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未だに見ぬ自分にエールを  作者: 甘味処
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本当の自分?

「ここは…どこ?キラキラしている…。キレイだな。」

幾重にも光る閃光がぼくの視界に飛び込んでくる。ユラユラと光は乱れ、万華鏡のようにかたちを織りなしている。次第に光は遠ざかり暗闇の中へと消えていった…。

気がつくと僕は見たことのない天井の下で寝ていた。泣いている人、喜んでいる人、若い人から年寄りの人まで…たくさんの人に囲まれていた。その中の一人の女性が話し掛けてきた。

わたる大丈夫?頭は痛くない?本当に心配したんだから。心臓止まるかと思ったんだよ。」

(頭?確かに少し痛い…この人誰だろう?)

「まだボーッとしてるようだな。落ちつくまでそっとしておこう。気がついて一安心だ。」隣にいた男性が呟く。

「そうですね。バイタルも落ち着いているようですし、様子を看ましょう。頭部も強く打っているようですから、明日CT検査を行いますので、後日、改めてご両親には結果をお伝えします。」白いマントの男性が言う。

周囲の人が会話をしている時、僕が口ずさむ。

「ここはどこですか?あなた達は誰ですか?なんで僕は寝ているんですか?頭が痛いです…。」周りの人が一斉にこちらを向く。時が止まった…というよりは、スローモーションのように時を刻んでいったように思えた。白いマントの男性が言う。

「きっと頭部に衝撃が加わったことで、一時的に記憶が飛んでしまったのでしょう。よくあることなので心配なさらないで下さい。後ほどCT検査のご説明をいたしますので、ご両親は残って頂き他の方はたいへん申し訳ないのですが、今日のところはどうぞお引き取り下さい。」と笑顔で促す。

「あの~…。」

「どうした?お腹でも減ったか?」

「それもあるけど、頭が痛いのですが…。」

「先生。」

「痛み止めを投与しておきましょう。食事は、頭痛が治まってから摂るようにしましょうね。暫くの間は安静にしてください。」

「はい。わかりました。」

「では、ご両親はわたしと一緒に来て下さい。」

「はい。」

そう言って3人は出て行った。そして、意識が朦朧とするなか、僕は再び眠りに就いた。

診察室にて

「先生。航は大丈夫なんですよね。先ほどの発言がどうも気に掛かってしかたがないのですが…。」

「はい。そのことなのですが…。息子さんがこちらに到着した時は、意識もなく頭蓋骨にヒビが入っている状態でした。脳内出血も所々に看られ、かなり難しい状況でした。生きていること自体が奇跡的とも言えるでしょう。脳へのダメージがどれほどのものかは私にも分かりませんが、病名で申し上げますと、逆行性健忘と言います。」

「逆行性健忘…?」

「はい。大抵は5分~10分程度で回復する一時的なものですが、稀に24時間以上もしくはその後も記憶が回復しない場合もあります。すでに時間も経過しており、先ほども頭痛の訴えもありましたので、予断を許さない状態かもしれません。」

「そんな…。」

「親御さんにも申し上げにくかったのですが、今の状況での判断としてはこう申し上げるしかありません。24時間体制でナースも見廻りしますので、親御さんのどちらか付き添いを願いたいのですがよろしいですか?」

「私が付き添います。」

「いや、私も付き添いさせてくれ。」

「貴男は仕事があるでしょう。私がいるから大丈夫!だから、貴男は仕事が終わったらお見舞いに来ればいいのよ。それに、今は大事な時期でしょう。部下たちにも合わせる顔がなくなっちゃう。だから大丈夫!」

「…。いつも済まんな…。」

「なにを言ってるんですか。貴男も学校行事や航の相手をしてもらって助かってるんですから、これくらい屁でもないわ!」

「よろしくたのむ!」

「お二人のそういった気持ちが一番大事です。私どもも精一杯ご協力させて頂きます。」

「よろしくお願いいたします。」

「では、入院手続き等もございますので、受付までよろしくお願いします。」






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