表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄色標  作者: チャッピー
9/10

第八話 新生

 いつもよりスケールの小さいアイビーが僕に加速する。いつも僕が操った力が僕に振るわれる。ブレードは一直線の弾丸のように僕の心臓を狙う。

 現実なら貫かれて絶命するしかない。だが、これは僕の夢で僕の未来への分岐点だった。

僕の衝動は生へしがみつく。

「アイビー!!」

体と僕の魂が重なる感覚。全く同じブレードが、弾丸となった白刃を弾き返す。

 勢いを完全に殺され、体勢を崩したアイビーのコクピット向けて、プラズマキャノンを放つ。青白い閃光が走る瞬間、アイビーもまた腕だけを振るい、素早く武装を解き放つ。

閃光はふたつになり、干渉しあうプラズマでお互いの左腕は吹き飛ばされた。

 「君の言うことはまだわからない。」

 痛みはあった。けれどそれ以上に自分を突き動かす何かがあった。

 「でも、僕の居場所はもう故郷(ここ)にはない。僕の心を守る(ナノマシン)にはもう頼れない。」

 アイビー()のブレードがアイビーを薙ぎ払う。素早く躱す敵の装甲に浅い傷がつく。返される刃はアイビー()の薄皮を切り裂く。

「だから探さなきゃいけない。僕が帰る場所と、これから僕が行くべき場所を。」

 再び振るわれた二つ刃は重なり合い、火花を散らした。

「正直に言って怖い。僕はここしか知らなかった。君しか僕を理解するものはなかった。」

「罪も重ねた。たくさん殺して奪った事実はきっと死ぬまで僕を縛り付けるだろう。」

刃に力を籠める。言葉にしながら、未来に受ける恐怖を打ち消すように。

「でも、今は彼女がいる。彼女が僕を帰る場所だと思ってくれているから。きっと、僕も、どこかに僕の帰る場所を見つけられる!」

ブレードが敵の刃ごとボディを切り裂く。

「今まで僕を守ってくれてありがとう。僕の心は大丈夫だから、見守っていて欲しい。」

チリチリと焦げたにおいがする。相手の姿はいつの間にか僕の姿に戻っていた。

「僕は君だ。君が望むように僕は変わる。古い君が、自分の心を守ったように。これから君が君自身となるように。君がだれでもない君である限り、ナノマシン()はただ君の力だ。」


「ありがとう。さようなら。古い僕。」

「さようなら。頑張れ。新しい僕。」


二つの声は重なって消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ