BACK TO THE PAST2
まず、デイヴが今いる場所。そこは学校のグランドの土の上でもなく、コンクリートの道でもない。彼の身体は宙に浮いていた。より正確に言うならば、空気の上に寝そべっていた。真下の地面から空気が吹き出し、落下してきたデイヴの巨体をクッションのようにして支えて地面との衝突を防いでいたのだ。さらに頭上を仰ぐと、道のない空を夥しい数の空飛ぶ車が走行している。まるで未来の世界のようだとデイヴは思った。しかしわけがわからない。自分は確かに屋上から飛び降りた。順当にいけば死んで今頃サンズリバーを泳いでいるはずだし、そうでなくとも全身骨折、出欠多量くらいにはなっているはず。そしてその場合、目覚めるのは病院のベッドの上と相場が決まっているはずだ。まさか、この未来都市が死後の世界なのか。目の前を掃除用ロボットたちが通行するのを眺めながら、しばらく考えこんでいた。
突然、身体を支えていた空気のクッションが消滅して、デイヴは地面に舞い堕ちた。アトラスの如き巨体と大地が再会を果たし、周囲の地面は激震に包まれた。
「な、なんじゃあ!?テロか⁉」
あまりの衝撃に驚いたのか、デイヴの背後にあった建物から老人が飛び出してきた。白髪に白衣にゴーグルを被り、いかにも世紀のマッドサイエンティストですと言わんばかりのオーラを纏ってる。
「な、なんじゃお主は、人の研究所の前で・・・・・・むむむ⁉」
老人は奇妙な声を上げ、かけていたゴーグルを触りだした。どうやらスマートグラスのように様々な情報が表示されているようだ。
頭のおかしなおじいさんに絡まれてしまったとデイヴは思った。そんな彼にはおかまいなしに老人は次々と怪しい計器や検査装置を取り出してデイヴの身体を弄る。そして時折驚いたような奇声を発した。
「あ、あの」
デイヴはたまらず声をかけた。
「むん⁉あ、ああ。すまんすまん」
はっとした顔でゴーグルを外し老人は謝る。つい気になる数値を観測してしまったものでな、と老人は言った。
「悪気はなかったんじゃ、こう、つい好奇心がうずいてな。許しておくれ」
「別に怒ってはないッチ。うっ」
地鳴りのような音と共にデイヴはその場に倒れた。
「どうした!具合でも悪いのか⁉」
「・・・・・・おなか、すいたッチ」
地鳴りのような音は、デイヴの腹の虫だった。