異世界転生のパターン。そして例外に当たるのが異世界転移なの。 」


 1度息継ぎを挟むと「ここまでで質問は」と奏に問う。


「あの、ではまず、基本的なパターンの異世界に生まれ変わるのと、例外の異世界転移の違いは何でしょうか 」


「まず1つ大きな違いは、基本的なパターンは今までの記憶、つまり前世の記憶を忘れた状態で生まれ変わります。けれど例外は全て覚えた状態で異世界転移する事が可能です。あとは、転生は赤ちゃんから生まれ変わることで転移はそのままの姿で異世界へ行く事です。まあ、稀に記憶を持ったまま転移ではなく転生が良いという人もおられますが 」


 奏はなるほど、と頷き考察する。


「そうですか、あの最後になぜ、僕は例外なのでしょうか 」


「すみませんあまり詳しく説明する事は情報制限により出来ません。しかし簡単に言うと、異世界転移により、その異世界に良い影響を与える人が選ばれます。もっとも滅多にないケースなんですけどね 」


 良い影響を、及ぼす…前世で良い行いをし、尚且つ何かしら役に立つ知恵のある者が選ばれるのだろうかなどと仮説をたてていると1つが疑問に浮かんだ。


 もしかすると地球に異世界転移をしてきた人がいるのだろうか、と。


「奏さん、それは情報制限に当たります 」


 奏は、かなり驚いた。

 心の中を読まれたことや、名前呼びになったことより、その後ボソリと「答えられないのが答えです 」と言った言葉にだ。


 地球の歴史を少し振り返り、奏は珍しく考えるのをやめた。

 ここで思考する事ではないと判断したからだ。


「余計な事を、申し訳ありません 」


「いえ、こちらこそすみません 」


 奏とリシアは目を合わせて笑う。

 奏から見たリシアの印象は随分と変わっていた。


 神々しい見た目を持ちながら驕り高ぶらず、同じ目線で話しかけてくれる心優しい人だと思った。

 いや、女神かと首を振る。


 すると何故かリシアの頬が赤く染まっていた。

 そうだ、心の中も読めるんだと少し苦笑いになる。


「コホン、まあ、そろそろ話を進めましょう 」


「そ、そうですね 」


 リシアは、ぎこちないやりとりをして、なぜ異世界転移物の話が少しベタな青春恋愛物みたいになっているのだろうかと、自分に呆れていた。


「それでは、異世界転移する人にはある程度の力を与えることになります。チートと呼ばれるやつですよ 」


 強引に話を進めたことでリシアは1つ失念していた。


「ちーと、とはチーズのお仲間でしょうか 」


 そう、彼は全くこの手の話にはついてこれないということを。


「すいません。説明不足でした。チートとは、そうですね、言い換えると神の加護。普通の人とは考えられない程の、人から逸脱した能力が与えられるという事です 」


「すみません、例えばどのようなものでしょう 」


「そうね、あるものは『支配者』ある条件下で発動し支配した物を自由に操れるといったものにしたり。他には、『 不老不死』これは名の通りです 」


 リシア余り情報を出しすぎてはいけない内容なので、少しだけの説明にした。


「それは、大丈夫なんですか 」


 そう、奏は純粋に心配になった。

 あまりに力のあるものは歴史上から見ても3パターンに分けられた。


 1つ目は、その能力が逸脱し過ぎているが故に周りからは認められず死の道へ進んだもの

 2つ目は、能力が認められ英雄として歴史に名を刻むもの

 3つ目は、周りとは違うが故に居場所が見つからず、また自分だけが特別と思い悪の道に進むものだ。


「貴方は、本当にお優しい。心配しないでください、と一概には言いにくいですね。人選はしっかりしているつもりでも、力を持った途端に変わる人も居ますからね 」


「そうですよね。では、僕は加護はお断りさせていただきます 」


「いえ、それは行けません 」


 リシアは焦ってなんとか、加護を与ようとするが奏は一向に首を縦に降らない。


「例えば、『賢者』 は全く異世界について無知でもたくさんの知識を教えてくれるとった能力なのですけど。どうでしょうか 」


「いえ、それは申し訳ありませんが 」


「何故でしょうか。貴方は全く異世界について知らないはずです 」


「いえ、知識を増やすのは僕にとって1番重要です。しかし、加護で増やすというのは、父の、いえ我が神童家の教えには反するでしょうから 」


「教えですか? 」


「はい、知識を得るのに大事なことは思考する事です。僕に必要なのは寄り添い教えてくれる先生ではなく、○✕を与え次のゴールを示してくれる先生です 」


 彼の経歴を見たリシアは断られるのは正直分かっていた。


 彼の家は、国内有数の財閥であり名家の神童家であった。

 当主の圧倒的カリスマ性と、高い知識でいつの時代も国内のトップであり続ける名家である。


 奏は、その跡取りであった。

 跡取りである奏は、父から英才教育を受ける事になる。

 ありとあるゆる学問や、知識、武術を叩き込まれ、先程の思考する勉強法と言う独自の教育をしていた。


 それにより、オタク文化だけでなく、ありとあるゆる娯楽をほとんど体験した事がないのだ。幼い頃は母から甘やかされてはいたが、その母も5歳の時に亡くしている。


つまり飴と鞭の鞭のみで育てらてきたのだ。

まあ幸いだった点は奏の父はしっかり奏に愛情を持って教育していた所だろうか。

不器用ではあったようだが。


 父の教えは『自分に厳しく』、だった。

 亡くなった母の最後の教えは『人に優しく出会いを大切に』、だった。


 そのため、奏は誰より自分に厳しく周りにはとことん優しい、お人好しな努力家となった。


 そんな彼が、ずるとも取れるチート能力を受け取ってくれるはずないか。


「あの、今すぐじゃないとダメなのでしょうか 」


 女神は少し考え込む。

 気の乗らない彼に加護を与えても正直彼の為にはならないと思った。


「では、貴方が真に力を望んだ時、今一度私は貴方に会いに赴きましょう 」


 正直奏は驚いていた。これ程まで譲歩してくれるとは思ってもいなかったからだ。

裏があるのではとほんの少しでも疑ってしまう程に。


 けれど、リシアはなんだかんだ彼が気に入っていた。

 恐らくこんな提案をする女神は他にはいないだろう。


「ありがとうございます 」


 奏は、疑うのを直ぐに辞め純粋にお礼を述べた。


「それでは、身体能力の強化と年齢を少し若返らせましょう 」


「いえいえ、大丈夫です。このままの姿で行かせてください 」


やはり奏は勢いよく否定する。

 女神はまた少し考え込む。


 確かにそのままの身体能力でも十分すぎるほど鍛えられている。

 容姿は男性にしてはちょっと長めで耳も覆い隠されているショートヘア、顔は綺麗に整っていて少し童顔で中性的。背もあまり高くない。


 ふむ、若返らせても容姿はあまり変わらない、だろうからこそっと下げてもバレないと考えた。


「では、魔法を使えるようにと、言いたい所ですがそれは断られそうなので、全属性適正有りにします 」


「はい、確かに恩を無下に断るばかり失礼ですし、有難く頂戴します 」


 うんうん、と嬉しそうにリシアは適正を与える。


「ところで、申し訳ないのですが、魔法とはなんでしょう。自分で考えた結果、箒に乗って飛ぶとかでしょうか。これは母から聞いた覚えがあるので自信がありますよ 」


 リシアが子供っぽいドヤ顔に少し微笑み、「違いますよ 」と言うと少し驚いてしゅんとしてしまった。


「魔法は、すみません時間があまりありません 」


「そうですか、いえ、違うというのを教えて貰ったのは嬉しいです 」


 「気にしないで 」と言いリシアが続ける。


「流石になにも知らなすぎます。加護もほとんど受けていないのに。あなたの行く世界には人を襲う魔物ら魔獣という生き物も居ます。それらの全てがそうとは言いませんが 」


「魔物に魔獣、ですか 」


「はい、なので貴方が転移した時に側に誰かその世界の住民を遣わせたいのですが、いえそうするので希望はありますか 」


 リシアが段々強引になってきているのに奏は少し苦笑いした。

 ここまで言われて無下に扱うほど阿呆ではないと思っている。


「そうですね、では僕が転移する近くにいる者の中で最も魔物、魔獣と魔法に詳しい者でお願いしたいいたします 」


 リシアはなんとも彼らしいと思った。

 あくまでも命に関わりそうな知識だけ確実に得れる人選を希望するところが。


「了解しました 」


 リシアはそう言って空を見つめブツブツと言い始めた。

 奏は、初め何をしているのかと疑問を抱いたが、今どのような人にするか決めているのだろうと思った。


「いや、しかし 」


「どうしたのですか 」


見つけたのだろうかと奏は尋ねる。


「容姿もよくとても知識量も申し分無いのですけど、ちょっと複雑な過去をもっているようで 」


「僕は気にしませんよ。リシア様はその人がかなり良い人材だからこそ、悩んでおられるのでしょう 」


「わかりましたそうしましょう 」


「ありがとうございます 」


「いえいえ。えっ、あっ、はいなんでしょう 」


 と言ってリシアが上に向かって独り言を始めたかと思うと急に「いたっ、うぅ」と声を出し頭を抑えた。


「あの、すみません。加護は願った時にという話でしたが、いえ、それ自体はなんとか認めてくれたのです。けれど、やはり上からなにかしら少しでも能力を与えろと言われまして 」


 反省の色を見せ落ち込んだように目を伏せる。

 なるほど、女神より上がいるのか、案外、前世の会社の体制とよく似ているのかもしれないと奏は思った。


「そうですか、リシア様に迷惑を掛けたくはありませんし。出来ればリシア様がお選びください 」


「了解しました 」


 そう言って、少し考えたかと思うと直ぐに、「あっ」となにかを閃いたようだ。


「『魔従』というのはどうでしょうか。仮の能力のため性能はかなり劣りますが 」


「どういった能力ですか 」


「魔物や魔獣の感情を読み取れるようになるあとは、少しですが仲良くなりやすくなります 」


 なるほどいい提案だと奏は直ぐに思った。


「是非、それでよろしくお願いします 」


「はい。それではそろそろお時間です 」


 リシアがそう言うと奏の立っている所が奏を円で囲むように光り始めた。


「リシア様、短い間でしたがお世話になりました 」


「いえいえ、これも私のすべきことですから 」


 光が一層強くなる。


「またお会いできる日を楽しみにしています 」


「ええ、それじゃあ貴方の新たなる人生に幸多くあらんことを。……頑張ってね、奏くん 」


 リシアが転生者に感情移入するのは少くない、がここまで感情移入をするのは初めてで自分でも驚いている。


 リシアは密かに祈っていた。またの出会いを楽しみにしながら。

 心優しい努力家さんの新しい人生が幸せに溢れるものになるようにと。






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